「金がなくても何かを生み出すだけで幸せ」だったとしても。
- ★★★ Excellent!!!
鷹仁(たかひとし)さんのX(旧Twitter)を見ていると、高確率で食べ物の写真が出てきます。
これがいつも美味しそうなんです。
著者の鷹仁(たかひとし)さんは生きるためのエネルギーとして食べることが大事だと知っている人なんだと僕は思います。
本作の中心人物「Mr.ソングライター」は「生活費を切り詰めて、不摂生がたた」り、「過労もあ」ってアパートで倒れ、亡くなりました。
その後、親元に戻ったと言うことだから、彼は実家を離れて創作でお金を稼いでいたことになります。
僕も親元を離れ、一人で生活しながら創作をしていた日々が十年以上あります。その中で、何か道を踏み外していたら、「Mr.ソングライター」のような結末を迎えていた可能性が十分あります。
今こうして生き延びているのは運が良かっただけでしょう。
そんな僕から見て「さよなら。Mr.ソングライター」は大変身につまされる物語でした。
話の筋としては、「Mr.ソングライター」の小学生時代の友人たちが、彼の死を知って、彼に向けた詩を書こうとする、というもの。
その中で、
> 詩を書きながら思った。これはMr.ソングライターへの贈り物であり、自分自身への手紙なのだ、と。大人になるにつれて離れてしまった過去の自分への言葉だと。
とあります。
この物語は大人が子どもだったあの頃に詩を書くことで戻ろうとする話でもあります。
詩やそれに類する文章たちは、それができる。
過去に言葉を届けることができる。
そんな風に創作することの意味を改めて再確認させてくれる良い作品だったと思います。
創作する多くの人に届くことを願っています。