7 「凄さ」が演出し辛い戦車の戦い 〜砲手編 上〜

 武器と言えば、皆様は何が好きですか?


  剣や槍、盾、弓矢に魔法の杖、或いは銃やナイフなどなど、世界には魅力的な武器が沢山ありますね。


 ぼくがだいすきなのは、生身にせよロボにせよ二刀流!!

 特別な力はない、ただ純粋な技のみで強いとかされると更に燃える!!

 皆、バエルの元に集え!!



 とはいえ、戦車を語る以上は、それに縁のある武器かつ飛び道具である銃に注目してみましょう。

 あ、マジカルな銃ではなくて、あくまでも実在ないしそれに準ずるものに限ります。

 歩兵の魅力とは、にも繋がると思いますんで。


 さて、銃と言っても色々ありますよね。


 戦場で最も使われるであろうライフルは、現代の戦場を支配するバトルライフル、存在自体がイカした機構であるボルトアクション、これまた西部劇などでのスピンコックがかっこいいレバーアクション等々。


 機構はライフルと共通、しかしながら遥か遠距離から狙い撃つ、浪漫の固まりなスナイパーライフル。


 敵を圧倒する弾幕とライフルよりゴツくて強そうな見た目が滾らせてくれるマシンガン。


 取り回しに優れ、警察の特殊部隊なんかでお馴染みのサブマシンガン。


 ポンプアクションやレバーアクションもあれば、そんなの面倒だぜなセミオート及びフルオートもあるショットガン。


 そしてアクション映画の主人公なら1回は絶対に使うハンドガンにも、オートマチックやリボルバーと言った見た目からして種類がありますね。


 もちろん上記は用途や構造の話による区分であり、様々なメーカーが作った無数の銃があります。

 

 これらはそのままキャラクターの個性にもなりますね。 



 GetWildでお馴染みXYZなスイーパーと言えば、コルトパイソン357マグナム!!


 13が付く世界一の狙撃手と言えば、M16!!


 三代目大泥棒の相棒と言えば、 M19コンバットマグナム!!


 世界一不幸な不死身の刑事と言えば、ベレッタM92FS!!


 デトロイトのマシンガントークな黒人刑事と言えば、ブローニング・ハイパワー!!


 「こいつは世界一威力のある拳銃だ」の台詞が有名なダーティー刑事と言えば、M29 44マグナム!!


 自称ただのコック(元ネイビーシールズ)と言えば、M1911!!

 

 最近の作品で言うなら、ファーストリコリスはデトニクス45、その相棒はM&P9Lだったかな?


 あ、皆様はどっち派ですか?

 ぼくは千束ちゃん!

 


 こう言った個性を戦車に当てはめるなら、そのまんま乗ってる戦車ですね。

 対戦車に優れる長砲身や対人に優れる単砲身榴弾砲という用途の話、リロードの速さや積める弾数などと言った火力に関する要素は、戦車という存在において最も重要な要素です。


 火力より機動性だろって?

 じゃあ見てくださいよ、諸々理由があったとはいえ、我が国の戦車がアレだったが故に起きた醜態の数々!!

 なんだよ、欧州じゃ戦闘力低すぎて偵察用に使われていた、軽戦車のスチュアートにすらボッコボコにされる主力中戦車って……


 え? スチュアートには火力と装甲だけじゃなくて、機動性すらボロクソに負けてるじゃんって?

 知らんな。

 

 ちなみに、かのオットー・カリウス氏も、「戦車には火力、装甲防護力、機動性の三要素があり、バランスよく設計すれば最高の戦車になる。しかし、最終的に最も重要なのは火力だった」と語っています。



 しかし、ここで銃と戦車には決定的な違いがあります。


 それは、諸々の銃は多くの場合は使い手が自らのこだわりを持って選べるということ。

 体格に合わせて、或いは自分が得意とする戦い方、想定される戦場やミッションに合わせてなど理由は様々ですが、彼らのこだわりはプロっぽさの演出にもなるでしょう。

 或いは、多様な銃を巧みに使いこなすことで、「弘法筆を選ばず」なプロっぽさもアピールできましょう。


 ところが、戦車は乗員が自分で「せっかくだから、俺はこの戦車を選ぶぜ!!」とか存在しないです。

 転属願いくらいはありますが、例えば……


「今回のミッションは寒冷地での戦いだ。ドイツ戦車ではなくT-34で行くぞ!!」


……なんてやり取りが出てきたら、もう訳が分かりません。


 だって戦車ですよ?


 その軍だか組織だか個人だかは、そんなに沢山の種類の戦車を持っていて何がしたいんです?


 いちいちミッションに合わせて変えるってことは、乗る人全員や整備員は、操作方法とか性能とかが異なる全ての戦車に精通していて、弾や壊れた時の部品の確保も滞りなく出来るバックアップ態勢があり、ついでに"戦える戦車"を遊ばせておく余裕があるってことですよね?


 舐めプでもしてんのか?

 お前はアレか? 

 最初から全員で攻撃すれば絶対勝てるのに、怪人を一人一人送り込む悪の組織か?

 グロンギみたいに何か明確な理由があるんなら話は別ですが……


 ガンラックに並ぶたくさんの銃から、「よし、こいつを使うぞ」って引っ張り出すシーンは確かにカッコいいです。

 デートに着ていく服で悩む姿は、女の子ならかわいらしいですし、男の子なら微笑ましいでしょう。


 ですが、立ち並ぶ多様な戦車を前に「今回はどれにしようかな~」なんて、"ここは博物館か何かか?"、"お前は見学にでも来たのか?"ってツッコミのほうが勝っちゃいますよ。


 機動戦士なんかでも、色々な機体がハンガーにずらりと並ぶ、或いは持って行く武器を選ぶシーンがあるにせよ、パイロットが「昨日は2号機で戦ったぞ。特に壊れたりしてないけど、今日は1号機に乗ろう!」とかは、よっぽどの理由がないとやらないですよね?

 パイロットごとに機体が割り振られているのが普通です。


 つまり、この要素は戦車的には機動戦士寄りなんです。

 色々な戦車を味方で登場させるのをやるなら、せいぜい色々な戦車の寄り合い所帯にして共闘するくらいではないですかね、大洗チームみたいに何かしら理由を付けて。

 


 以上、まずは砲手と同じ「撃つ者」である「銃使い」について比較を開始しましたが、皆様お気付きですか?


 「砲手の要素はどこに行った?」と。

 


 「武器選び」は「銃使い」にはその人物が反映されます。

 しかし、「戦車選び」は存在自体を成り立たせるのが大変。

 ここまでは良いとして。


 何かしらの理由で「戦車選び」をするようにしたとしても、これって決定権は車長か、指揮官の仕事では?


砲手「今回は対戦車より対歩兵重視だ。長砲身で行きたい」

装填手「いや待ってくれ。あれは砲弾がでかいからリロード速度が下がる。威力は落ちるが、こっちのほうがいいんじゃないか?」

操縦手「今回の戦場は土質を気にしなくていい。みんなに合わせる」


 良かったな車長。

 凄さがアピールし辛いお前の、メンバーを取り纏める力を見せる場面かもしれないぞ。


 この場合で砲手の凄さアピールするなら……


 1つはどんな弾道特性や照準器でも当てられるアピールですかね、「弘法筆を選ばず」は比較対象との共通点。

 某大総統の「この手の武器は使い慣れていないのだがね(使えないとは言っていない)」と同じです。

 あの人は格闘武器ですが。

 


 もう一つは「ミッションに有効な砲と砲弾の選定」で知識の深さかもしれませんが……あの、元も子もないこと言っていいですか?


 比較がよっぽど癖が強い大砲揃いでもなきゃ、いちいち選定する理由あります?


「今回は対人戦闘がメインだ。榴弾火力を重視してないドイツ軍のパンターより榴弾砲を積んでいる日本のチハだ!!」


 いや、別にパンターでいいじゃん、榴弾撃てないわけじゃないんだし、万が一戦車出てきても戦えるし。

 パンターが砲塔一切回せないレベルの密林ですとかなら……ま、まあ……

 

 上は極端な例ですが、言っちゃ悪いですが所詮は戦車砲。

 そもそも、銃ほど多様に使い分けることが必要な場面が早々ありません。

 いちいちあれこれ考えなくても、「遭遇の可能性がある敵戦車を全て正面から倒せる」のと「対人用に榴弾及び機銃が撃てる」及び「狙った所にちゃんと飛んでいく」、これを満たしてる一番強い戦車選べばいいんですよ。


 もちろん、火力最強ですとか言ってマウスみたいな見掛け倒しのポンコツを渡されたら「ふざけてんのかテメェ」ってなりますが、そう言う珍兵器はそもそも普通は選択肢にすら挙げないのが当たり前。

 だって命掛かってますから。


 如何でしょうか。

 生身で銃で戦う人たちより、既に色々設定を考えるのが窮屈ではありませんか?




 次回は、今回以上に砲手の凄さ、引いては戦車をカッコよく描くことの厳しさを感じていただけるであろう、「戦闘シーンの窮屈さ」を主題に見ていこうと思います。


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「戦車」はなぜ創作に向かないかの考察 夢追い人 @yumeoinin

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