😱「這う水に潜むもの」は、水無月 氷泉先生の才能が光るホラー小説です。
💧物語は神戸を舞台に、凄惨な殺人事件を追う警察官たちが常識を超えた存在と対峙するところから始まります。
💧水にまつわる怨念が次々と惨劇を引き起こし、登場人物たちはその恐怖に立ち向かいます。物語の鍵となるのは「水」であり、心霊マニアならばピンとくる要素が満載です。
💧神戸を舞台にした物語は、リアリティがあり、読者に深い印象を与えます。
💧怨念や恨みがいかに人間の心を支配し、変容させるか――また、どんなに絶望的な状況でも、最後の望みを捨てずに立ち向かう姿勢の重要性が描かれています。
💧激しい怨嗟が全ての常識を凌駕し、読者を恐怖の世界へと引き込むことでしょう📖✨。
ホラーは未知であるが故に怖いのだと個人的には思っているので、内容については一切触れずに本作の内包する"恐怖"という名の魅力について語りたい。
1999年に超低予算で制作された異色作「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」の大ヒット以降、ホラーというジャンル界隈に於いてはモキュメンタリーが幅を利かせている。代表的なもので言えば「パラノーマル・アクティビティ」だろうか。
本作はそういった意味では流行に逆行しているのかもしれないが、だからこそモキュメンタリーに食傷気味な方、古のおどろおどろしい和風ホラーを求めている方には刺さると思う。
物語の鍵となるのは、水──心霊マニアならばピンと来るだろう。古来より霊は水場に姿を現すと伝えられているからだ。即ち水は、此岸と彼岸とを繋ぐ門のようなもの。
我々が日常的に恩恵を受けている水……それが深く昏い闇の奥底にて邪悪を孕み、やがて不定形の恐怖として地表へと這い出し、そして何もかもを忘れ去った愚かな者たちへとその牙を剥くのである。
未知だからこそ怖い。理不尽だからこそ恐ろしい。恐怖とは──ホラーとは、本来そうあるべきもの。未知なる恐怖というものを、本作は高い完成度で表現している逸品である。
水という名の不定形の恐怖……果たして、惨劇を止めることは出来るのか。
暗渠化された地下を流れる水脈のようにヒタリヒタリと迫り来る静の怨念。
標的を確実に死に至らしめるべく、ダイナミックな流体としての動の脅威。
静と動とを巧みに操る変幻自在な存在に包み込まれ、あなたの心は揺さぶられ、翻弄されてしまうかもしれません。
仲間の命が危ぶまれるシーンに肝を冷やされ、追い打ちをかける描写には心底から打ち震える――それはまるで背後から首元を押さえつけられ溺死させられるような息苦しさに似ていると感じます。
生命の危機が迫り来る。
常識が通用しない恐怖と悲嘆。
そこにありもしない水という存在感が回避不可能な戦慄で臓腑を侵す怪作。
瞳が震えるような忘れることの出来ない没入感を堪能できますよ。
惨劇、この言葉だけで十分私は恐怖を感じます。
本作の魅力を最初にご説明するならば、タイトルにも書きましたが「恐怖」の源泉、それは登場する「人物」に他ならず、そこをしっかりと書き込まれている事です。
ホラー小説において、叙述としてテクニカルな表現を書く事が出来る書き手なら、必ず一定の「恐怖」を演出できます。また、ストーリー構成というか作品構造を巧みにする事が出来る書き手なら、やはり同じく必ず一定の「恐怖」を演出できます。
ですが、私がホラー作品において最大に大事にするべき事、それは「人物」にあると考えます。あらゆる小説にも言える事なのですが、「人物」に「リアルさ」と「共感性」があり、それゆえに「圧倒的に感情移入」が出来るかどうか、これが「傑作ホラー」と「凡庸なホラー」の分岐点となります。
「人物」の魅力を引き出せるかどうか、それが「恐怖」の源泉なのです。
さて、本作にはその「人物」像が様々しっかりと書き込まれており、その魅力を引き出すに十分な筆力を伴なう事により、設定と構成と仕掛けが十二分に発揮される傑作であると思います。
この思いますと言うのは、恥ずかしながら時間が足らず、最新話に到達していないのですが、途中でもそれが十分に伝わる事と、カクコン10が終了目前という事もあり、こちらのレビューを書かせて頂いております。
お勧め致します。
まるで映像化を目的としている様な素晴らしい構成と様々な人物像が、飽きさせずに次へ次へと読み進めさせてくれます。こちらは「劇的なホラー作品である」と確信をもってお勧めさせて頂こうと至りました。
皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)
神戸開港の頃に起きた迷宮入りの猟奇殺人事件。地元の誰もが忘れ去る中、それは蘇り、暴虐の限り尽くす……
呪いを封じた一族、地層のずれで生じた結界の綻び。歴史的な背景と実際の巨大自然災害などを巧みに織り込んだ本格派のサスペンス・ホラーです。
戦慄の殺害現場、混乱を深める捜査当局。切り札の登場で解決に向かうと思いきや、それでも犠牲者は絶えることなく増え続けます。歯止めなき惨劇に読者の緊張感はマックスのまま持続することでしょう。
本来、「呪い」や「祟り」は得体が知れない理不尽なもので、古典的な怪談や多くのホラーでは曖昧に描かれます。しかし、作者は「呪い」の正体について考察し、発生した原因に踏み込むのです。
「呪い」こそが理不尽に突き動かされるものならば、その奥には何があるのか? 誰がどうやって鎮めることが出来るのか?
表面的な捜査の進捗とは別に、裏に潜む「呪い」の核心に迫るところが本作の魅力で、劇画的な退魔バトルに終わる気配がありません。
そして、猟奇殺人の触媒となる「水」の用い方が絶妙です。「滴る」のではなく、圧倒的な水量を以って肉薄し、本能的な恐怖を呼び覚まします。
果たして、最終的な決着はどう描かれるのか、「呪い」はどう裁かれるのか、そこに勝者と敗者が居るのか?
エンディングは全く予想も付きません。
<注:第四十四話読了時点での寸評になります>
ホラー上位は流行中のモキュメンタリー一色ですが、それはそれでよいとして。
やはり昔ながらのホラーもいいですよね!
この作品はそういった古典的な要素をベースにして、ホラーだけではない作品に仕上がっています。
まだ完結していませんが、ここまではホラーの恐怖感をしっかり漂わせながら、ミステリー、サスペンス要素も含んだホラーになっています。
ホラーといえば呪い、は定番ですが、そこに神戸の歴史を組み込み、壮大な歴史エンタメにもなっています。
ホラーは怖いから敬遠してしまう、といった方々にも十分楽しめる作品です。
ジャンルで毛嫌いせず、ぜひ読んでみてください。
きっと引き込まれていきますよ。それこそがホラーですから!
本作の『這う水に潜むもの』というタイトルは、意味と同時に効果も持っていいます。その効果は読む者の不安をかき立て、やがて恐怖の世界に引きずり込むでしょう。引きずり込まれた私が言うんだから間違いありません。
冒頭は「何か」の怨念。ああこの「何か」が血なまぐさい惨劇を引き起こしていくんだなと察したところで、舞台となる神戸の歴史と絡んだ因縁が描かれます。この時点ですでに想定外の事が二つ――「何か」の正体は謎のままであること、そして「惨劇」ではあっても「血なまぐさ」さは皆無であること。
その後時代は現代に移りますが、そこでも新たな惨劇が繰り返されます――が、「何か」の凶行は現代の警察組織でも手に負えない。このまま正体不明の存在は、凶暴無惨な恨みのまま「犯行」を繰り返すのか? そんな不安が募り募ったところで……これ以上は、どうぞ本編をお楽しみください。
本作が秀逸なのは、「何か」の描写方法。よく出来た怪物・ホラー映画は、いきなり「怪物が来た!」などと絶叫しません。断片的な情報を小出しに積み重ねていき、観客自身の想像力に働きかけて、彼らの不安を徐々に膨らませていく、という手法を取っています(例:映画『ジョーズ』の背ビレ)。
本作の「何か」も、度重なる凶行の描写を通じて、残虐さと同じくらいの「得体の知れなさ」を読者に植え付けていきます。と同時に、その恐怖の存在に対抗する諸勢力――警察はもちろん、「何か」を追う謎の組織――による追跡劇も開始され、ホラーだけでなくミステリの愉しみも味わえるという贅沢仕様になっています。
本作の作者・水無月 氷泉氏は、本格異世界ファンタジーの大長編『混沌の騎士と藍碧の賢者』も執筆中ですが、同作で魅せている壮大な群像劇の手法を、本作でも惜しみなくつぎ込んでいらっしゃいます。「何か」、兵庫県警、「何か」を追う組織、その組織と対抗関係にある別の組織……彼らの織り成す糸が撚り合わさる時、物語はクライマックスを迎えるでしょう。
すでに本作をフォロー中の皆さんは、是非その瞬間を見届けましょう。
まだ本作をご覧になっていない皆さんは、まだ間に合いますので、是非追いかけてきてください! (言い忘れましたが、本作の文章はとても読みやすくて上品です)
現代を舞台とした奇怪な殺人事件を主軸に、呪いや怪異などの要素の混じったミステリ作品といった印象です。本格的なホラーではあるものの、どこかファンタジックであり、おどろおどろしさよりも「未知の謎」に対する恐怖が主となっています。
また、概要にもある災害関連の要素なのですが、大阪にて当時を経験した私個人としては、トラウマを抉られるものではありませんでした。前述の殺人現場をはじめ、そういった場面の直接的な描写は控えられておりますので、安心して読むことができると思われます。多くの方にオススメできる作品です。