コティングリーのカバーストーリー

あげあげぱん

第1話

 良いですか。コティングリーのお婆さん。妖精なんてこの世に居ない。そうしてもらわないと我々が困るんです。


 我々が誰かだって。我々は財団ですよ。それ以上でも、それ以下でもない。でも、そんなことは重要じゃないんです。我々はここに、我々のことを話すために訪ねているんじゃない。とはいえ、お出ししていただいたお茶はいただきますがね。いや、ここはのどかなところだ。友達とピクニックなんかしたら楽しいでしょうね。


 それで、問題なのはですね。あなたが、まだ幼い子どもだったころ。この土地で妖精と遊んでいただなんてホラを吹いて回っていたことなんです。それは我々としては困ることなんですよ。


 え、ホラなんかじゃないって? いや、あれは嘘だったということにしてもらわないと困るんです。ですから、我々でカバーストーリーを用意しました。あなたは幼いころ、嘘をついていた。妖精に会っただなんて嘘を吹聴して回り、証拠をでっち上げるためのトリック写真まで撮った。


 あなたが幼いころ友達だなんて言っていた妖精は存在しない。全て、あなたの妄想だった。そんな嘘を振り撒いたのは、皆の注目を浴びたかったから。良いストーリーでしょう? この話をあなたの口から話すだけで、我々はあなたに大金を差し上げます。


 嫌だ? あのねえ、あなたに拒否権なんか無いんですよ。あなたはただ、本当は妖精なんか居なかったと言えばそれで良いんだ。それ以外の答えは必要ない。こちらが穏便に話をしているうちに、賢明な返事をしてくれよ。


 ……しょうがない婆さんだ。おい、お前たち。このレディを押さえてさしあげろ。おい、こら! 逃げようとするんじゃねえよ! お前たち、そのババアをちゃんと押さえとけ。記憶処理装置にかける。目をしっかり開かせろ。片目で良い!


 ――カシャ――


 ……では、お婆さん。あなたは幼いころ妖精を見たと嘘をついた。間違いありませんね?


「……はい……」


 いやあ、穏便に話ができて良かったよ。あなたが幼いころに撮ったトリック写真については、我々で、そのタネを公表します。構いませんね?


「……はい……」


 建設的な、お話ができて良かったです。それでは、もう会うこともないでしょう。


 さようなら。

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コティングリーのカバーストーリー あげあげぱん @ageage2023

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