なりたい自分になれる祠

仁志隆生

なりたい自分になれる祠

 いつの頃からあるのか知らないけど、七日七晩願えばなりたい自分になれるという小さな祠が町の外れにある。

 ただ誰でもというわけではなく、祠の主に認められた人がというのが。


 そんなおとぎ話みたいなことと思いつつもこうして願いに来ている。

 今日で七日目……本当に叶うのかなあ?

 

 わたしはぶちゃいくだしぽっちゃり。

 痩せようと思ってダイエットしてもすぐ戻っちゃう。

 それでバカにされてばかり……。


 もう藁にも縋る思いだったけど、骨折り損のくたびれ儲けにならないかなあと思いながら祈っていると。


 ……ギィ、と何かが動いた音がした。

 

「え?」


 よく見ると祠の扉が少し開いていた。

 そういえばこれって開けようとしても開かないって聞いた。

 開くのは願いが叶う時だけ……あ。


 扉がゆっくり開いていってる。

 や、やった、願いが叶うんだ!

 早く全部開いて!



 しばらくすると扉が完全に開いた。

 中は真っ暗で見えない。

 それはいいけど……。


 手や体を見ても変わってない、元のまま。

 ……やっぱおとぎ話だったのかな。

 扉はたまたま開いただけだったのかも。


 ん? あれ?

 中に何かある?

 よく見えない……えっと。

 わたしはスマホのライトを点けて中を照らした。

 

「って、キャアアア!?」


 そ、そこにあったのは……人の頭蓋骨。

 それと手や足、あばら骨もあるっぽい。


「な、なにこれ? なんで骨が」


” それはねえ、願いを叶えるためよ ”


「え?」

 誰かいるのと思って辺りを見たけど、いなかった?


” どこ見てるの、ここよここ ”


「え、え……ま、まさか」


” そうよ、あたしは目の前にある骨。ああ、もうどのくらい経ったかなあ ”


「あ、あの、もしかしてあなたが願いを叶えてくれるのですか?」

 怖いけど聞いてみた。


” 違うわよ。 ”


「へ? ……え」

 気がついたらわたしの胸に骨の手が刺さっていた。


” ちょっと痛いけど、我慢してね ”


「え、え……ギャアアー!」


――――――


「うん、いい体ね。ほんとふっくらしてて健康的だわ」


 そう言っているのは、わたし。

 ううん、わたしの姿をした何か……。


「ありがとね。これで願いがかなったわ」


” ど、どういう事? ”


「あたしね、痩せてて病気がちな自分が嫌だった。そんな時この祠の事を知って、あなたと同じように七日七晩願ったわ。そして扉が開いたかと思ったらね」


” ……? ”

 そう、今のわたしは骨だけで、祠に入れられている。


「というより元々あった骨と入れ替わったのよ」


” え、どういう事? ”


「あたしもよく知らないけど、最初の人が理想通りになれず悩んたみたい。それで死の間際に自分の理想通りの人が来たら祠の扉が開いて入れ替われる呪いみたいなのを見つけて、それを自分にかけてこの祠で最後を迎えたんだって」


” じ、じゃあ前はその人? ”


「前の人じゃないみたいよ……まあ、あなたも待ってればいつかはね」


” そ、そんな。わたしの理想通りな子だとここに来ないかも ”


「そうでもないわよ。だって前の人は病気がちで薄命な影がある女の子になりたかったんだって。だから拗らせたのが来るかもしれないよ」


” いたとしてもいつになるか……ねえ、体返して! ”


「嫌よ、せっかく健康でぽっちゃり可愛い体になれたんだから。ま、それっぽい子いたらここに来るように話してあげるから、待っててね」


” え、いや、待って閉めないでー! ”


 目の前が暗くなっていった……。


――――――


 ああ、もうどのくらい待ったかなあ。

 覚えてないや。


 もう来ないんじゃないかなって諦めかけてた。

 そんな時に、こんな理想通りの子が来るなんて。


 さあ、早く開いて。

 やっとなりたい自分になれるんだ……。


 フフフフフ……。

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