第10話 続クライムファイト&平安大将棋
翌日、龍造寺は再び「クライムファイト」を起動した。画面には次の目的地「廃村」が表示され、どこか不安げな気配が漂っていた。埼玉県内で最も荒れ果てた地区として知られるその場所には、今までの戦闘では感じたことのない緊張感があった。
「廃村か…行くしかないな」
龍造寺は心を決め、スマートフォンを片手に、再び外の世界へと足を踏み出した。目的地へ向かう途中、彼はこれまでに戦った敵や得た技、アイテムを思い返していた。だが、どれほど力をつけても、この先にはもっと強力な敵が待ち受けていることは明白だ。
「ただのゲームのはずなのに、こんなにリアルに感じるなんて…」
龍造寺はつぶやきながら、廃村への道を進んだ。周囲はすっかり日が落ち、辺りは薄暗くなり始めている。途中、無人の車や倒れた看板などが目に入り、その風景がますます不安を掻き立てる。まるでこの場所自体が、ゲームに飲み込まれてしまったような錯覚に陥る。
やがて、廃村に到着した。そこには、崩れかけた家々や錆びついた工場の建物が立ち並んでいる。空気は重く、何もかもが静まり返っている。
龍造寺は深呼吸をして、慎重に足を踏み入れた。すると、突然、目の前に現れたのは一人の男だった。顔は見えず、目深に帽子をかぶり、全身黒い服で覆われている。その男が一歩踏み出すたびに、周囲の空気が張り詰め、異様な緊張感が漂った。
「ここが最終ステージか…」
龍造寺は男に向かって歩み寄ると、低い声で言った。
「お前がこの村を守っているのか?」
男はゆっくりと首を振り、無言で手を振った。すると、周囲の暗闇から、さらに数人の影が現れた。それぞれが不気味に笑っている。
「俺たちが守るべきものは、この村そのものだ。お前の力がどれほどでも、ここを越えることは許さない」
その言葉と共に、周囲の空気が一層冷たく感じられた。男たちは戦闘態勢に入ると、一斉に龍造寺に向かって突進してきた。
龍造寺は瞬時に構え、最初の攻撃を受け止めた。相手は数人いるが、どうやら一人一人が強力な能力を持っているようだ。最初の一撃をかわし、龍造寺は反撃を開始した。
「雷撃蹴り!」
その新しく得た技を使い、強力な蹴りを男の胸に叩き込む。男は吹き飛び、背後の壁に激しくぶつかる。しかし、その一瞬の隙に他の男たちが一斉に襲いかかってきた。龍造寺は次々と攻撃を受けるが、力強く反撃しながら、その中でも冷静に戦う。
「鋼のナイフ!」
龍造寺は、鋼のナイフを取り出し、相手の隙間を突く。だが、何度斬りつけても、その男たちは一度も倒れることなく、むしろその攻撃が無効化されているように感じる。
「やっぱりただの人間じゃないな…」
龍造寺はその事実に気づき始める。そして、ふと視界の隅に、もっと大きな影が動くのを見逃さなかった。
「他にもいるのか?」
その時、突然、男たちの背後から、暗闇の中から何かがゆっくりと現れてきた。それは、まるで物理的な存在がなく、ただの影のように見える――。
「…闇の波動」
龍造寺はすぐにその新しい魔法を使って、周囲に広がる闇の力に対抗しようとした。彼の手から放たれた波動が、闇の影を押し戻す。しかし、それと同時に、闇の影が急激に形を変え、強力な怪物のような姿を現した。
「これは…ただのゲームじゃないのか?」
龍造寺は戦いながらも、次第にこのゲームの恐ろしさと、それが現実世界とどこまで繋がっているのかを考え始める。彼は闇の力に立ち向かうため、あらゆる技を駆使してその怪物に立ち向かうが、次第に疲れが見え始めていた。
その時、突然、画面にメッセージが表示される。
「ゲーム終了――次のステージへ進むには、真の力を試す必要があります。選択してください」
龍造寺は画面を見つめながら、選択肢が表示されたことに驚く。そこには、次のステージに進むための「試練」が用意されていた。そして、画面上の文字はこう続いていた。
「試練を超える者は、ゲームの秘密を知ることができる」
龍造寺の心は、ますます深い迷宮に迷い込んでいく。このゲームが単なるエンターテイメントではなく、何かもっと恐ろしい力に関係していることを、彼はすでに確信し始めていた。
「秘密か…」
龍造寺はスマートフォンを握りしめ、次の試練へと進む決意を固めた。
高橋が裏社会を離れ、静かな生活を選んだ後も、彼の運命は決して穏やかなものではなかった。駒を手にしたという事実が、彼の過去を消し去ることはなかった。高橋が集めたすべての「平安大将棋の駒」は、裏社会の中での地位や支配を意味していた。それを持ち帰ったことで、彼の存在は依然として裏社会にとっては大きな脅威だった。
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警察の追跡
高橋が逃げた後、裏社会の力はすぐに反応した。まず、その背後に隠れた組織が彼を追い詰め始めた。裏社会の「影の勢力」が彼を手に入れるために動き始め、さらに警察もその動きを察知し、追跡を開始した。高橋が持っていた駒が、ただの犯罪の証拠以上の価値を持っていることに気づいた警察は、彼を「重要人物」として監視し始めた。
高橋は何度も見えない敵に追われることになった。日々の生活が次第に不安と恐怖に包まれ、家の外に一歩出るたびに振り返る癖がついていった。街の隅々で、どこからか自分を見られている気配を感じ取ることが増え、かつての冷徹さや計画性を取り戻そうとしたが、それが逆に自分を追い詰めることになる。
警察は、彼が関与した詐欺事件や、裏社会との繋がりを掴み始めていた。そして、駒が何を意味するのか、どれほどの影響力を持っているのかを調査し、やがてその存在が警察の捜査の中心となった。
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裏社会の再接近
高橋が逃げた先で出会ったのは、かつての仲間や旧知の顔だった。彼らは高橋を見逃すことなく、再び彼に近づいてきた。特に、猛虎や横行の駒を手に入れたことが、裏社会内で大きな波紋を呼び、彼の決断を待ち受ける者たちが多くいた。裏社会の中には、高橋を支配者として迎え入れようとする勢力もあれば、彼を裏切り者として排除しようとする勢力もあった。
猛虎駒や横行駒が象徴する「力」を持つ者として、高橋は再びその世界に引き寄せられ、どんどん深い闇の中に足を踏み入れていった。しかし、彼はすでにその世界をよく知っていた。駒を集めることが「勝利」ではないと理解していたが、裏社会における支配と生き残りを図るためには、その力を使わざるを得ないという現実に直面していた。
猛虎と横行は、すでに高橋に接近していた。彼らはそれぞれ、力による支配と計略による支配を象徴する存在であり、どちらも高橋に再びその力を使うことを望んでいた。
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警察の動きと新たな脅威
警察は高橋を追う手を緩めなかった。捜査は着実に進み、駒の存在が裏社会の支配に関わる重要なカギであることが次第に明らかになっていった。その中で、警察は高橋が一度集めた駒をそのままにし、再び裏社会の中に戻ることなく生きていけると考えた。しかし、裏社会の力は決してそれを許さなかった。
一方、警察も独自に調査を進め、高橋が裏社会と繋がりを持っていた事実を掴んでいった。その中で、過去に彼が関与した犯罪の証拠が次々と明るみに出てきた。高橋が関わった詐欺事件や、裏社会の名だたる組織との関係が明らかになる中、警察は彼を最重要人物として追い詰めていった。
警察の捜査は次第に高橋の身近な人物にまで及び、その影響力を強めていった。高橋は、家族や友人にも危険が及んでいることを痛感し、彼らを守るために再び逃げる決断をすることになった。
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選択を迫られる時
高橋の前に立ちはだかるのは、猛虎と横行という二人の強大な存在と、冷徹な警察の捜査網であった。彼が選ぶべき道は、もはや限られていた。
1. 裏社会に戻る
高橋は再び猛虎と横行の力を借りて、裏社会に戻り、支配者として君臨する道を選ぶことができた。しかし、そこには命をかけた戦いと裏切りが待っており、警察や他の勢力との決定的な対決が避けられない。
2. 過去を完全に捨てる
彼がすべてを捨て、警察に自首する選択もあった。しかし、その先に待つのは刑務所の中での人生であり、彼が本当に過去を清算できるのかは疑問だった。
3. 新たな道を切り開く
高橋は、警察や裏社会の力に背を向け、自ら新しい人生を切り開く道を選ぶこともできた。そのためには、全ての駒を捨て、過去の自分を完全に清算する覚悟が必要だった。だが、その道が果たしてどれほど困難であるか、彼には予測がつかなかった。
どの選択肢を選ぶかが、高橋の運命を決めることになる。彼の心の中で、迷いと葛藤は依然として消えることなく、次の一歩を踏み出すことができるのか、もしくはそのまま裏社会の渦に巻き込まれるのか、それは誰にもわからなかった。
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続く
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