第3話

それにしても遠い。

確認したところ、

バスで『伊豆急下田駅』まで

バスを乗り継ぐのが最善だ。

その足取りで照らす日差しの中、

歩みを進める。

それにしても何故こんな場所にいる?

確かに海や山等の自然に触れては居なかった。

しかし、準備をしてから来たいものだ。

この様にスーツ姿の男が伊豆を歩く、

先ほどからやや目線は気になっている。

この上着をどこかに置いていきたいものだが、そうはいかない。

交通機関までこの暑さに耐えるんだ。

滲んだ汗が徐々に衣服に浸透する。

そうだ、こんな場所まで来たからには、

来たなりの観光をしよう。なんて思い、

近くの物産店に顔を出した。

すいませんと声を掛けると

初老の男性が奥から出てくる。

「兄ちゃんどうした、スーツなんか着て」

「いやー、かなり不思議な話なんですけど。

玄関開けたら伊豆で」

男性はくしゃっと笑い、

あんた、最高だよ。と言った。

私は、この暑さに

このスーツは地獄ですよと言った。

「駅まで送ってくか」と男性は

親切な方だった。

「え、いいんですか」おういいよ、

と彼は言った。

「その代わり、1時間ばかし、待っててくれよ」

「いえいえとんでもないです」

「そんじゃ、海でも見てて」

ありがとうございます、これで助かった。

私は言われた通り、彼の指差す

方角の海へ向かう。

しばらく歩いて海が目前に迫る時、

あるものが目に入った。

子供が二人、大人の目を

離したところで遊んでいる。

海には所々人はいるが、それほど多くはない。

心配になり、私はそちらの方へ歩みを進めた。

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海鳴る轍 雛形 絢尊 @kensonhina

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