ファンタジーの世界のはなし
あんぜ
ナーロッパの魔法
ファンタジーと言っても異世界ファンタジー、それも中世西洋、所謂ナーロッパのなろう系ファンタジーですね。その独特の世界観を覗いて感じた事、驚いた事、そして考察やアイデアなんかを語っていきたいと思ってます。
最初はナーロッパの魔法ですね。これ、なろう系ファンタジーを通してすごく独特で、独自の共通した世界観が構築されてるなと思いました。私はどちらかというと、TRPGのゲーマーであり、古い伝説伝承なんかを読んでは忘れする半端な古代モノ好きであり、中世・近世魔術のグリモア好きだったりします。
なろう系ナーロッパの魔法と、私が慣れ親しんできた魔法、このいちばんの違いは何よりも『手段』と『目的』かなと思います。その辺に思い至った話をしていきたいと思います。
古典的TRPGや中世・近世魔術の魔法
古典的TRPGとかの魔法は、ゲームが破綻しないようにルール上で魔法に何ができるかを明記してあります。TRPGのプレイヤーってのは、とにかくルール内で無茶をするんですよ。正に、なろう系ファンタジーの主人公のごとく! だから、魔法でできる事ってのは限られているわけです。
私はGMをやってましたので、その辺、無茶をするプレイヤーを毎回のようにみてきました。全員がなろう系主人公みたいな行動しますからね。考えても見てください、その辺のなろう系主人公が集まって普通のゲームシナリオを遊ぶんですよ。どれだけ混沌としたセッションになるか想像に難くないと思います。(そういった無茶な発想を楽しむゲームももちろんあるのですが、置いときましょう)
要は、TRPGの魔法では何ができるかの『目的』が決まってるんですね。これがしっかり決まってるゲームほど、破綻はしづらいです。
中世・近世魔術なんかも同じですね。手順や触媒、呪文などの神秘性、所謂非日常感を演出することが大事です。ただ、こういう魔術は当然のように『目的』が決まっています。いろんな魔術がありますが、どれも『目的』の決まっていない魔術なんてまず無かったと思います。『目的』がなければ魔術なんて必要ありませんしね。
なろう系の魔法
ただ、なろう系の魔法は違います。おそらく、なろう系の魔法はCRPGの系譜を経ているのだと思います。要は、画面上に映し出される映像表現としてですね。コンピュータのグラフィック性能が上がることで、その映像表現はどんどん派手になっていきました。そこで多用されるようになったのが四大元素ですね。古代ギリシャの時代からあって、中近世でパラケルススが四大精霊とかくっつけちゃって、それがゲームに多用されたわけです。色も付けやすくて印象的ですからね。
(あ、全然関係ないですけど、五大(エーテルや空)はあまり見ませんね。光とか闇とかまた別方向のは見ますけど、イメージしづらいからでしょうか?)
とにかく、四大元素の魔法が割となろう系の定番じゃないかなと思います。割と濃いめのファンタジーでも四大だったりしますしね。水が沸き上がってきて敵を倒したり、炎が湧き上がって敵を倒したり、石の槍が空中や地面から湧いて出たりすることもありますね。
四大元素というと、中世・近世魔術なんかでも要素として扱われます。ただ、あの辺の魔術はあくまで要素と言うか、なろう系の魔法に比べるとせいぜいフレーバーなんですよね。何となくそれっぽいフレーバーで非日常に訴えかける、リアリティをもたらしてるわけです。決して、水が沸き上がって問題を解決してくれるわけでは無い点が違います。
まあ、四大元素じゃないなろう系も多いよというのもわかります。この話の要点はそこではないのですから。なろう系の魔法の特徴は、『目的』ではなく『手段』が先に立っているんですよね。たぶんこれ、CRPGの敵を倒すという単調な『目的』にいろんな『手段』を考えた結果だと思うんです。
手段と目的
古典的TRPGでなろう系主人公は珍しくない。なのに破綻しないのは魔法に『目的』がまず先にあったからなのは説明しましたが、その場合の『手段』ってそこまで重要じゃないんですよね。
たとえばファイアボールのエフェクトが、いきなり敵の中心で爆発するのか、それともまず槍が飛んで行って爆発するのか、あるいは爆発ではなく火に飲まれるだけなのか……というのは実はそこまで重要じゃないんですよ。もちろん、そこにプレイヤーと言う名のなろう系主人公が現れ、爆発するならその衝撃波で敵の耳を聞こえなくする! とか、落下の衝撃を減らす! とか、酸素を燃やし尽くして窒息させる! とか、レジストファイアかけて槍の前に立って俺が犠牲になる! とか、まあ本当色々言ってくるわけです、マジで。GMも暇なら対応するけれど、大抵はセッション時間もあるのでナシで進めるわけです。
なろう系の魔法は違います。まず、『目的』ではなく『手段』が先に立ちます。『目的』の無い属性と言う名の『手段』を様々に応用して色々な効果の魔法を作ってる感じですね。もしこれが、『目的』が先に立っているのであれば、属性なんてなんでもいいはずなんですよね。
だからそこにTRPGのプレイヤーみたいな主人公が居ると、割と世界を破綻させるような使い方をしてくるわけです。
水魔法とかにしても、まず水を創造するところから始まったりしますが、実はこれ、古典的なTRPGでは物を創造する魔法っていうのはかなり制限されてきたんですよね。理由は破綻しやすいからです。無から創造したものっていうものはとにかく役に立ちます。エネルギーに変換できたり、商売にできたり、プレイヤーの玩具になりやすいですから(私もよくやりました)。
そして水が作れて操れるなら氷も作れるだろう。氷が作れるならそれを高速で飛ばせるだろう……というのが『手段』が先に立つなろう系の魔法なわけです。なんで高速で飛ばせるんやとTRPGのGMが居たら言うでしょうけれど。
ただし、水で何でも解決できるわけではありません。水をフレーバーとして何か別の『目的』を達成するような中世・近世魔術とも違います。CRPGの系譜の性か、なろう系の魔法は敵を倒すという単調な『目的』に特化しがちです。四大を創造し、操るだけでは魔法としてできることが限られてしまうため、できない部分は属性を増やしたり、無属性という何でもかんでも詰め込んだ便利属性を作ったり、道具で代用するところが、ちょっと夢がないなとは感じますね。
あと、水を操ることでできることをとことんまで考えると、能力バトル系になってしまって魔法という幻想的な要素が失われるのが残念ではあります。体内の水を沸騰させて終わり――みたいな。
まあ、そんな風に私は、魔法そのものの『手段』と『目的』の違いをなろう系ナーロッパの魔法に感じましたが如何でしたでしょうか。ファンタジーは自由な発想が売りではあるのですが、私はどちらかというと幻想性に重きを置くので、理屈っぽい割に魔法は『目的』を重要視するタイプですね。
なろう系の魔法は『目的』が決められていないため、TRPGのプレイヤーとしての楽しみがあると思います。ゲームのグリッチやチートを見つけて愉しんでる感じですね。世界観的には色々破綻したシステムだとは思います。何より、その発想を思いつくのが主人公だけとは限らないのですから(TRPGのプレイヤーを見た限りでは)。
次の更新予定
2025年1月10日 19:07
ファンタジーの世界のはなし あんぜ @anze
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