大和民族引きこもりの為移民する。
@LST-4001
第1話
2020年代の危機を何とか乗り越えた人類は順調に歴史を伸ばし、2100年代に達した。今、人類は太陽系に進出している。
核融合推進を実用化した世界は火星に拠点を築き上げていた。国家の枠組みが変わる事などなく、C、R国は変わらず社会共産主義を標榜した独裁国家であり続けている。A国も帝国主義は変わらず、火星の覇権を狙っていた。
核融合推進に続き重力の制御に成功した日本のとある企業は、推進方式を重力偏向推進に換装し小惑星帯に進出する事にした。直径100Kmを越える小惑星を見て「これ、中くり貫いたらコロニー作れるんじゃ・・・?」と気付いてしまった。
鉱石小惑星を開発する事で莫大な資源を元手に資金を手に入れたその企業は、重力制御技術を更に発展させ、掘削のついでに直径200Kmを越える小惑星を選びその中を円筒形にくりぬく事に成功、重力制御技術を使い与圧された土地を確保してしまった。氷を多量に含んだ小惑星を持ち込んだり、土星のリングから氷を取り込み、海を作り回転させることにより対流させたり、太陽の代わりに核融合炉のエネルギーを使った人工太陽を設置したりした。海に含まれるナトリウムは元々小惑星に含まれていたものだ。濃度を調整し地球の海を再現した。大気も小惑星に含まれている窒素や水を分解して酸素を確保し、地球の大気を再現した。
地球環境の再現の為、先ずは微生物を纏った土と木々を植林した。森と呼べる程に成長するまで大気の調整は困難を極めたが、動植物が排出する二酸化炭素を再現する事で安定していった。
森が出来たら地球から海や山の生物を持ち込み生態系を構築。温度管理と重力制御で気候を管理し、50年をかけ「日本の本州」を再現し、その企業は小惑星を「秋津洲」と名付けた。この小惑星には別階層として農業階層と工業階層などが造られ、従事者の為のインフラが整備されていた。
小惑星スペースコロニー化のノウハウを得たこの企業は日本政府に協力を求めた。C国の航宙艦の姿をレーダーが捉えたからである。有人での小惑星帯到着出来る程では無さそうだったが、火星を拠点にし、小惑星帯を探査している様であった。
2020年代から何も変わっていないメンタルを持つC国人達である。もし、日本が小惑星内部にインフラを整備し地球環境を再現している事を知られれば奪うというオプションを選ぶ可能性は高くなると思われた。
この130年で親C国政治家をほぼ駆逐し連合国支配からも抜け出した日本政府は航宙護衛艦隊を派遣する事を閣議決定し、300m級巡洋航宙戦艦「むさし」「ひえい」航宙駆逐艦「ふぶき」、「しらゆき」、「はつゆき」、「みゆき」を派遣した。この派遣は推進機関を企業からの提案で重力推進に換装する事も含まれている。「秋津洲」で造られた重力エンジンの換装は駆逐艦から行われ、機動性が約30%向上した。小惑星「秋津洲」では新規設計された自衛軍艦の建造計画が進められ、侵略に対する防衛戦力の拡充が進められていた。
取り合えずの安全を確保した企業は次の小惑星の開発に乗り出した。
国生み神話になぞり、伊予、筑紫、隠岐島と開発していった。
開発に200年をかけ、最終的に1つの400Km級小惑星に7つの200Km級、12の100Km級小惑星開発に成功し、使用できる表面積は日本の国土、領海以上を確保し、生態系も順調に育っていったのである。
時は戻り「秋津洲」の生態系が安定した2180年頃、日本政府はかの企業の要請に答え日本人で移住を希望する者の募集を秘密裏に始めた。特定の技能を持つ者からその家族を手始めに、宇宙関連の仕事を持つ企業の移住を進めた。初年度には千人程度で始め、穀物などの自給自足の目途が立ってからは年間数万人の移住を始めたのだった。日本の人口が年々減って行っている事に諸外国は疑念を持ったが、火星コロニーの移住だと言って日本政府は取り合わなかった。公式には自然保護区として日本国土を管理する数万人を残し完全移住を発表した。
地球の日本人が3千万人程度になると近隣諸外国の活動が怪しくなってきた。C国は軍の統制が怪しくなっており、軍閥の暴走が危険視されていた。A国内の軍需産業等はそれを歓迎しており、各地に火種をばらまいていた。世界は凝りもせず世界大戦に向かっている様であった。
そんな中、日本は完全移住を理由に地球上の国土は鎖国に移行していた。特定外国人などは強制送還され、二度と国土を踏めない様になっていた。残ったとしてもエネルギーは止まりインフラは整備されずに朽ち果てるに任されていたので、残りたいと思う者も居なかったであろう。各地にあった寺社仏閣などは遷座遷宮を「秋津洲」などに済ませており、伊勢神宮等の神宮、出雲大社などは特別に一つの小惑星を作り神の御座所としての機能を果たす様に造られたのであった。
国民がほぼ全員移住するのを見届けてから、陛下は最後のシャトルに乗り込まれた。これで国土に残っているのは軍の志願兵だけとなった。守り切れなくなるまでは守りたいと残った兵力は5万人で、後は自動機械が国土を護る事になる。自動機械群は要所に造られた施設で資源があるだけ製造、整備、補給が自動で行われる。
簡単には侵略を許さないようになっていたが、世界に攻められた場合、残った5万の兵士は脱出するように言い含められていた。
こうして日本と言う引きこもり大好きな民族は地球と言うカオスな世界を見捨て、宇宙に旅立っていくのであった。
大和民族引きこもりの為移民する。 @LST-4001
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