切り取られた花
はすみらいと
切り取られた花
趣味は花を愛でること。男にしてはなんて言われるのもわかりきっている。
馬鹿にするのは自由にすればいい。週に一度の僕の楽しみで。唯一無二の幸福。
ああ、今日も嫌みたらしくねちねちと。苛立たしいクソみたいな汗ばんだ上司の小言に、振り回された。もっと上手く立ち回れたらいいのに。
つるりとした白と赤。脳裏を掠める光景に心踊る。華の金曜日、華金。
まさしくふさわしい日だ。どんなものに花を活けるか考えるだけで楽しい。花屋に向かう足取りは軽い。
こんな日は薔薇がいいかもしれないな。流行る心を落ち着かせてみる。一人暮らしだ父親にとやかく言われたりすることもない。
子供の頃はよく男の癖にとなじられ、殴られたものだ。暴力では何も得られやしない。そんなこともわからなかったらしい。最後に会ったのは何時だったろうか。結局父親は、母に離婚届を叩きつけられ挙げ句。認知症も進んで今は介護施設で子供のように、窘められ過ごしている。
父親には薔薇色の人生はついぞ訪れることは無かった。
どの花も素晴らしいけど。今日は人生においては、未来を彩り変えてくれる気がする。
ただ残念なのは、どの色を選んでも同じ色に染まってしまうこと。
家路について花を活ける、それは頭を切り取った人だったもの。花と同じように綺麗で素晴らしいと思ったはずのもの。
つい最近手に入れた最新の首元に活ける。ほんとはこう言ってあげたかった。逃げさえしなければ。「花のように美しく、どんな花も似合う女性だと。あなたに来る薔薇色の日々に」
首より上を失ってもまだ素晴らしい、むしろ今の方が良い。汚い言葉を話す顔が花に取って変わったそれだけのこと。花はやがて血を吸って色が変わってしまうそれが酷く悲しい。
切り取った手の指先に⋯⋯。
明日には捨てなければならない。人もまた花と同じ。綺麗な瞬間を切り取った時点で。また身繕えばいい。
「人生に祝福を、薔薇色のように染まる彼女達に」
きっと大丈夫。いつか僕にも訪れる。
薔薇色のようでは無いかもしれないけど。
一瞬だけ綺麗に切り取ったそんな彼女達のように。父のようにはならない。あんな惨めな結末は、美しくは無いだろう。
切り取られた花 はすみらいと @hasumiwrite
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