第4話 僧都殿の霊
今では昔のことですが、
冷泉小路の北には
さて、
それで、人々は恐れて近寄ることもなくなったのですが、
それを聞いた者たちは「お前にできるものか」と囃し立てました。
「必ず射てやる」
言い争いとなると男はそう断言して、夕暮れ時に僧都殿に行き、南に面した濡れ縁にひらりと上ってその時を待つことにしました。
すると東側の竹の生えた辺りから、例の赤い着物が現れて、聞いていた通りに庭へふわりと飛び上がりました。
これを見た男は、
矢は当然突き抜けていくものと思われましたが、着物は矢が刺さったまま、やはり榎の木へと登っていったのでした。
男が矢の当たった辺りを見に行くと、土の上には血のこぼれたあとが残っていました。
男が
そしてその男は、その夜に寝ながら死んでいたそうです。
後でこのことを聞いた人たちは皆「利益にもならないことをして死ぬとは」と呆れました。
命より大切なものはないのに、わけもなく勇猛さを示そうとして死ぬだなんて全く無駄なことだと、人々は語り伝えて来たのでした。
冷泉院東洞院僧都殿霊語 第四
今昔、
其れに、其の家にて見ければ、向の僧都殿の
男は本の讃岐の守の家に返て、諍つる者共に会て、此の由を語ければ、諍ふ者共、極く恐けり。其の
実に人は命に増す物は無きに、由無く「猛き心を見えむ」とて死ぬる、極て益無き事也となむ語り伝へたるとや。
*源
今昔物語〜本朝つけたり霊鬼 大高長太 @Ootaka_Chota
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