6-2

「ただ、皆様が幸せに楽しく笑えるホテルを造りたかっただけなのに」


その想いだけだったのに


「次こそはお客様が幸せになるホテルを造ろう」


遠方で来られないならホテルが迎えにいけばいい。

困りごとがあるなら、精一杯、おもてなしをして解決の糸口の手助けをしよう。

「お客様のために出来ることは何でもしよう」

気づけば男は城守 望磨と名乗っていた。

燕尾服を身にまとい、白く長い耳を揺らし、赤い目を宝石のように輝かせる。

かつての従業員も城守と共に働くと言った。

ハリネズミにハムスター、ネコにクマ・・・。

今も309号室の清掃を始めてくれている。

「支配人、次のお客様がお呼びのようです」

掃除の手を止めることなく、ハリネズミが微笑みながらそう告げた。

受付と掃除と食堂の配膳の準備。

ハリネズミが一番、忙しく、そして一番、宿泊客と会話をしている。

「そうですか。それではお迎えに参りましょう」

城守は踵を返すと、309号室の扉を開けて部屋から出て行った。


向かうは一階の受付。

「本日のお客様は何号室にお泊まりでしょうか」

城守は微笑む。

揺れる耳はなくなり、赤い目も人と同じ色になり、人間の姿になった城守はゆっくりと受付から姿を現す。


「ようこそ。当ホテルへ」


目の前には呆然と立ち尽くす少女の姿がそこにはあった。

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ホテル309号室 水無月白雨 @ayamehakuu

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