純文学✕エンタメ!小説好きなら誰でも楽しめる万人受け小説の最高峰!

 まずこの「ん?」と心惹かれるタイトルが秀逸です。

 太宰治の小説『人間失格』を題材とする本作。舞台は、文豪を模したAIに支配されている世界。太宰治をモチーフとするAIロボットであるDAZAIが、川端康成をモチーフとするKAWABATAとの覇権争いに勝利した世界線のお話です。

 世界の支配権を掌握したDAZAIは、人間として失格であると判定した人を「人間失格!」と叫びながら追いかけ、次から次へと更正施設へ送り込んでいました。

 本作の主人公である「私」はそんな世界に絶望し、友人とともに入水自殺を図ろうとします。しかしまんまとDAZAIに発見されて捕捉され――という内容です。

 わずか4000字強の短編でありながら、その後も展開は目まぐるしく変化します。完全にエンタメに振りきった見事な娯楽小説だと思います。

 僕はそこまで文学に詳しくないので、おそらく十分に理解できてない小ネタがたくさんあると思われますが、それでも非常に楽しく読めました。文学好きの方ならきっともっと笑いながら楽しめると思います。

 そんな僕でもオチはちゃんと分かりました。さすがに面白すぎて吹き出しましたw

 文学を題材としてはいるものの、文章はポップでリズム感があり、リーダビリティーがとても高いです。純文学好きにもエンタメ好きにも美味しい純文学×エンタメ小説、是非ご賞味ください!

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