「エッセイを書きましょう2024」ロンズ賞 発表・講評

肥前ロンズ@仮ラベルのためX留守

「エッセイを書きましょう2024」ロンズ賞 発表

 講評の前に、まず皆様に前提として知っていただきたいことがあります。

 それは私が「文章は決して上手くない」人間であるということ。

 高校時代、小説部門で最優秀賞と文部科学大臣賞をいただいた時、審査員の第一声が「決して文章は上手くはないが」だったので間違いありません。しかもほかの審査員からも念押して言われました。なんなら、第一声でディスられた小説部門の受賞者は私だけでした。

 あれから‪モニョモニョ‬年経った現在、少しは文章が上手になったのか、それとも退化してしまったのか。

 確かに言えることは、肥前ロンズは「文章の巧みさ」ではなく、「エッセイ・ノンフィクション賞が欲しいテーマ(ペットロス/ペットとの絆)にばっちし当てはまった」という所が大いにあるでしょう。

 こんなやつが犀川よう様主催のさいかわ賞に参加していいのか。私は性格が図太いので、お声をかけていただいた瞬間に「ぜひ!」と元気よく答えました。今になって申し訳ないという気持ちがちょっとあります。


 今回のロンズ賞では、こんなコメントを書いていました。


『日常はそうドラマチックなことが起きるわけじゃない。けれど、いつかは始まりがあって終わる時がある。映画のようなワンシーンがある。そんな瞬間をお待ちしてます』


 そんなわけで、ロンズ賞は「映画のようなワンシーン」をテーマにして選びました。

 どれも大変楽しかったです。特に肥前ロンズは笑える話とためになる話、世の中に訴えたい話が大好きです。ですが私は八割九割テーマで選ばれた受賞者。そこをふまえて選びました。




 

ロンズ賞

縦縞ヨリ様『もいちゃんのクリームソーダ』

https://kakuyomu.jp/works/16818093085529359609


まず肥前ロンズは、「冒頭がセリフで始まる短編」が大好きです。それが作品のタイトルを表すセリフなら、尚更好きです。

このエッセイの素晴らしいところは、冒頭に「5W」が大体あるところです。


「When 祝日の月曜日」「Where 昔ながらの喫茶店で」「Who もいちゃんと私で」「What クリームソーダを」飲む。


特に「昔ながらの喫茶店」という舞台と、「クリームソーダ」という小道具に、物語性を強く感じました。

文章だけでなく名詞にも、そこから受け取る「物語性」というのがあると思います。それは読んできた創作物のイメージであったり、読者自身が持つ想い出であったり。

さらに作者様の緻密な描写が、読者が持つイメージを裏付けていきます。全く知らないものを文章から想像するのは難しいですが、頭の中でおおよそのイメージがあれば映像化しやすいです。

私の場合、

『暗い飴色の内装に、ぼんやりと白く輝く大きな窓。そして、歴史のありそうなインテリア』

と、大きいものから小さいものを描写することが多いのですが、このエッセイでは作者様が見たものを順に描かれることで、より臨場感を与えています。私も作者さまと一緒に移動しているみたいで、ワクワクしました。


そして一番肝心の「Why」が、後になって分かって行きます。

このエッセイにおいて特に重要な部分であり、そしてその「Why」を知ると、先に出てきた「Who」「What」が掘り下げられ、より鮮明に見えていきます。小説でも中盤~終盤で謎が明かされるので、とてもワクワクする書き方だと思います。


そして最後に、地の文で締めくくるのではなく、会話で終わらせる。

このエッセイは、「会話」だけではなく、店内の賑やかさ、食べ物の咀嚼音、ソーダのシュワシュワ……そんな音が、リアルで聞こえてくるようでした。撮影が終わっただけで「もいちゃんと私」の物語が終わったわけじゃない。このエッセイの後も続いているんだろうなと思わせる余韻でした。


よってロンズ賞をこの作品に贈呈したいと思います。

縦縞ヨリさま、素晴らしいエッセイをありがとうございました! ご飯めっちゃ美味しそうで腹へリングです!!


******


このエッセイの他にも、ロンズ賞にしたい作品があったのでご紹介します。


口一 二三四様『秋に鳴らす鍵盤』

https://kakuyomu.jp/works/16818093085947221757

自主企画の作品で最初に読んだエッセイであり、「もう他作品読まないでこれ選べばいいんじゃない?」とかなり本気で思った作品です。

ではなぜ『もいちゃんのクリームソーダ』を選んだかと言うと、「登場人物が移動していたから」というのがあります。この作品はほとんど場所を移動していないという点で、「映画っぽさだと移動している方がいいかなあ」となりました。

しかし読めば読むほど好きになる。知らないものを、知っているものと重ねて学習する。何より、「おばあちゃん家」というのは、それだけで子どもにとっては「異世界ファンタジー」。かつてのワクワク感を思い出しました。本当に好きなエッセイです。


@zawa-ryu様『眼鏡デビューはちょっとアブナイお薬で』

https://kakuyomu.jp/works/16818093085571483628

ただの肥前ロンズであればこちらを選んでいた。

しかし悲しきかな、カクヨムコンにおいてコメディは肩身が狭いのであります。賞で選ばれるのはどっしり・しんみりとした、静かな作品が多いのです。ですがコメディが通らなかったわけではありません。くれは様の『高校生女子、異世界で油圧ショベルになっていた。』があります。

とにかく運営さん、コメディジャンルを作っていただけないでしょうか。私たちはコメディの市民権を訴えます。


 さて最後に。今回なぜ「映画のワンシーン」にこだわったかと言いますと。

「受賞」でなくても、メディアミックス化しやすそうなものであれば拾ってもらえるかもしれないからです。


 たくさん楽しませていただきました。

 皆様、応募ありがとうございました!

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