第20話 貧しいながらも添え遂げて

 小春日和の役宅で二人は縁側に居た。

「穏やかで良いなぁ」

 兵庫の髪もだいぶ白髪が増えていた。

「爺やたちもどこかで暮らしているのね」

 美乃はそう自分に言い聞かせるように言った。

「ところで師匠はどうしてるかな。何時の頃からか手紙を出しても返事を呉れ無くなったが…。江戸も火事や雷が多いから、息災で仲良く暮らして居ると良いが」

 美乃は兵庫が何気なく口にした筈の言葉にどきりとした。

まさかあの事故を知ったのではないかと思ったが、兵庫は美乃の顔を見てにっこり笑うと、皿に残っていた干し芋を半分に千切って渡すと、手元の半分を頬張るのだった。

                  完

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百萬石の貧乏侍 夢乃みつる @noboru0805

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