朧に堕ちる、

　佐更美月が目を覚ましたのは、暗く、異様な悪臭に満ちた部屋の中だった。

　日常の延長線でしかない帰り道の途中、何者かに襲われたのだ。
　そして次に意識を取り戻したとき、拘束され、暗闇に支配された空間に監禁されていた。
　そんな私の目の前に、元凶となる男が姿を現す。

　なぜ自分が狙われたのか、何が目的なのか。
　何一つ分からないまま。

　男は戯れのように首を絞めてくるのに、なぜか私を生かそうとする。

　外界から隔絶された霧の中の廃屋で、異常な日々がだんだん私の心を蝕み狂わせていく。


　恐怖と狂気の果てに、彼女の内に芽吹いたものとは―――


　愛か、依存か。救済か、破滅か。

※本作には監禁・暴力・精神的支配などの描写が含まれます。ご注意ください。