深夜、天下無双ダンスを布団の中で見る
あげあげぱん
第1話
深夜、僕は布団の中でスマホを片手に、ある動画を見ていた。最近の僕の楽しみ。マイブームだ。
テックテックというアプリで最近天下無双ダンスという動画が流行っている。有名なアーティストが歌った天下無双という曲をBGMにして、女の子からおじさんまで、いろんな人が踊っているのだ。この踊り、ダンスというよりは舞いに近い印象を受けるけど、皆はダンスって呼んでる。僕も、それで良いと思っている。
舞いに近い印象を受けたのは、この踊りがスローテンポだからかもしれない。曲自体スローなテンポだけど、踊りが目に映ると、よりゆっくりな印象になる。振り付けも他のダンスに比べると比較的簡単だから、小さな子でも踊ることができる。それが、このダンスの流行った理由だろう。
教室の女子高生たちのダンス動画から、次の動画に切り替わる。これは……どこかにある神社だろうか。巫女? が踊る側で神妙な面持ちの男たちが、楽器を演奏している。雅楽というやつかな? この曲……天下無双に似ている? だから関連動画として出てきたのか? なんだか妙に、気になる動画だ。
そんな動画は、数十秒の再生の後、終わった。次の動画に切り替わり、それを見ながらウトウトし始めていた時、部屋のインターホンが鳴った。は? 今は深夜だぞ。酔っぱらいか?
再び、インターホンが鳴る。まじかよ。これから寝ようって時なのに……面倒に思いながらも僕は布団から出て扉に向かう。絶対に開けないけど、除き穴から外の様子は確認しておきたい。どんな奴が深夜にインターホンを押すだなんて非常識なことをしているのか。興味がある。
玄関の除き穴から外を確認すると、和服のおばあさんが立っていた。上品な印象を受ける女性だが、ボケているのだろうか? 徘徊老人だとすれば面倒だが警察に連絡をするべきかもしれない。そう悩んでいた時。
「お呼びしたでしょう。お呼びしたでしょう」
扉の向こうのおばあさんは、そんなことを言った。お呼びしたってなんのことだ? まじにボケてそうだな?
「お呼びしたでしょう。テンカさまを。お呼びしたでしょう」
やっぱり警察に連絡しよう。スマホは布団の場所に置きっぱなしだ。そう考えて、布団の方を見る。そこには、何か、得体の知れないものが立っていた。見る者に一本の老木のような印象を与えながらも、同時に昆虫のようにも見えるそれ。明らかに、まともな存在ではない。いや、そもそも、こいつはどこから部屋に入ってきた?
僕は急いで扉を開けようとした。なのに、開かない。どういうことだ? 外の奴が何かしてるのか?
「おい、開けろ! よく分からんがヤバイ! 絶対にヤバイ!」
「テンカさまをお呼びしたのでしょう? なら、彼の養分になってくれるわよね」
ヤバイ。絶対にヤバイ。どうして、こんなことになった? あの神社の動画を観たからか? くそ!
まともな準備はできてないが、自前の法力で戦うしかない!
僕はテンカさまの方を向き、素早く印を切った。そして叫ぶ!
「破アアアァァァ!」
僕の法力を至近距離でもろに浴びたテンカさまは、弾けるようにして消え去った。
「そ、そんな馬鹿なぁ!?」
扉の外から、おばあさんの叫ぶ声がする。まさか徘徊老人ではなく怪異の狂信者だったとはな。走り去る足音を耳で聞きながら、ひとまずの驚異が去ったことに僕は安堵していた。
ほっとしていたところに隣の部屋から壁を叩く音がした。急にそういうことをされると、びっくりしてしまうんだが!?
「寺田さん! うるさいよ!」
「すいません」
はあ、怪異もテックテックを使う時代か。僕も、これからは、もっと気をつけないと。
深夜、天下無双ダンスを布団の中で見る あげあげぱん @ageage2023
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