第7話 今度は一緒に

気が付けば夜になっている事に気づいた。

「そういえば遥。なんで和真と仲がそんなに良くないのさ」

「えー・・・一つには悠斗に勘違いされたくないからってのはあります」

少し低い声を出してジト目になりながら遥は語る。

それは分かるけど、小学生からの付き合いなんだから多少は信用してもいいと思うんだけど?僕は和真を信用してるし。

和真の性癖からして僕に内緒で遥に何かする感じが無いと思ってる。情事を覗かれてた事には怒ったけども。


「でも、その、それ以上に・・・」

「それ以上に?」

「・・・鈴木君と悠斗の仲が良過ぎて疎外感を味わう時があるからです」

あの泥棒猫と呟きながら遥はそっぽを向いた。

・・・つまり何か?嫉妬してたのか?僕と和真は男同士なのに?


え、遥。めっちゃ可愛いんだけど。思わず遥を抱きしめた。

「やだ凄く可愛い」

「きゃ!あ・・・まだ固くなれるんだ」

「あっははは・・・どうやら僕も相当寂しかったみたいだよ」

今まで離れてて出来なかった分を解消するかのようにお互い治まらない様子だった。が、流石にこれ以上は水分補給とかご飯とかにしないと倒れそうだから一度休憩を挿み、それから晩ご飯を作りにかかった。


和真から僕宛に遥のトラウマになったであろう原因が綴られたメッセージが送られてきた。


中学では校内では離ればなれにされた事と、高校での嫌がらせの日々、そしてあの合成写真がトドメになったと推測するといった内容だった。

・・・あの合成写真。遥を信じ切れなかったら、僕と遥の関係性、今頃どうなってたのやら。・・・あの男の語った通りになったのかな。けど、それはたらればだ。信じ切った事で今の関係性があるんだから。それはそれとして、あの男は転校したんだよな。居られる訳ないとは思うが。


「あの男、どうなったんだろう」

「あの男?」

ふと思い出してぽつりと呟いた僕に、遥が反応した。

あー・・・内容的にあまり語りたくないが、反応された以上、話すしかないか。

「ほら、あの合成写真をばらまいた男。転校していったけどさ」

「あぁ、アイツ・・・知らない方が良いと思いますよ」

「え?なんで?」

「悠斗には言わなかったけど鈴木君、何かの拍子にあの男に殺意を向けていたので」

あの時の鈴木君は風貌も相まって本当に怖かったなーと遥は思い出すように呟いてる。

僕が気が付かなったってことは、和真は僕の前では隠してたのか。遥は気づいてたけど黙ってた・・・いや、遥は遥で思う所があったから黙ってたのかな。アイツが自棄を起こして語った内容がドン引きものだった。もし思惑通りになってたら僕と遥の関係が壊れて、遥はアイツに壊されてた訳だし。


それはそれとして、親友だけど御曹司でもある和真から向けられる殺意・・・考えたくないな。文字通りなんでもできるぞ和真だと。人脈、お金、様々な問題をクリアできるから余計にそう思う。下手すれば消せるんじゃないか?

「悠斗、私の我儘で振り回してごめんなさい」

「え?」

「私は私で悠斗の生活を滅茶苦茶にするわけですので・・・」

急遽転校させられるんだったな僕。和真というか鈴木財閥の力によって。和真をそういう風に見たくないけど今回は使わせてもらうか。今回限りにしたいとは思うけども。


「今回限りにしよう。そしてお礼として和真に使わせたお金にちょっと上乗せさせて、一緒に返そう?」

「・・・そうね。そうしましょうか」

「あと、あの男を対処してくれたお礼。菓子折りでも持って向こうに行こっか」

「うん。駅前のお土産買って戻りましょ?」

「それがいいね」

唐突に明日、実家を離れる事になるが、それでも出来る限りの決め事をして、荷物を纏めた。家具や寝具は向こうで買うかどうかにしよう。

・・・綺麗にしたと思うけど、親に僕の部屋の状態を任せるのか。ちょっと恥ずかしいな。

「ふふ」

「どうしたの?」

「一緒に暮らせるんだって思ったら嬉しく思いまして」

「そうだね。今度は僕も一緒に行くよ」

同棲生活。遥となら上手くやれるさ。笑顔で和真と合流しよう。


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