第9話
色々な言い訳は考えて来たが、一番いい結果に落ち着いた。
これでしばらく陸議は休ませられる。
『司馬懿殿に失望されたら私は終わりです』
悲痛な訴えを思い出した。
(決して司馬懿殿を見ていても、そんな風に彼を扱っているようには思えないが)
司馬懿が例え彼を重用していても、あの陸伯言という青年は根が真面目で懸命に務めている感じは伝わってくるから、彼自身がそれほどの思いでこの遠征に臨んでいるということなのかもしれない。
そう考えると徐庶の胸に、陸議の力になってやりたいという想いが浮かんで来た。
彼は自分より若いのに、そこまで覚悟を決めている。
対する自分は何と中途半端なのだろう。
雨は霧状になりつつある。
徐庶は空を見上げた。
『涼州の戦線に残る覚悟』
言い訳に使ったその言葉を、真剣に考えてみるべきかもしれない。
涼州遠征で自分が魏のために働けることを示せば、母親が蜀へ行くことも許される可能性はある。
(それさえ叶えば、俺はもう思い残すことは……)
月が出そうな気がして、徐庶はしばらくそこに立ち止まったまま、空を見上げた。
天には国も国境もなく、
一つに続いている。
……自分の骨が埋まる土地は涼州なのだろうか?
知りたいわけではなかったが、
ただどうなのだろうかと思わずにはいられなかった。
【終】
花天月地【第36話 月だけが知っている】 七海ポルカ @reeeeeen13
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