芯臓

心あるべき臓器。

　心はどこに宿りますか？

　道徳の授業で聞いたその言葉は、僕の心（・）に深く刺さった。

　当時まだ小学生だった僕は脳に宿るものだと思った。

　それも確かに正解だった。だけど、正解じゃなかった。

　不思議なもので、僕が想像する以上に、心とは不可解なものだった。

「全く、なんだよ。心って」

　大学生になって、僕は心を知る為に、解答を得る為に心理学の道へ進んだ。

　2年経っても未だにその答えは見つかっていない。

　心なんて……どこに宿るのか。

「心ってどこに宿ると思う？」

「なんだ急に？飯食べてるんだけど」

「昔からの悩みでさ。心ってどこに宿るんだろうって」

　僕は大学で出来た数少ない友人に聞いてみることにした。

「……俺は心臓だと思ったな」

「どうして？」

「カウンセリングかよ。まぁ……心ってのは信念、胸に宿るもんだと思ってるからよ」

「信念、か」

「で、お前が望む答えは得られたのか？」

「多分な」

　信念。それは心の芯。

　芯臓。それは、心にあるべき、必要な臓器。

　僕は今、心の答えをまた少しだけ分かったような気がする。