第2話
「ですから本当に、海に来てしまったんです」
再び情状酌量を求める。
『今野くん、まあ今日は目を瞑るからさ、
しっかりしてよ』
私には何も悪いことはない、しかし
迷惑をかけてしまっている事実は変わらない。
すみません、と私は声を大にして謝る。
『今一体、どこの海にいるの?』
すぐ近くに案内板があることに気がついた。
「少々お待ちを」駆け出して案内板が
見える場所まで急ぐ。
私は声を大にして驚いた。
「静岡です、静岡の、、雲見海岸です」
『静岡?!』
生憎の天気だったので
その全貌は見えなかったが、
案内板に写真が記載されている。
その海の背景には富士山が見える。
「いや、本当にこっちが聞きたいんですよ」
『本当に、東京の自宅から、出勤しようと?』
「そうです、そうです。信じてくださいよ」
『近くに電車は?』
「まだちょっとわからないんですけど、
急いで戻ります」
『今ね、社長からの伝言で、
1日2日、休んできなって』
「いやいやそんな」
確かにここのところ重なった
休みは取れていない。
『社長からのご厚意、受け取りな』
まあ、冷静に考えれば徒歩の行動で
今日のうちに東京に戻れるとは思えない。
私はご厚意に応じて
ありがとうございますと言った。
『じゃあ、とにかく、今日明日、
休んでくるんだよ。そこは実費でね』
と言い放ち、電話が切れた。
さて、どうする。どのようにして帰ればいい?
以前こちらの方に来たことがある。
南伊豆の方だ。
以前は友人の運転で来たため、
それほど苦には思えなかったが、徒歩である。徒歩で伊豆?
近くに駅は?線路はあるのか?
そんなことを考えているうちに
ある疑問に結びついた。
先程から結び付いてはいたが。
何故伊豆なのかということ。
まさか、まさかそんな出来事と
結びつくとは思いもよらなかった。
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