流星に祈れば、願いが叶う。そんな言い伝えのある街で、人が消えた。
それは誰かが願ったから? そうらしいと言うものの噂に過ぎず、真相の分からぬまま一年が過ぎた。
主人公 希海は、想いを抱えて祈りの丘へ。それは不確かな願いのためでなく、好意を抱く真生を確かな存在にするため。
しかし幼馴染の漣は、お前たちは合わないと否定する。
星に願いを託すという夢のあるお話だけれど、希海たちを取り巻くのは重苦しい空気です。
でも希海や街の人々は、前を向いて生きている。起こったことは変えられないけれど、これから良い方向へ進むことは出来る。みんな心のどこかでそう信じているのでしょう。
ただそうやって強くあるには、支えが必要です。得られれば良いけれど、その当てさえもなかったら……。
一年前、なにが起きたのか。二つの願いがそれを明らかにします。
もうこんな悲劇は二度と起こらない、そう感じさせてくれる希望に溢れたラストでした。
そして読み終えた後、しばらく。
ああ、だから『パンドラの箱に星を集める』のか。と、深く深く納得しました。
身近な人たちが姿を消した。
何の前触れもなく、大切な人たちも知らない人たちも、世界から多くの人間が消え失せた。
人生に絶望してうずくまってもおかしくない状況で、少年少女たちはそれでも前を向いて歩こうとする。
パンドラの箱に残されたものが、本当に希望だったのかは誰にもわからない。
それでも、足を踏み出すことにはきっと意味がある。
幼くも強い願いは、世界を変える力となるか。
どこまでも広がる星空に、三人の少年少女たちの様々な心が溶け合っていくようです。
このような世界にありながら、温かさと澄みきった美しさが余韻を残してくれます。
とても美しい作品です。
『流星群の夜に、誰かが祈りの丘で願ってしまったんだ。世界なんて滅んでしまえ。皆いなくなってしまえ、って』
そう誰かが願ってしまった為に、主人公たちのいる町から、大半の住民が消えてしまったのが、今作の「パンドラの箱に星を集める」です。
希海、漣、真生は「世界は、滅びなかった。神様に消されなかった僕ら」として再び流星群の日を迎えます。
希海は「初めての恋に落ちた」相手、真生を祈りの丘で流星群を一緒に見る様、誘います。
そんな希海を心配して、幼馴染の漣が「希海と真生って合わねえだろ。全然」と言って、一緒に流星群を見ることを止めようとします。
最後まで読むと、漣がなぜそこまでお節介を焼くのかが分かる上、ちょっとホットココアが飲みたくなります。
あと、結末を知ると、これは一つのセカイ系だったんだ、と納得できます。
何にしても、非常に綺麗な話で、まとまってもいるので、とても読みやすい物語でした。
個人的に途中から、ずっとこの短編をアニメーションとして描くとしたら、誰の世界がぴったりだろ? と考え続けていました(普通に短編アニメであって良いクオリティだと思います)。
流星群を迫力ある感じで描くなら、新海誠かなぁ。
けど、キャラクターの描写とかは細田守の「時をかける少女」っぽいなぁ。
もうちょっとカジュアルな感じでいくなら、岡田麿里もありだなぁ。
そんな想像も楽しい短編でした。
どなたか、こういうビジュアルが合うのでは?と言うのがあったら、ぜひ教えてください。
個人的には岡田麿里に一票です。