楽しいグルメへの案内人
楽しい週末グルメを満喫した翌日、私は次の週末グルメを楽しむために勤労に従事していた。そして今は束の間の休憩タイムである。
私は休憩室にあるテレビをぼーっと観ながら、最早何度食べたか分からないカップラーメンをズズズとすすりながら食べていた。
そんな時、テレビから『好~きで~す~、好~きで~す~、好~き~好~き~』と妙に耳に残る歌と共にすき家のCMが流れてきた。
「ふふっ。昨日は本当に楽しい体験でしたわ。見た目の量も凄かったですし、1度に色んなトッピングを楽しめたのも凄くて。それに、最後はテーブルに備え付けられているドレッシングをかけて食べるんですもの」
CMを観ながら昨日の週末グルメを思い出し、自然と笑顔がこぼれる。昨日は本当に楽しい食事時間だった。
そんな思い出に浸っている丁度その時、休憩室に春香さんがやってきた。
「おっす、エマちゃん。エマちゃんも今、休憩時間だったんだ」
「ええ、そうですわ。春香さんと休憩時間が被るのは久々ですわね」
「ここのスーパー、バイト店員が少ないからね~」
そう言って春香さんはテーブルに着き、手に持っていたお弁当を開いて食べ始めた。
「春香さんはいつも手作りのお弁当ですの? 仕事をしながら料理までやっているのは本当に凄いですわ」
「そんな大層なものでもないけどね。私より、不慣れななかでも1つずつ頑張って覚えていって、今では2つのバイトを掛け持ちして働いてるエマちゃんの方がもっと凄いよ。……普段の食生活はもっと気を付けた方がいいとは思うけどね」
春香さんは私が食べているカップラーメンを見て、苦笑いを浮かべつつそう言った。
正直言って私は結構不器用な方で、尚且つこれまでの人生で料理など一度もやった事がない。そんな私が包丁を持ったり火を扱ったりするより、十分美味しい日本の既製品を食べる方が安全かつ美味しいのだ。
そんな結論に行き着いた私は、これまで自分で料理をしようとは一度も考える事がなかった。
「これも週末グルメを楽しむためのエッセンスですわ。春香さんがいつも連れて行ってくれる週末グルメを楽しむためなら、辛い勤労も淡泊な食事も苦ではありませんもの」
「そこまで言ってもらえると、紹介している私も嬉しいわ」
それまで一度も働いたことが無かった私は、本当にダメダメだった。
何度も失敗しては注意され、注意されてもまた同じ失敗をしてしまう。気を抜いているわけでも、やる気が無いわけでもなく、気を張って頑張っていてもそうだったのだ。
失敗を繰り返し、それでも生活のためにバイトを辞める事ができない私は、そんな生活のなかで少しずつ精神をすり減らしていってしまい、ついにはバイト中に泣きだしてしまった。
その時、私の教育係としていつも私のフォローをしてくれていた春香さんが、『よし、明日は何か美味しいものを食べに行きましょう! 明日は私のおごりよ!』と週末の休日に私を食事に誘ってくれたのだ。
これが私たちの週末グルメの始まりだった。
「春香さんの紹介してくれるお食事処はどこも本当に楽しくて、いつも驚きの連続でしたわ。だから私、そんな週末グルメを楽しむために頑張れてますの」
「そっか、なら私の選択は間違ってなかったようね。……実はね、単純に美味しいお店って考えると、他にも色々と選択肢はあったの」
そう言う春香さんは、ちょっと照れくさそうにその先を話し出した。
「でもエマちゃんは、これまでも色んな美味しいものを食べてきたと思うから、単純に美味しいお店だと印象がいまいちかなって思ったのよ。だから私は考えたの、エマちゃんには『楽しい体験ができるところを紹介しよう』ってね」
「そうだったんでしたの⁉ それでしたら、私はまんまと春香さんにしてやられましたわね。だって私、今では週末が来るのが毎日本当に待ち遠しいんですもの」
そう言って私が笑うと、それを受けて春香さんも嬉しそうに笑う。今の生活は、何不自由ない昔とは全く違うものだったが……それでも私は、昔から本当に恵まれた人生を送らせてもらっている。
そんな事をしみじみと感じつつ、この流れでちょっと挑戦的なことを言ってみたくなった。
「それでしたら、次の週末グルメも楽しみですわね。次はどのようにして、私を楽しませて頂けるのでしょうか?」
「うわ、そういうこと言っちゃう? そうね~。……じゃあ次は、私の家で私の手料理を振る舞ってあげるわ」
「春香さんの手料理ですの!」
その意外な提案に私は驚いた。
「勿論、ただの手料理じゃないわ。意外な食材を意外な調理法で頂く……駄菓子メシよ!」
「駄菓子ですの⁉」
渾身のドヤ顔をキメる春香さんと、先ほどより更に驚き、期待に胸を膨らませる私。
これまで私を支えてくれていた週末グルメは、これからも私を楽しませてくれそうだ。
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読者の皆様、本作を最後まで読んでいただき誠にありがとうございました( ⸝⸝•ᴗ•⸝⸝ )
本作は私の初挑戦となるグルメ系の短編小説で、本当に色々と試行錯誤しながら1万文字内に書きたいものを全て詰め込んだ作品となっております。
本作が読者の皆様にとって、『面白かった』『続きが読みたい』と思って頂けるような作品になっていれば幸いです。
それと本作はカクヨム短編賞への応募作品となっております。
ですのでもし、本作を読んで面白いと思って頂けましたら、フォローやご評価、レビュー等で応援頂けますと大変嬉しいです!
改めまして、本作を最後まで読んでいただき誠にありがとうございました!
没落お嬢様の週末グルメ 七瀬 莉々子 @nanase_ririko
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