だから私は理系をやめた

序盤の表現が、とても好きです。
つらい時、夢から現実に戻ってくるあの瞬間。
私にも覚えがあります。

「地に足を着ける」

大人たちが、ぼんやりと決めた何かのルールに疑問を持ち、迷い、そして決めていく。
恋い焦がれた夢を、一度でも諦めようとした人なら、共感できるのではないでしょうか。
崩れそうな心のバランスを丁寧に描かれていて、高い描写力を感じました。

私はこの物語で救われる人が、いると思います。

自身の胸の内を痛切に訴える文章が非常に秀逸でした。

物語の魅力に魅せられて、もはや呪いとなるほど強まった創作衝動。いつでも自分を蝕み食い破ろうとするこの劣情を、我々は夢と呼ぶのでしょうか。

愛して、愛されて、だから苦しくて。
この想いをどう表現すれば良いのか、その答えがここには書いてあります。

改めまして、素敵な作品をありがとうございました。作者様の文章力の向上に驚くばかりです。これからの活躍をお祈り申し上げます。

心の深淵を繊細に描いた秀逸な文章です。

現実と夢、希望と諦念の狭間でもがく主人公の
内面が、切実かつ誠実に綴られています。

言葉への愛と喪失、再生への微かな光が、
読者の胸を静かに打つ事は間違いありません。
強い共感を呼ぶ作品です。

叫びを並べ連ねた文章には結着力がない。喉が破れんばかりに主張する言葉は、互いにそっぽを向きながら、細く鋭く、いつまでも抜けない棘となって、四方八方から降り注ぐ。主人公に、そして読み手に。その鋭い痛みゆえにあなたは絶望し、私は血を流しつつ過去をありありと甦らせる。

物語の世界を純粋に喜べていた自分を羨むあなたは、純粋に傷ついている。とうの昔に大人になった私には、まばゆくて正視できぬほどに。

苦しみ、もがいている最中に、他人の声なんて聞こえない。優しい声も、叱咤する声も、疎ましいばかりだ。似た悩みで悩む友達の声ですら。でも、出口の見えない暗闇には、ときおり、ぽかりと明かりが浮かぶ。繰り返しか…続きを読む