第7話 祥雲
雅な音楽が流れている。
日本中のどこにいても、目を閉じて耳を澄ませば、龍笛、篳篥、笙、箏、琵琶、鞨鼓、鉦鼓、楽太鼓で奏でられる音色が、ゆるゆると風に溶けて流れているのが分かる。
雅楽の名曲、『越天楽』の音色である。
『越天楽』の音色の中に、桃の甘い香りが薄っすらと溶け込んでいる。
天からは桜の花びらが、はらはらと幾重にも舞い落ち、地面に触れると淡雪のように消えていく。
その中を一人の僧が歩いていく。
剃りあげた丸い頭。嬉しさが溢れ出しているような満面の笑顔。大きな福耳。
身につけているのは、ゆったりとした袈裟であり、丸々とした太鼓腹が、袈裟に収まらずに突き出ている。
肩に担いでいるのは、人々に分け与える福が入った頭陀袋。
七福神の一人、弥勒菩薩の化身とも言われる布袋尊であった。
表に出て来た人々は、布袋尊の笑顔を見ると、つられるように誰もが笑みを浮かべる。
一人では手に負えなかった、災いが消えていくのが感じられた。
災いの消えた後の空気は澄んでいる。前に進める。
「おめでとうございます」
「あけましておめでとうございます」
「良い年になりそうですな」
「嬉しいことです」
「今年もよろしくお願いします」
「こちらこそ」
周囲の人々と新年の挨拶を交わし合う。
大きな街にも、小さな村にも、分け隔てなく布袋尊は現れ、笑みと幸せをふりまいた。
福徳円満。家族円満。
無病息災。商売繁盛。
厄払い、厄払い……。
新春万福。長楽萬年。
永寿嘉福。笑門来福。
謹んで新春のお祝いを申し上げます。
巳年.2025年は、みなさまにとって、素晴らしい一年であり、また大きな飛躍の一年でありますように。
新年 笑門来福 七倉イルカ @nuts05
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