第6話 混沌の中へ
僕を縛り付けていたゲームたち。それは、すべて僕自身が作り出した怪物だった。
「金を追うゲーム」、「成長するゲーム」、「仲間をつくるゲーム」、そして「自由になるゲーム」。
それらは僕を支配し、日々の行動、思考、さらには夢の中にまで侵食してきた。僕はそれに気づきながらも目を逸らし続け、いつしか怪物たちは僕の世界そのものを覆い尽くすまでに成長していたのだ。
一つずつ、その怪物たちと向き合う旅が始まった。
その過程で僕は、自分が作り出したそれらの「ゲーム」には形があり、声があり、触れることができるほど実体を伴っていることに気づいた。それらは僕の心の奥底から這い出した歪な存在だった。
夢の中で僕は繰り返し対峙した。鎖に縛られた巨大な心臓、蠢く肉塊、終わりのない階段、そして耳元で囁き続ける声。彼らは決して僕を傷つけようとするのではない。ただ、僕の心の隙間を埋めようとしていた。
だがその埋め方は、まるで溺れる人間が人を引きずり込むようなものだった。僕を救うふりをしながら、ゆっくりと飲み込もうとしていたのだ。
全ての怪物と向き合い、手放したと思ったその夜、僕は再び夢を見た。
その夢は、これまでのどれとも違っていた。周囲は深い霧に覆われ、視界はほとんどなかった。ただ、その霧の向こうから、かすかな足音が聞こえてくる。
足音は少しずつ近づいてくる。僕はその音に気づかないふりをしようとしたが、それは無駄だった。音はやがて僕の背後で止まり、冷たい指先が僕の肩に触れた。
「終わったと思ったかい?」
耳元で囁く声は、かつて僕が手放した怪物たちのものだった。振り返るとそこには、異形の影が立っていた。それはこれまでのすべての怪物が一つになったような存在だった。蠢く肉、絡まる鎖、無数の瞳と口――それは見る者に説明不能の不快感を与える姿をしていた。
「お前はまた新しいゲームを作ろうとしている。それに気づいているか?」
その言葉に、僕はハッとした。確かに、自由を手放したことで解放されたはずなのに、僕の心のどこかで「次は何を追い求めるべきか」を探している自分がいた。
怪物はその隙間に生まれようとしていたのだ。
僕は深く息を吸い込み、答えを出した。
「僕はもう、何も追い求めない。」
その瞬間、霧が晴れ、怪物の姿が崩れ落ちていった。だがそれは完全に消えることはなかった。ただ、僕の影の中へと溶け込むようにして消えていったのだ。
目を覚ますと、部屋の中は静まり返っていた。窓から差し込む朝の光が、まるで新しい世界の訪れを告げているかのように柔らかく僕を包んでいた。
だが、僕は知っている。
怪物たちは完全に消えたわけではない。彼らは僕の中に眠っているだけだ。そして、再び僕が何かを強く求め、執着した瞬間に目を覚ますだろう。
けれど、それでいいのだ――僕はそう思った。怪物たちは僕の一部であり、完全に無くすことができないのならば、それらと共に生きていくしかないのだから。
混沌としたこの世界は恐ろしい。だがその恐怖こそが、僕が本当に生きている証なのかもしれない。
僕は今日も、新たな混沌の中へ足を踏み入れる。それは恐怖ではなく、自由そのものだ。
ゲーム・オーバー まさか からだ @panndamann74
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