第8話 移動
「準備出来ましたか?」
「バッチリ。行こうか」
「はい」
お互い忘れ物が無いか確認をして、僕は実家を出る。親には急すぎる出来事に驚かれたが、理由が彼女である遥の頼みである事と親友である和真の鈴木財閥の力と分かって納得して、元気に暮らすんだよと送り出された。
「うーん、改めて見ても新幹線って高いですよね」
「そりゃね。仕送りで頑張ってた遥には高い金額だよね」
「うん。ですので鈴木君に頼ったんですけども・・・」
遥は二人分の新幹線の切符を購入しながら、眉を顰めてそうぼやいている。
美術を勉強しようと頑張る為にはバイトが思う様に出来ないと判断した遥は、親からの仕送りと日々の節約でどうにかしていたから、そう感じるのだと思う。
こっちに来る際は自由席で来たらしいが、二人いる今、遥は指定席で二人一緒に座れる所を選んだ。指定席代がかかるんではと思ったが、和真はどうやら指定席込みで渡してた様子だった。
「和真が新幹線の往復代を出してくれた事には感謝だね」
「その対価が悠斗との情事を見せろって要求も中々だと思いますけど・・・」
「それは・・・そうだね・・・」
恋人との情事を見せろって有って無いような取引だとは思う。
が、和真曰く、お金無しで見せろと言ってもセクハラと訴えられるだろうし、大金を見せると目の色が変わって愛じゃなくてお金目的の面白くない物に変わるから、お金があまり絡まない僕たちの情事が最適解になるそうだ。
ちなみに露出が好きな恋人関係にも振ってみたらしいが、バレるかもしれないっていう状況が興奮できるんであって、既にバレてる状態だと興奮できないと断られてるらしい。
・・・なんか僕たちが変態みたいじゃないか。
「そういえば遥は和真からの対価の要求、事前に聞いてたりするの?」
「一応。悠斗に会いたいのなら、会った先で事に及ぶことって」
「・・・和真の奴、なんで性癖があんなに捻じ曲がったんだろうか」
「さぁ・・・」
そんな事を話題にしながら、通話してる時と同じように色々話題を変えて会話に花を咲かせる。
ただ新幹線はその移動距離の関係上、座っている時間が長い。時には疲れてもたれ掛かって仮眠したり、駅前で売っていたお弁当を食べたりして時間を潰したり。
ただ、色々してる内に降りる駅に着いた。
降りて改札口から出た先に、僕らが来たのを確認した和真が笑顔を見せてこちらに向かってきた。
「ようお二人さん!長旅ご苦労さん!」
「和真、色々ありがとう」
「良いって事よ!」
と、和真は肩を組んできたので僕も応えた。が、遥はそれが面白くないらしく、強引に引き剥がして僕に抱き着く。今まで無かった気がするけど、嫉妬してる事を伝えたからか、行動に出るようになったのかな?可愛い
「私の恋人を盗らないでください」
「わりぃわりぃ」
和真はけらけら笑いながら、僕らを歓迎した。
和真は歓迎会の用意までしていたみたいだ。何もそこまでしなくてもいいのに。
「改めて二人の新しい生活に、カンパーイ!」
「「カンパーイ!」」
でも折角の歓迎会なんだ。テンションを上げて行こう。
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