第6話 いつもの日常
スマホのアラームが鳴って目を覚ます。時刻を見れば朝の5時半、何時も通り。
寝ぼけ眼でベッドから出て、今日は燃えるゴミの日だから家のゴミ出しをする。
シャワーを浴びてからスマホで天気予報を見れば、今日の天気は100%晴れ。籠に入れてあった洗濯物を洗濯機に放り込んでから、散歩に出かけた。
このルーチンワークは、散歩が好きだった爺さんが徘徊老人と化して行方不明になったら困ると言う事で、爺さんに付き合った俺の日課だった。
爺さんが死んだから止めても良かったが、何年も付き合った結果、俺も散歩が趣味になった。健康にも良いしね。
近くの河川敷まで歩き、大体1時間半ぐらいで家に帰る。
その頃には姉も起きて、俺と自分の弁当を作り終えていた。
「ただいま」
「おかえり」
登校の準備に忙しい姉が慌ただしく返答する。
姉は偏差値の高い公立高校に通っている。寝起きが悪いのに家から少し離れた場所に学校があるので毎朝忙しい。
俺も偏差値そこそこの家から近い公立高校に通っている。自転車で10分、歩けば20分ぐらいの場所にあるのでのんびり登校。
しかも、リベラルな学校なので学生服がなく、私服で通えるのが楽ちん。校則もそれほど厳しくなく、俺は利用していないが学食も美味しい。
まだ高校に通い始めて2カ月ちょいだけど、結構気に入っている。
なお、姉は中学校の教師が強引に今の高校を勧められて入ったので、俺の自由な高校生活を知って、そっちに行けばよかったと悔しがっている。
姉が家を出た後、洗濯物を干し、洗い物をしてから俺も家を出る。
自転車に乗って登校中、ケン〇ッキーの前を通り過ぎた。まだ開店前だから分からないが、カーネル〇ンダースの人形は見当たらなかった。
もしかしたら、盗難予防に店内にあるかもしれないが、おそらく昨日の夜は突然人形が消えたと大騒ぎになっただろう。
一応説明書を読んで出来ない事は知っていたが、アポートを念じて人形を取り寄せようと試みる。
残念、やっぱりゲームボードから25m離れると超能力が使えず、人形は現れなかった。
スマン、俺がアポート能力を本当に取得するまで待ってくれ。
高校に着いて教室に入る。
鞄から教科書とタブレットを出していると、友達の『友野 真』が話し掛けてきた。
「道祖、聞いたか? 昨日、お前んちの近くのケン〇ッキーでカーネルサンダースが消えたらしいぜ」
おい、やめろ! 今その話題を出すんじゃねえ!
「盗まれたのか?」
もちろん消えた理由を知っているが、犯人が俺なので当然ごまかす。
「いや、突然消えたらしい。通行人が突然消えたのを目撃したってよ」
「道頓堀に捨てた阪神ファンの呪いなみの怪奇現象だな」
「なんだそれ?」
「ググって調べろ」
「まあいいや、俺、バッファローズファンだし」
「嘘つけ。お前は野球に興味のない、ただのメルちゃんファンだろ。偽ファンめ」
メルちゃんとは、バッファローズのマスコットキャラのバッファローベルの事。
「メルちゃん可愛くて良いじゃん! お前もファンになれよ」
「全身ピンクは性格が重そうだからちょっと無理」
何とか話題を逸らしたところで、教室のドアが開いて教師が入ってきた。友野も自分の席に戻り、今日の授業が始まった。
午前の授業を終えて、昼休憩になった。
クラスの大半が学食を利用しているが、食堂は自由に使えるので俺も弁当を持って食堂に向かう。
何人かの友達と席に座り弁当の蓋を開ければ、ご飯の白と肉の茶色のハーモニー。
弁当は姉が作っているけど、何処の家庭と同じく冷凍食品が大半だ。我が姉は意外にも肉食系女子である。
何度か野菜も少しぐらい入れたらどうかと提案したが、弁当に野菜を入れるのは難しい、文句があるなら自分で作れと睨まれた。
と言う事で、俺はいつも弁当に野菜が少ない時は、学食でサラダだけ購入している。
今日も弁当に野菜が少なかったので、サラダだけを購入して席に戻った。
「道祖、遺産相続は終わたのか?」
飯を食べている最中、友達の一人が話し掛けて来た。
コイツ、俺の財産が目的か? 利益無視のおもちゃ屋に資産などないぞ!
「うんにゃ。一応、少しだけ進展はあったから、今は相続税の為に会計士に全部丸投げしてるよ」
爺さんの遺産は、婆さんが先に死んで子供も父しか居らず、その父も母と共に交通事故で無くなったから、相続権は俺と姉で二分の一づつになる。
ところが、その遺産を狙って、母方の親族が勝手に俺たちの青年後見人になろうとしてきた。
当然、俺たちは断固拒否。今まで何もしてこなかった癖に、爺さんが死んだ途端、面倒みるから遺産を寄越せと言われても、「うるせぇバーカ」としか思えねぇ。まあ、実際にそいつらに向かって言ったけどな。
結局、今まで姉弟だけで爺さんの面倒を見て来たこと、二人で生活出来る事、姉が後1年で18歳になる事、本人の意志を含めて、先任者が後見人不要と判断したので、親族も諦めたのか引きさがった。それが先週までの話。
母方の親族とは疎遠になったけど、奴らの本心が分かったので、俺たち姉弟は逆にスッキリした。
「遺産相続も大変なんだな」
「全くだ。俺も50ぐらいになったら遺言状を残すつもりだよ」
「高校生のする会話じゃねえな」
今なら笑えるけど、役所や年金事務所に健康保険や年金停止の手続きもしなきゃいけなかったし、本当に爺さんが死んでから、俺と姉は本当に忙しかった。
あ、実家の登記相続がまだこれからだったな……。でもあれは遺産分割協議書が出来るまで相続できないから、もう少し後になるのか……ああ、面倒くさい。
午後の授業も終わって、俺は部活に入ってないからとっとと帰宅する。
帰宅途中でケン〇ッキーの前を通ったが、やっぱりカーネル〇ンダースは居なかった。
学校が近い事から、いつも姉より先に家に帰る。洗濯物を畳んで、家の掃除が俺の担当。
洗濯物は綺麗に畳まないと姉がうるさいので、アイロン掛けまできちんとやる。でもさ、弟が下着を洗っても平然としている姉って、デリカシーに欠けると思わないか?
平日の掃除は適当、休日にガチ掃除すれば1週間ぐらいは綺麗なままだ。
夕方になって、帰宅途中で買い物を済ませた姉が帰ってくる。
姉は料理と水回りの掃除が担当なので、制服から私服に着替えた後、風呂の掃除をしてから料理を作り始める。
その間、俺は暇なので、宿題をしたりゲームで遊んだりする。
「ご飯できたよ」
「あいよ」
今日は肉入り野菜炒めらしい。味付けは何時ものカレー味だろう。
野菜炒めにカレーうどんのスープの粉をぶっかけただけの料理なのだが、何故か美味いので俺は気に入っている。
「「いただきます」」
姉と一緒に飯を食う。
これが俺たち姉弟の日常だった。
次の更新予定
デイブレイク・サイキッカーズ ~超能力姉弟の人生ゲーム~ 水野 藍雷 @kanbutsuya
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