世、妖(あやかし)おらず ー烏非ずー

銀満ノ錦平

烏非ず


 冬頃によく黒い物体が空を覆うが如く飛び交っていてそれを迷惑そうに私はそれを見る。


 烏だ。


 烏が田んぼを耕していった後の剥きでた種子や昆虫などを食べにたむろしている。


 鳴き声は煩いし、電線に止まり爆撃かのように糞を落としてきて正直家にでてくる数体のゴキブリより目障りだと感じていた。  


 例え鳥がこうやって糞を出すことによりその糞の中にある種子が疎らに土に落ちる事で自然が広がっていくという話は聞くがそれでも烏は嫌い。


 嫌なものは嫌なのだ。


 それにこんなに何処から出てくるのかわからないくらいの数に辟易としていた。


 空が穢れる。


 空が…あの青く綺麗で、私達を包みこんでくれるあの優しい青を穢してしまうあの烏が許せなかった。


 こんなどす黒く私達の青空を遮り、騒音を撒き散らす害悪鳥を何とかして殺してやりたいと…。


 野鳥を保護するなんたら法だかは私には全く意味がない。


 人はこの世で一番賢いんだから何が必要な鳥で何が不必要な鳥かなんて分かるに決まっている。


 最低でもこんな烏は滅ぼしても構わないくらいだ。


 私は結局、烏を殲滅させるために試行錯誤した。


 銃など使えないし他のも時間も手間も金もかかる。


 結果、エアガンでなんとかすることにした。


 心許ないしこんなものでと思ったが、今合法的に玉を打てる銃はこれしかない。 


 空を…私の青空を視界から妨げる糞黒鳥を葬り去る。


 その日から周りの目を伺いながら…隙を見ながら…私は烏を打ち付けた。


 最初は勿論当たるわけがなかった。


 撃てども撃てども当たらず少し近づくだけで逃げるし逃げる度に空が黒のシミに穢される度に怒りと苛立ちが頭を侵食していく。


 だがやっていくうちに烏の行動パターンや逃げる時の癖などを把握できるようになった。


 玉も少し改造して金属の玉を撃てるようにした。


 そしてやっと一羽撃ち殺せた。


 やっと…やっと穢れを殺せた。


 私は歓喜に脳が揺れてる感覚を覚えた。


 駆け寄り、殺した烏の死骸を見て踏みつけてやろうと足を上げようとした。


 ふと烏の死骸を見た。


 シルエットはあのいつも空を覆う穢れた黒であった。


 あったが…。


 目がなかった。


 傷が付いて目が潰れたとかではなかった。


 本当になかった。


 口と思われてるとこは口がなく、嘴と思っていたものは例えるなら鬼の角のような風貌であった。


 ならば顔は何処にある…。


 というよりこれは烏なのか…?


 唖然として凝視していたら、本来ならお腹の部分から羽が動き始めそこから、ガラス玉の様な模様が浮かんできた。


 目だった。


 異様で不気味で不条理で…だけどその瞳はまるで私が大好きな空の色をしていた。


 その青空の瞳は、私を凝視しながら言葉を発した。


「ワタシは烏非ず、バツを与える。」


 その瞬間、周りにいた烏と思っていたモノが竜巻のようにこちらに向かってきた。


 よく見たらその集団は烏ではなく、この烏のシルエットをしたマモノ共だった。


 私は恐怖で身体が動けずそのマモノの集団が迫って来るのを眺めるしかなかった。


 そして私の周りに…蠢く様に周囲を覆っていた。


 先程まで見えていた私の青空が見えない。


 周囲の烏モドキが、かーかー…と雄たけびの様な鳴き声をあげている。


 しかしその鳴き声は段々と人の言葉に聞こえてくるようなり、それは


 イケニエ…イケニエ…イケニエ…イケニエ…イケニエ…


 という烏が鳴く訳のない言葉を発しながら徐々に視界がより黒くなる。


 逃げられない動けない抵抗できない怖い辛い助けて欲しい…


 口が動かず心の中で叫ぶしかなかった。


 私の身体にそれらが引っ付いてきた。


 覆われた私の皮膚が段々と鳥の…あの忌々しい烏のようなドス黒く穢れた姿になろうとしてるのが感覚で伝わってきた。


 嫌だ!!嫌だ!!嫌だ!!嫌だ!!嫌だ!!嫌だ!!


 あの空を覆う穢れた黒になりたくない!!


 烏には…烏のようなものにはなりたくない!!


 もう殺したりしない!!


 保護法を犯した罪で警察にも行く!


 だから!お願い助けて!!


 私の意識が段々と変わっていく。


 飛ぶ…とぶ…トブ…。


 ヒトを…捕まえて…主に渡す…。


 烏にし…空を覆い…ヒトを…我々のナカマに…。


 ワタシは…烏…カラス…。


 空を…覆う…カラス。


 かーかー かーかー























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