君にも出来る! 簡単シュレディンガー実験。その行く末は……?

 すごく楽しいSFを読んでしまった。
 まずはそう表現したくなる、ポップでダイナミックな魅力のある作品でした。
 
 ぴりか、亜鳥衣、瑠流の三人は放課後の時間に「シュレディンガーの猫」の実験について話し始める。
 有名な逸話として、シュレディンガーの猫というのは、「生きている状態と死んでいる状態が共に存在する」ということになっています。
 それが具体的にどういうものなのか、三人であれこれ可能性を話し始めたことから物語は始まります。

 「観測さえしていなければ、量子力学的に二つの可能性が存在するのか?」
 「猫が箱に入っていなくても、猫の皮の下がロボットかもしれないと考えれば、皮が箱の代わりになるのではないか?」
 「シュレディンガーの飼っている猫は、どんな猫でもシュレディンガーの猫になってしまうのか?」

 あれこれと仮説が登場し、「なるほど!」と思わされるものや、「まさか」と苦笑させられるものなど、様々な可能性が検証されていきます。

 ―――そして三人は決心し、実験を開始する。

 その先の展開は、とにかく「すごい」の一言でした。
 「すこしふしぎ」のような雰囲気を持ち、少女たちのポップな会話によって進んでいく本作。その先では「少し」どころじゃない大きな不思議への扉が開きます。

 まずタイトルが面白すぎます。この段階で絶対に面白い作品だろうと確信を持って読み始めました。
 SF的な展開や設定だけでなく、会話を読んでいるだけでひたすら楽しい。とても充実した読書体験の得られる一作です。