いけ! バシャウマ司令官!

加賀倉 創作【FÅ¢(¡<i)TΛ§】

見えぬ、知らぬ、調べぬ、わからぬ、でも敵在りと断定!

 戦場にて。

 ピーピーピー、と受信音。伍長の携帯通信装置コムリンクから。

「バシャウマ司令官! 見えざる敵の軍勢より、奇襲! いや、見えざる敵の奇襲、というのは斥候せっこうからの情報に過ぎません……何せ見えないのですから!」伍長がそう叫ぶ。

「見えない敵の奇襲!? どうやって攻撃を確認した?」バシャウマ司令官は問う。

「バシャウマ司令官! 敵は我々の、文字通りの目の前に達して襲いかかる瞬間にのみ、姿を現すそうです! 斥候は、全滅です!」

「そうかわかった! なら伍長! 細かい事は気にするな! とにかくそこに敵はいるなんだろう!? 五十メートルか? 百メートルか? とにかく攻撃だ、攻撃ぃ!」と、バシャウマ司令官は投げ槍に命令。

「りょ……了解しました。みんな、聞いたか? 撃てぇえええ!!!」

 伍長の合図で、部隊総員、ドドドドド!と、ひとまず機銃乱掃射。

「「「くたばれぇえええ!!!」」」

 皆、凄むが……

「「「敵、見えねぇえええ!!!」」」

 凄む対象の存在証明、不可!

「「「うぉおおお!!!」」」

 ドドドドド! の後、カラカラカラ! と薬莢やっきょう飛散!

「バシャウマ司令官! このまま……続けますか!?」伍長、再度疑問呈し。

 前方、皆の放った幾千万の鉛玉が、敵らしき何かをかすめる様子は、ない。

「いいから打ち続けろ!」バシャウマ司令官の命令は、実際的判断に基づいてはいない。思考停止。

「いや司令! 当てずっぽうに数打ちゃ当たる、で歯が立つ相手ではないのでは!」

「そうか!?」

「考えてみてください! 今やっている機銃乱掃射は、二十五メートルプールの中に紛れ込んだビー玉を一つ、見つけてこいと言われているようなものですから!」

「なんだその懐かしさ溢れる比喩は! プール……いいな!」

「司令! そんな呑気なこと言っている場合ではありません! 現実的な、ご判断を!!!」

「はァ!? 敵がいるから、ウつ! いかにも現実的な判断ではないか!!!」

「だから司令! 敵は見えないんですよ!? そこに本当にいるのかどうかも怪しいんです! こうして弾薬を浪費するくらいなら、実際に接敵、襲われるまでの時間を使って、後方の基地の防御体制を整えた方がいいのではないでしょうか!」

「だから、接敵しとるだろう! 敵は見えないがな! それに、襲われてからでは遅い! 愚か者め!」

「だから司令! どうせ見えないのですから、実害がないうちは守りを固めた方が……陣地を侵されてからのことを考えた方がいいですって! 急がば回れです、司令!」

「はァ? 何を言っとるだ!? 敵に殺されたいのかお前は! どのみち牽制にはなるだろうが!」

「司令! はっきり言いますよ! あなたはリソースの割き方を間違えています!」

「うるさい! 貴様! 上官の命令に背くか! これは軍法会議もの——」

 ピーピーピー。伍長の携帯通信装置コムリンクが鳴った。

「はいっ……はいっ……はっ!? バシャウマ司令官……後方基地の防衛部隊が……」

「防衛隊が、なんだ?」

「全滅……全滅です!!!」

「なぁにぃ!?!?」

 モタモタしてるうちに後方基地部隊全滅! 戦況悲惨!




 ✴︎✴︎✴︎




 敗戦後。

 また戦場。

「バシャウマ司令官! また敵が攻めてきました! それも、見えない、小さい敵が!」

「なぁにぃ! まぁた見えない敵だ? が、私は以前の大失態から学んでいる。早速退却して、守りを固めるぞ!」

「それが司令、今度は少し、勝手が違うのです!」

「違う? 何がだ?」

「敵は、見えない、ごくごく小さな敵です。見えないというのは、小さすぎて見えない、と表現するのが正しそうです」

「小さ過ぎて見えないだと!? 何ものなんだ、そいつらは!」 

「斥候たちは、そいつらのことを〈ウイルス〉と呼んでいます。敵の体内に侵入して、謎のギガヘルツ電磁波を発することで内側から攻撃する、らしいです!」

「〈ウイルス〉だとぉ? 内側から? 電磁波ァ? なんだそれは! 聞いたことがない!」

「私も、初耳です。それで、作戦は、どうしましょう? 他の部隊は、マスク着用で〈ウイルス〉に対抗するようです」

「マスクか? でもその〈ウイルス〉とやらは、細菌兵器のように致死性のものなのか?」

「そうでもないようです。」

「作戦、そうだな…………あ!」

「司令、何かいい案が?」

「そうだとも。見えない敵には、まず防御。それなら、兵士たちの免疫力を高めればいいのではないか?」

「免疫、力。なるほど、それは名案です! でも、どうやって?」

「納豆を食え! 何せ亜鉛がとれるからな! 消灯時間も、早めよう、起床時間はそのままに。そして明日から、朝のラジオ体操を一五分延長する。場所も、倉庫内から、青空の下に変更だ!」

「バシャウマ司令官、健康第一、ということですね!」

「その通りだ! 今回は、防御は防御でも、矛や盾を使った防御ではない。自己免疫の、防御だ!」

「リソースの割き方、心得ましたね、司令!」

「うるせぇ! 生意気言うと、軍法会議にかけるぞ!」

「大丈夫です、自分、亜鉛飲むんで! 精力増強、拳で語り合います!」

「バカいえ、そこまで亜鉛は万能じゃあねぇ!」

「「アハハハハハハ!!」」



 〈終息? そもそも始まっていたかが問題だ!〉

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いけ! バシャウマ司令官! 加賀倉 創作【FÅ¢(¡<i)TΛ§】 @sousakukagakura

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