十二月二十六日(木)

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日時:2024/12/26 20:11

差出人:住職<########@yahoo.co.jp>

宛先:魚崎<rx78########@gmail.com>

件名:Re:ご確認お願いいたします(魚崎)


本文:魚崎さま


こんばんは。

お時間いただいてしまい、申し訳ありません。

改めて拝読いたしました。

作品の方は、こちらで問題ないと思います。

私の話からよくこれほど再現できましたね、素晴らしいです。

良い結果になりますよう、お祈りしております。



                 住職

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 カクヨムコンに今回の話を書いてもいいかと住職に打診したのは、十二月十五日。『あなたには見えない世界のことを広く伝えていただきたいので』とすぐに快諾していただけた。そこでお願いしたのが、「私が記憶をなくしていた間に何が起きたのか」の聞き取りだった。


 さきほどまでの話を私はまるで自分が経験したかのように書いたが、実際のところ私の記憶は十二月一日の夜辺りから住職がモヤを握り潰して助けてくれた瞬間までほとんどない(寺に来た辺りからは、ぼんやりとある程度)。


 私は讃山からのメールを読んだ時点であの白いモヤとの道がついてしまい、夜にはすっかり滑り込まれてしまっていたのだ。DMを受け取り返信したのも、なんなら讃山にメールを返したのも私ではない。モヤである。


 二日ほどとはいえ、私ではないものが私の皮を被って私として暮らしていたのだ。そう考えるとたとえようもない不安感に襲われて、しばらく精神的に参っていた。


 職場での様子をそれとなく同僚に聞いたら、小綺麗にして浮かれた感じで働いていたようだ(ちなみにその間こなした仕事はだいぶ雑で、冷や汗を掻いた)。上司が「魚崎さんとこ、旦那さん戻ってきたの(単身赴任)?」と同僚にこっそり聞いていたらしい。そんな時期はとっくに過ぎてますよ部長。


 ※夫には十二月二日の夜に『寂しいよー会いたいよー』とLINEを送って『寝ろ』と一蹴されていた。それで折れたのか、そこから全く送っていなかった。


 当時はカクヨムコン長編の連載を始めたばかりだったが、SNSやカクヨムはそつなく運用していたと思われる。ご迷惑をお掛けしていたら、申し訳ありません。


 あれ以来讃山からのメールはないし、カクヨムからも消えていた。メールを送ったフォロワーさんのところにも連絡はないようなので(もしあればお知らせください)、おそらくこの近辺からは消えてしまったのだろう。


 もしかしたら、住職にバレた影響で、讃山とその母親に取り憑いていたモヤは体を捨てて逃げ出したかもしれない。それなら今頃、本物の二人は私より酷い記憶の消失に苦しめられているはずだ。今のところなんの連絡もないが、もし本物から連絡がくれば、協力はしようと思っている。


 住職曰く、◯◯様の紛いものは今もまだ本物に成り代わろうとしているらしい。そのために少しでも力を持つものを見ると我が身に引き込もうと飛びついていくそうだ。


 それでも、やっぱり紛いものは紛いものでしかないのを今、ひしひしと感じている。


 というのも、この話を書くためにメールをチェックしてうっかり●●●●を頭の中で音読してしまった。そのせいで、日常生活に支障が出続けている。簡単に言えば「世話ができる状態に環境を寄せられつつある」のである。


 今は住職の力も借りて、私にはお世話できないと必死に伝えてお許しを願っているところだ(ちなみに「◯◯があるので無理です」と言えばそれがなくなるので、具体的な理由をつけてはいけない)。いつかこの話も書けたらいいが、さすがに難しいかもしれない。私がこの先も書いていられるかは、◯◯様次第だ。


 まとまりのない話になってしまったが、今回はこれにて締めたい。


 お問い合わせいただいても◯◯様や●●●●についてはお答えできないので、ご了承いただきたい。白いモヤがそちらへ滑り込むことはないが、それ以上のことが起きる可能性はある。取り返しがつかない状況は避けたいだろう。怖いもの見たさはやめた方がいい。


 触らぬなんとかに祟りなし、は紛れもない真実である。



                                   (終)

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紛いもの 魚崎 依知子 @uosakiichiko

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