第3話 冒険者の様子がおかしい
朝はいつも慌ただしい。しかし、今日は特別な騒動が巻き起こっていた。
「裏切ったなぁぁぁぁぁぁ!」
カウンターの向こうから響く怒声に、店内の全員が一瞬静まり返った。マルディグラ・クリスティーンは驚いて振り返ると、工藤太一が険しい表情で立っていた。
「どうしたんですか?」
「マルディグラ・クリスティーン……。お前中身は?」
「乙女です。」
「男だろ。」
「ありのままの私を受け入れてください。」
「俺はどう接すればいいんだよ。」
「ダイバーシティです。」
「お前意味分かっていってんのか?」
その時、魔王君が出勤してきた。彼の登場はいつも通りの賑やかさを伴っていた。
「こんちはーす。お、ナイスバディなじょ」
「……。」
「いやぁぁぁあぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「どうした魔王くん!?」
「こ、こいつは、チート冒険者。何度もリスタートして、パーティー全員で吾輩をフルボッコしてきたやつですよ。」
「魔王くんの知り合いなのか?」
「なんどもコンティニューしてきて。女勇者と一緒になって最速クリアしてきた化け物。コイツは不採用で!」
魔王君は指をさして叫んだ。
「私も同。」
「リスター」
「もうそのくだりいいから!」
「もうあきらめて下さい。魔王くん。」
「すみません。急用思い出したので早退します。」
「おい!待て!君に教育係を……。行っちゃたよ。」
「行っちゃいましたね。」
(魔王くんの天敵は勇者ではなく、冒険者だったらしい。)
「それじゃ、おれも体調すぐれないから臨時休業しようか。」
「あ、じゃ、代わりの人呼ばなきゃですね。……もしもし~ユウカたん?」
「は?え?女勇者と友達?」
「マスター体調悪いからシフト穴できたんだよね。」
「そ。ほんとつかえないよね。」
「なんで私たちが残業しなくちゃいけないの。マジで。」
「パントリー裏での愚痴やめろ。聞こえてんぞ。」
「あ、店長きたから切るね。待ってるから。」
「いや、最初からいたから。めっちゃ私のこと見ながら言ってたよね?」
「ユウカたんが来てくれるみたいです。めっちゃ不機嫌なんで顔合わせないほうがいいですよ?」
(脅迫と強迫、マスコット付……。)
「俺の店をつぶす気か?」
「任せてください。」
「なんで仕事もしらない奴がそんな自信満々なの。キャリアあるだけで扱いにくいお局様かよ!」
「おはようございます。ミウラ出勤しましたー。」
「来るのはっや!東京駅から品川駅の距離感だ!」
ツッコミの次の瞬間、マルディグラに私は壁に突き飛ばされた。
「おはよー!待ってたよー。ユウカたん。」
「おはよー。……マスターもう帰っていいですよ?」
「帰りません。」
「……カエレヨ。」
「小さい声で言っても聞こえてんぞ。」
「今日から一緒に働けるね!」
「そうだね。マルディ。」
「おいおい、なにこのゆりゆりしい雰囲気。」
「それじゃー、ユウカたん仕事教えてー!」
「いいよ。こっちきて。仕込みからね。」
「うん。」
「おい。後ろのつき方と視線がいやらしいぞ。」
「まだいんのかよ。」
「いるよ!俺の店だぞ。」
そして、新人教育が始まろうとしている。
ユウカは深呼吸して、エプロンの紐を締め直した。
コーヒーマシンを指さしながら、説明を始める。
「まずは基本からね。こちらがエスプレッソマシン。このレバーを引いて、豆を挽いて、ここにセットするの。次に、このボタンを押して抽出を開始するわ。見ててね。」
マルディクラは手際よくエスプレッソを作りながら、ユウカに操作方法を見せる。ユウカは真剣な表情でその手元を見つめていた。
「分かりました。でも、ちょっと緊張します。」
「大丈夫よ、ユウカ。最初は誰でも緊張するものだから。次はカプチーノを作るわね。ミルクのスチームも大事なポイントよ。」
「あ……。手が。」
「大丈夫。ゆっくりで。」
「私、はじめてだから。」
マルディクラはミルクピッチャーにミルクを入れ、スチームワンドで泡立て始める。その音と香りがカフェ全体に広がる。
「このように、ミルクを泡立ててからエスプレッソに注ぎます。見て、ミルクの滑らかさがポイントよ。」
「すごい。フワフワ。白い液体が。」
ユウカはマルディクラの動きをじっと見つめながら、自分でも試してみる決意を固めた。
「やってみてもいい?」
「もちろんよ。試してみて。」
「イタ!」
「大丈夫?」
「大丈夫です。」
「ゆっくり動かして。」
「うん。」
ユウカはエスプレッソマシンの前に立ち、マルディクラの指導のもと、慎重に操作を始めた。初めての試みながらも、ユウカは少しずつ自信を持ち始めた。
「うん、いい感じね!次は接客よ。お客さんにどう接するかがとても大事なの。」
カフェの入り口のベルが鳴り、お客さんが入ってきた。ユウカは一瞬戸惑ったが、マルディクラの笑顔を見て勇気を出した。
「いらっしゃいませ。ご注文をどうぞ。」
お客さんは優しい笑顔で注文を伝え、ユウカはその注文をしっかりと受け取った。マルディクラはその様子を満足そうに見守っていた。
「マルディ、初日とは思えないくらい上手だったよ。」
「ありがとう。ユウカたんの教え方がうまかったんだよ。」
マルディクラとユウカは笑顔を交わし合い、カフェの忙しい一日が始まった。ユウカの心には、マルディクラの指導と共に、新しい挑戦への意欲が宿っていた。
「あのさ。店で処女作みたいな感じださないでくんない?」
そして、来客のようだ。
チャランチャラン。
そこには、今度こそまともそうなお客様が現れた。
※今からPVが流れます
彼女の名前はアリス・ヴァレンタイン。長い銀髪が風に揺れ、透き通るような青い瞳が知識と好奇心に満ちている。彼女はただの美少女ではない。彼女は探偵学者として、数々の難事件を解決してきた天才だ。
アリスはいつも白衣を纏い、その下には可愛らしいフリルのついたドレスを着ている。白衣のポケットには、ルーペやメモ帳、ペンなどの探偵道具が詰まっている。彼女の姿は、まるでおとぎ話の中から飛び出してきたかのようだ。
彼女の研究室は、古い洋館の一室にあり、壁一面に本棚が並んでいる。そこには、古今東西の書物や、彼女が解決した事件の資料がぎっしりと詰まっている。机の上には、顕微鏡や試験管、そして彼女が愛用するティーカップが置かれている。
アリスはいつも冷静沈着で、どんなに複雑な事件でも、その美しい顔に焦りの色は見せない。彼女の頭脳はまるでコンピューターのように正確で、どんな小さな手がかりも見逃さない。
「この謎を解く鍵は、ここにあるわ。」
彼女はルーペを手に取り、微細な証拠をじっくりと観察する。その姿はまるで、宝石を見つめる宝石商のように真剣だ。
彼女の助手であるジョンは、いつも彼女のそばでその天才的な推理を見守っている。ジョンはアリスの美しさと知性に魅了され、彼女の指示に従いながら事件の解決に協力している。
「アリスさん、これを見てください。」
ジョンが差し出した資料を受け取り、アリスは微笑む。その笑顔は、まるで春の陽だまりのように温かい。
「ありがとう、ジョン。これで全てのピースが揃ったわ。」
アリスは立ち上がり、決然とした表情で事件の現場へと向かう。その背中には、探偵学者としての誇りと、自分の知識を駆使して真実を追求する強い意志が感じられる。
「これギャグ小説だから!ジョンだれ!?アリスって何!?」
工藤は謎のPVに向かって抗議した。
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あとがき
次回『謎解きのアリス』
起業して求人かけたら全員様子がおかしい異世界ギャグ転生 新米 @mad982sousen
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