第2話 実らないアプローチはどこか失恋に似ている
ゴルフの『打』には、おおざっぱに分けて3つの種類がある。
①まずは「強打」。いわゆるティーショットなどがこれに相当する。力加減を考えずにできるだけ遠くに飛ばし、少しでもグリーンに近づこうとするショットだ。
②お次は「寄せ」。あと一打でグリーンに届くという時、打つクラブの番手や力加減をコントロールして、うまくグリーンオンを狙う、アプローチと呼ばれるショットだ。
……先程見事なトップのミスショットでグリーンをスルーした
アプローチの理想としては、高く浮かせてドスンとグリーンに落下させるのが基本となる、そうしないとゴルフボールというやつは止まらないからだ。
ただ、重力に逆らって高く浮かせるには、それなりの衝突エネルギー、つまりパワーが必要になって来る。
で、このトップというミスショットは、ボールの上っ面を叩いてしまったがためにクラブの
ザシュッ!
徳富さんのバンカーショットが砂を巻き上げ、見事な軌道を描いてグリーンに落ちる……バンカーインしてから5回目にして、ようやく。
が、それでも下りのグリーンを無常にも転がっていき、グリーンエッジを通過して2mほど進んだところで何とか止まった。
私、キャディの
「ピッチングで行きます」
「はいパター」
「ピッチングウェッジください」
「パターでどうぞ」
「ぴっちんぐうぅぅぅぅ」
しまいに涙目になる徳富さん。仕方ないので折れて彼にPWを手渡す。
まぁ気持ちは分からないでもない、これはゲートボールでもグランドゴルフでもない普通のゴルフなのだから、グリーンが近いからと言って無難にパターで転がすのはまぁカッコ悪いだろう、逆に綺麗な放物線を描いてピンにピタリと寄せられれば、確かに絵になる一打ではあるのだが……
ドスッ
案の定、彼のPWはボールの前に地面を叩いてしまい、その余波を受けたボールはたった30cmほど動いて止まった。
いやぁ予想していたとはいえ、見事なザックリだ(勿論ミスショット)。
「はいパター」
私の圧に彼は泣く泣くパターを受け取り、そして転がす。手前のフェアウェイゾーンを超え、そこから5mばかりの距離をスルスルと転がっていき……カコンと音を立ててカップインした。
「ぎゃはははははは、ナーイスイーン」
「最初っからキャディさんの言うこと聞いとけっての」
結局10打でこのホールを終えた
……実らないアプローチが空しいのは、恋でもゴルフでも同じようだ。
ちなみにティショットでOBだった大尾さんは5on、4パットの9打だった……ここミドルホール(パー4)なんですけど……。
さて、最後の一人、
「おりゃ! よしよしよし……って、あああああっそっちじゃねぇ止まれとまれとまれえぇぇぇ」
「「落ちろおぉぉぉぉ!」」
ゴルフの「打」。その③
パター。グリーンに乗った球を転がしてカップに入れる一打。
これがすさまじくダメなのが彼、鳩賀さんだったりする……。
3馬鹿ゴルファーは今日も大叩き 素通り寺(ストーリーテラー) @4432ed
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