間違えた場所

stdn0316

第1話

 富士山近くのキャンプ場にソロキャンプに来た。一時期のキャンプブームは過ぎたかと思っていたが、今回は予約で一杯のようだった。


 食材の買い出しや付近を軽く観光し、昼過ぎにはキャンプ場についた。いい場所が取れるだろうか。


 受付を済ませ、テントを張るスペースを探しに出ると、来ているのはまだ2〜3組ほどであった。テントが張ってあるだけで、付近に人は見えない。


 これはラッキーと自分の気に入ったスペースを見つけ、テントやタープを設置した。

 焚き火にあたり、キャンプ用の椅子に腰掛けてコーヒーを飲んでいると、目の前を1人のキャンパーが横切った。


 何となく違和感を感じて彼が歩いた方を見やるが、誰もいない。それに、冬キャンプではあり得ないほどの軽装だった。

 足音もちゃんと聞こえたのだが...


 山ではこの世のものではない存在と遭遇するのも珍しくない。来る場所を間違えてしまったのだろうと納得した。


 コーヒーを飲みながらの読書に夢中になってしまい、ふと顔を上げると辺りは暗くなっていた。夕飯を作らなければ。


 その時、少し前まではまばらにしかなかったテントがかなり増えているのに気づいた。

 ちょうど予約が一杯になるくらいだろうか。


 だがどのテントも焚き火をつけていない。誰の姿も見えない。

 そこかしこで賑やかな話し声と周囲を歩き回る足音だけが聞こえた。


 その異様な風景に気づかされた。

 来る場所を間違えたのは自分の方だった。


 いつの間にか話し声と足音は止み、複数人からの視線を感じる。

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