どれだけ誠実であろうとしても逃れられない、甘美な底なし沼の恐怖

ある夏の日、子供がいない柳瀬夫妻は養護施設から一人の養子を迎えた。

高橋心美ちゃん、14歳。

聡明で礼儀正しく容姿端麗……などという言葉では言い尽くせない、何もかもを見通すかのような大きな瞳、魅惑的な唇、目が離せなくなるような美しさ。

優しく誠実な父親、理解のある母親、そこに迎えられた美しい娘。パズルのピースがはまるかのように収まった理想的な家族の像は、日を追うごとに少しずつ壊れていく。後になって思えば彼女を迎えた日が「終わりの始まり」だったに違いない……。

父親の卓也さんは一言で言えば誠実、少なくとも必死に誠実であろうとします。過去の出来事から家族というものに憧れ、家族のために考え模索し行動し、得体の知れない恐怖の中でもがき続けます。

一方の娘、心美ちゃんは……一言で言い表すことは到底不可能です。その大きな目で心の奥底を覗き、美しい顔の裏で人を操る策を巡らせ、小さく膨らんだ胸の奥で狂気を育て続けています。

それはまさに悪魔の智謀。卓也さんが手探りで求め続けた道を先回りして一つ一つ潰し、生ぬるい甘美な底なし沼に引きずり込む悪魔の所業。

決して逃れられない恐怖、貴方も是非ご体感ください。

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