黄昏時の世界を描く、ささやかな希望に満ちた物語
- ★★★ Excellent!!!
西暦2056年、日本に似たそうではないところ。続く人口減少によって、各地の市町村は徐々に姿を消していこうとしている。そんな中、伝承蒐集を専門とする巴は、国のとある事業を実施するため、同じく消滅の運命にある三沐島を訪れる…
すべてが黄昏時の淡い光りに包まれているような世界。人々の間には、乾いた諦念や重い失望といった感情が見え隠れします。
その諦観に満ちていたはずの景色が、後半にがらりと違った色を伴って輝き出す経過は美しいの一言。目頭が熱くなって仕方がありません。
静謐な、けれど力強く迷いのない筆致はまっすぐに読み手の心を打ち、黄昏時が迫ろうとしている現実の日本を生きる私たちにも、小さくとも希望があることを教えてくれます。
繊細な衣を幾重にも重ねるように紡がれていく人と神の物語、ぜひ堪能してください!