霊峰ウォルマルトの麓、霜の森に住むエルフたちは、冷凍食品を食べないと死ぬという絶望の世界に生きていました。エルフの長老を救うため、そして何よりも『本格炒め炒飯』(ニチレイ)への渇望を満たすため、転生者レエジ達は危険なダンジョンへと旅立ちます。
一見するとただの異世界転生冒険譚に思える(わけがない)本作。しかしその裏には、冷凍食品に依存した現代社会への痛烈な風刺が隠されていると感じるのは私だけでしょうか。エルフが冷凍食品なしでは生きられないという設定は、私たちがコンビニ弁当やインスタント食品なしでは生きていけない状況と重なり、背筋が凍ります。
主人公がダンジョンで遭遇するモンスターたちは過剰なカロリーの権化。「レンジでパラっと!」叫びながらモンスターを倒すシーンは、まるで私たちが栄養成分表示を見て見ぬふりをしながらポテチを貪る姿を思わせます。
そして、この物語は美しいラブストーリーでもあります。それは「愛があれば冷凍食品なんて……」という安易なものではなく、冷凍食品によって結ばれた、どこか共依存的な危うさと儚さを孕んでいるのです。彼らが最後にたどり着いた景色は、レンチンされた冷凍食品の温もりか、それとも孤独のグルメか。
「やられた!」と思いながら読み終わった後に、冷凍庫を開けるのが少し怖くなる。もしかしたら、私たちの日常は、すでに『冷凍炒飯黙示録』の中にあるのかもしれない。本作はそんなことすら思わせてくれる傑作短編です。今夜、あなたが食べる冷凍炒飯は、きっと儚い永遠の味がすることでしょう。
絶望と共に死に至るエルフ族が唯一希望を見出せるもの、それは冷凍食品だった──というトンチキな導入から始まる本作品だが、マクガフィン的に冷凍食品である必然性はまったくない
薬草でも、不思議な力のある宝石でも、魔法の指輪だっていいはずだ
だが、そんな物語はカクヨムに溢れている
だからこそ、作者は「冷凍食品がなければ死ぬエルフ」という素っ頓狂な設定を持ち出し、この物語をコメディに変えたのだろう
『日清中華 ジャージャー麺』(日清)
『ライスバーガー牛カルビ』(テーブルマーク)
『わが家の麺自慢 濃厚ごま香る 汁なし担々麺 』(ニッスイ)
と、冷凍食品の正式名称にメーカー名まで丁寧に表記されているところが余計に笑いを誘う
個人的には、旅に出る主人公を止めようとするヒロインへの対処が『井村屋謹製たい焼き(つぶあん)』(井村屋)を放り投げること、だったのがいちばんツボだった
フリスビーを投げられた犬か
なんだか不思議に面白い本作は、短いがゆえにすぐ読める
試しに読んでみてはいかがだろう
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こんなにド直球に商品名と会社名を隠さずに書く奴があるか!?
いや、マジで驚きました。
大体この手の商品名や企業名というものは、権利関係を気にしてぼかしたりもじったりして誤魔化したりするものですが、本作品ではもうド直球に、これでもかというほど、キャッチコピーまでセットで全部乗っけてぶちまけています。
しかも、一社だけにとどまらず、様々な企業の冷凍食品をまんべんなく。
この姿勢のストロングスタイルはまさに圧巻というべきでしょう。
それゆえに、それぞれの冷凍食品が本当に好きなんだなぁという愛情にも似た作者の気持ちと、商品のおいしさが伝わってきます。
普段冷凍食品に頼ることが全くない私ですが、思わず「たまには食べてみようかな」と思ってしまいました。
エルフはアレを食べなくては死んでしまうんです。
前世の記憶がある人間の16歳少年は、なんとアレの声が聞こえるんです。
アレを持ってきたら、恋人との結婚を長老が許すって言うんです。ヒーロー旅立ちます!!
異世界ファンタジーでしたら『魔物』とかがアレに当てはまりそうですが。もちろん違います。
ああ、ヒーローとヒロインのキスはアレの味ではなく胸きゅん恋の味で、ぱらぱらと降るのはアレではなく、正真正銘の雪なのです。
ですが不思議なもんで、読み手の脳内では。チャーハンの味と、米一粒ずつがくっつかないあの状態で鍋の中で舞っている風景が浮かんでしまうのです。
もしかしたら、この短編は長編に化けるかも知れません。みなさんも食べて、もとい読んで応援してみませんか?
こ、この小説、好きすぎるぜ……!!!
読み始めてほんの一分で、もう没頭しました。口元がニヤリとなっちゃいました。
ストーリーとして、その世界ではエルフたちが「冷凍食品」を愛好しています。それを食べないと死んでしまうと思うほどに。
そして、冷凍食品を手に入れるためには「ダンジョン」の中に入らねばなならない。異世界から転移してきた冷凍食品たちが、ダンジョンの奥底で冷凍されているという。
もう、設定が楽しすぎます。異世界ファンタジーものだと思って読み始めたら、突如羅列されていく「ニ〇レイ」、「味〇素」などの会社名や商品名。
知っている! この商品、知っているぞ! そしてどれも大好きだ!!!
こういう名前がいくつも出てきた段階で「ハッ」と目を奪われ、「これ絶対面白い奴! これ絶対好きな奴」と思って読み進めました。
至福の時でした。冷凍食品の数々、どれも美味しい。どれも大好き。それを手に取った時の幸せな思い出と共に、最後まで楽しく読めました。
でも、要注意。夜に読むと「飯テロ」の危険あるので、カロリーの問題などで致命的なダメージを負うかも。今ももう、「本格炒めチャーハン」の美味しそうなこと、美味しそうなこと。
最高に楽しい小説です。強くオススメ!!