まずこの「ん?」と心惹かれるタイトルが秀逸です。
太宰治の小説『人間失格』を題材とする本作。舞台は、文豪を模したAIに支配されている世界。太宰治をモチーフとするAIロボットであるDAZAIが、川端康成をモチーフとするKAWABATAとの覇権争いに勝利した世界線のお話です。
世界の支配権を掌握したDAZAIは、人間として失格であると判定した人を「人間失格!」と叫びながら追いかけ、次から次へと更正施設へ送り込んでいました。
本作の主人公である「私」はそんな世界に絶望し、友人とともに入水自殺を図ろうとします。しかしまんまとDAZAIに発見されて捕捉され――という内容です。
わずか4000字強の短編でありながら、その後も展開は目まぐるしく変化します。完全にエンタメに振りきった見事な娯楽小説だと思います。
僕はそこまで文学に詳しくないので、おそらく十分に理解できてない小ネタがたくさんあると思われますが、それでも非常に楽しく読めました。文学好きの方ならきっともっと笑いながら楽しめると思います。
そんな僕でもオチはちゃんと分かりました。さすがに面白すぎて吹き出しましたw
文学を題材としてはいるものの、文章はポップでリズム感があり、リーダビリティーがとても高いです。純文学好きにもエンタメ好きにも美味しい純文学×エンタメ小説、是非ご賞味ください!
まあ、そらそうなるわな 笑
が連続して起きる物語にございました。
この世界は、文豪がAIとして蘇っているそうです。
……恐ろしいですねえ……人間失格は、同じ人間が書いているからおかしいような、もどかしいような、哀しいような……な感覚を味わえるのに、
AIに『人間失格』と言われて追っかけられたら違う意味になってしまいますものな。
そして、捕まったら、
永遠に『人間失格』で満ち溢れた矯正施設に送られるのだそうです。
地獄ですね 笑
逆心療内科みたいな事ですかね。
そうこうしている間に、次々と新しい文豪が蘇ってきて、
最後は、みんな大好きあの文豪で締めくくられます。
最近よく思います。
「憧れている人は、憧れのままでいい」
っていう考えです。
憧れている人に実際、何かの拍子に会ってしまって、幻滅することほど哀しいことはないと思うのです。
そして、実際に会えてしまうのがこの物語の世界観なのでしょうな。
ディストピア。恐ろしや。
例えばそうですなあ……
私の好きなNAKAHARAは、常にからみ酒で一般人に迷惑をかけるのでしょうな。
文豪たちのシミュレート具合を見て、ひたすら笑いっぱなしでした。
未来の世界。「AIが小説を書く」ということが当たり前になった世界。
そこで、「文豪の精神までがAIで完全再現される」ということまで実現してしまう。
KAWABATAやDAZAIなどの人格を持ったAIが闊歩するようになるが、どうもこの社会、完全にディストピアと化している。
芥川賞の選考委員になったKAWABATAがDAZAIの小説を酷評したことから事態は混迷を深めることに。
「文豪あるある」と思わせる様々な小ネタの数々がとにかく面白かったです。
「そう言えば太宰って色々ヤバい人だったらしいよな」とか、「その人物を再現したら、そりゃそうなるよ……」とか、ニヤニヤが止まりません。
そして、ラストのオチが素晴らしい。「その人はそういうこと言いそう」という、ファンもそうでない人も嬉しくなってしまうラストが待っています。
桜森よながさんの最新作です。
いやー、これいいです。かつての文壇をにぎわせた著名作家(のAI)たちによる、ナンセンスな覇権争い。またこのミスマッチがたまりません!
だって、DAZAI討伐のために差し向けられるのがMISHIMAなんですよ。すごく組み合わせが悪そうです。ああKAWABATA 先生が健在なら。。SHIGA先生でもいい。。
案の定、MISHIMAは対戦すらせず、クーデター起こして退場。さて、残りの討伐隊はどうなる。TAKUBOKUは? HARUKIは? がんばれ!
太宰(おっと書いちゃった)の圧政から世界を解き放て!
てな感じで、もう全編最高です。
ぜひどうぞ!