第3話 拗れた性癖

『それはそうと、僕の衣類を勝手に持って行った窃盗罪の罰を与えないとね』

『やらぁ、許しれぇ……』

画面の向こう側で2人はおっぱじめてる。


なんだかんだ言いつつ、こうやって俺の要望に応えてくれる悠斗には感謝だ。

で、なんでこんな要望を出したかと言うと、俺の性癖だからだ。


『悪いのはこの手かな?こっちかな?』

『ろっちもぉ』

キスをしながら佐藤の手を弄ぶ悠斗。

性癖語りをするとだ。俺はAVなんかを見ても何も満たされず、ただ義務的に出すだけで性欲を発散させていた。

財閥の御曹司なせいで女を抱くっていう手段も安易に取れない。もし抱いた事を迫られ、鬱陶しく思って闇に葬ろうとした時、後に財閥の信頼に関わる事案になる。

そうなれば財閥は俺を放逐し、弄ばれた女に復讐されるのは目に見えてる。だから義務的に出すだけ、だった。




それが変わった時が来た。

高校生の夏休みのある日、俺はアポも取らずに悠斗の家に押しかけに行った時だ。

音を鳴らしても反応はなく、玄関も開いてる。何があった?っと警戒しながら俺は音を立てずに無断で入った。

そしたら二階の悠斗の部屋から嬌声が聞こえてきた。音を立てずに階段を上がり、恐る恐る悠斗の部屋を覗いてみれば、佐藤と悠斗が交わり合ってる所を目撃した。

「悠斗、悠斗、好き、好き、好き」

「遥、遥、好き、好き、好き」


お互いに想いを伝え合いながらキスをしている。

佐藤の誰にでも向ける外向けの笑顔が、悠斗にだけ見せる雌の顔に変わっており、夏場でも長袖で過ごしたりカーディガンを着たり膝下までスカートをして肌を隠していたのを、今はだらしなく着崩れし、オープンさせている。

男が思う理想的なスレンダーなのに、胸は手のひらに丁度収まるサイズの大きさと、まさに男の理想を体現した姿をし、濡れ羽色のストレートなロングヘアーが、この暑い夏で情事によってかいた汗で佐藤の肌に張り付いて離れない。

何より汗が、唾液が、佐藤と悠斗、互いに交換し合ってるように見えるその様が、俺には凄くエロく見えた。

AVやエロゲ―では決して味わえないエロさ、尊さがここにあると、やっと見つけたと俺は酷く興奮した。


だが邪魔しちゃ悪いと俺は音を立てずに撤退した。正直、最後まで見たかったけども、ばれたら怖いなって思った。何だかんだで不法侵入してる訳だし。


が、問題が起きた。エロゲやAVを見ても興奮すらできなくなった。

どれだけ高クオリティのを見ても、本物の純愛を見たせいでどれもこれもチープに見え、冷めた目で見る様になってしまい低評価爆撃をしてしまう程になってしまった。


困った俺は二人の情事を見るのが一種の楽しみになった。

まあそれも覗いてたのがバレて悠斗に大目玉をくらったが。

だからこそ、悠斗と佐藤はこの要望に応えてくれてたりする。もう見られてるの知ってるから。


それはそれとして

ちょっとやさぐれた名残として金髪に、自慢じゃないが筋骨隆々とした姿してるからな俺。周りの調子乗りに言われた事がある。

お前、坂本悠斗さかもとゆうとから佐藤を奪えるんじゃね?って。イラっとさせる事を言ってくれるな。

悠斗から佐藤を奪う?それは絶対無い。

だって悠斗は唯一、友人と、親友と言える存在だ。それを自ら捨てて財閥から消されるくらいなら、適当な女を抱いた方がマシだ。


『悠斗、悠斗、好き、大好き、愛してる』

『遥、遥、好き、大好き、愛してる』


そんな事を思い出しながら、画面越しの二人の情事を俺は眺める。

あの頃からを思うと好きから愛してるに変わってるのとても尊い。

こんなの大金積んだって見れねぇぜ?というか大金積んだら欲に目が眩んだ行為に変わって面白くないのが、そこらの夫婦に試しにやってみて分かった。

だから金無しで見れるこれがとても尊い


あ~脳が快復する音~



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