BELLA DONNA luce

フルーツロール

BELLA DONNA luce

――――――――――――――――――――


 薄汚くて、下らねぇ――


 眼下に広がる灰色世界…――


 ――あの光がくすんで見えるのは、煙草の煙と被ったからじゃねぇ……


 〝俺の心が絶望しているから〟だ――


――――――――――――――――――――

――――――――――――

――――――

―――


「“下らねぇ”…――」


 咥えた煙草を口から離して呟くと、男はサッと黒色のカーテンを閉じた。彼自身が“下らない”と呼んだ、その世界から目を背けるように――


 煙草の火を灰皿に押し付けて消すと、男は窓から向き直り、その足を部屋の奥の長ソファーへと向かわせていく…――


 向き直り進むその部屋の中には、キャンバススタンドにセットされた描きかけの画がある。――灰色、モノクロ、色のない虚しい世界を映した画が――


 男はソファーに横になると、革靴を履いたスッと長い脚を組み、そのまま仮眠がてら、昼寝をし始めた…――


 男の名は〝Lucaルカ〟・イタリアマフィア、【BELLA DONNAベラドンナ】のアンダーボスだ。


 ルカの趣味は画を描くことであった。

 そう、キャンバスに立て掛けられた画は、彼自身が描いた“世界の画”である。

 世界には色が溢れているというのに、彼の描く世界には色がない。

 彼の瞳が色彩を認識していない訳ではなかった。彼の絵に色がないのは、彼がこの世界の〝luce〟を見れずにいるからだ――

――――――――

――――


 そうしてどれくらい寝ていただろう。実際“どれくらい”と表現するには大袈裟なくらいだ。昼寝を始めてまだ、小一時間も経ってはいない。


 部屋の外、通路の方から鋭く大きな音が響き、彼は目を覚ます――


「あ? ……」


 飛び起きはしなかった。ソファーに寝転がったまま、ただポカンと口を開けている。


(……――何だ? 騒がしいな。――また手下共が、派手に遊んでいやがるか……――)


 〝手下共が騒いでいやがるか〟と、そう解釈したアンダーボス、ルカは、片腕で目を覆うと、再び目をとじた。だが――


―「Fermare止まれ! 〝Fosso ratto溝ネズミ〟 !!」


―「In che squadra seiどこの組の者だ !?」


 ――やはり、通路の方がやたらと騒がしい……――。そして挙げ句の果てには――


 ――バキュン――!! バキュン!!――


 〝銃声が聞こえてくる〟ではないか――


 (はぁ? ――オイオイ、こりゃどんな展開だ? こっちは寝起きなんだぜ? ――空気の読めねぇ野郎が好き勝手に暴れていやがる。――〝昼寝の後の銃撃戦〟ってか?…――冗談キツイぜ――)


 ――“やれやれ”と思いながら、彼はソファーから立ち上がり、伸びをする。…――そうして部屋の外へと意識を向けてみると…――


―「〝Lo faro' affondイオニア海にare mar ionio沈めてやる!!〞」


 ――バキュン!!バキュン!!


 やはり、物凄く面倒臭い事になっていそうな罵声と銃声が響いてくるのだった。


 ――するとその時、バッと部屋の扉が開く。


「アンダーボス!! 銃を持った何者かが乗り込んで来ました!!」


 息を切らしてそう話すのは、構成員のうちの一人である部下だ。


「何者かって何だ? …――何人乗り込んで来た? うんと沢山か?」


「ひっ1人です!!」


「……――。あ? ――」


『1人』、そう聞くとルカは、呆れたようにあんぐりと口を開けた。〝1人だけだと? だったら何をそんなに焦っている? さっさと捕まえてしまえば良いだろう〟と、そう言いたいのだ。


「呆れた。ガッカリだぜ。あまり俺を落胆させてくれるなよ? …――さっさと捕らえろ。俺は出ない」


 ――だがやはり、部下はひどく焦った様子だ。部下は何か懇願するように、両手でガッとルカの片手を掴む。


「アンダーボス!…――いや、ルカさんっ! それがソイツ、メチャクチャ強ぇんですって!!単身で乗り込んで来ただけあるって言うか――!!」


「…っ…――引っ張るな! 掴むな! 金のカフスが取れちまうよ! …――」


「ルカさんっ! だからソイツッ――……!! とにかく、ご指示をっ! 」


「だから〝捕らえろ〞って言ってんだろうが?! これが指示だ! 〝指示!!〞」


 ――だがやはり『だからソイツ強ぇんスって~?!』『あ゛~!! 情けねぇ!! 弱音吐かずにさっさと行って来ーい!! 』と、なるのだった。


「だいたい、幹部共はどうした? …―助けてほしけりゃ、まずはアイツらに泣き付くんだな」


 言い捨てため息をつくと、ルカはその足を部屋の奥へと進め、棚からコーヒー豆を取り出す…――


「いやルカさん?! あのアホ幹部共、酔い潰れてるのか何なのか、全員寝ていやがりますっ……!!」


 ――すると豆を取り出しながら、ルカは首を傾げる。


「……――あ~、そりゃ、一服盛られたかもしれねぇな」


「え~?! 」


「……――幹部には一服盛ってある、ボスも不在。…―そんで敢えての真っ昼間の襲撃ってか? まさかの“昼の奇襲”ってな」


「…っ…――」


 〝こんな時に叩いても揺すっても起きねぇアホ幹部共だと思ったら、奴ら一服盛られていたのか?!〟と、部下は顔色を悪くしながら固まっている。


「……―あ~、そういや俺も、どうしてだか眠くなってよ? さっきまで昼寝をしていたぜ……」


「え~?! ルカさんまで?! なら盛られたって、すっ睡眠薬か何かですか?!」


「そうかもな」


〝そうかもな〞と、ルカはあっけらかんと言っている。――そうしてコーヒー豆を、コーヒーミルの中へと流し込む――


「っ?! もしそれが本当だったなら、よ、よく目が覚めましたね?! 幹部共なんて、あまりにも起きねぇもんで腹立って、つい蹴飛ばしちまいましたよ……それでも奴ら〝起きねぇんです!!〞」


「……――寧ろ、起きなくて良かったな。Domenicoドメニコのこと怒らせんなよ? アイツがイオニア海に行くと、お仲間の数まで減った状態で帰ってきやがる。…――あの野郎、仲間殺しの裏取りが取れたなら、ただじゃおかねぇ……」


「おっ起きなくて良かったぁ~……」


「……――一応、Alfioアルフィオの事も怒らせんなよ? 奴はキレると何をするか分からねぇ。Eliseエリーザの餌にはなりたくねぇだろう?」


「ッ?! 何スか?! エリーザって!?」


「知らねーのか?奴の恋人だ。お口の大きな淑女! 〝エリーザペットの大ワニ〞!!」


「ッ?! つまり恋人も、ヤッベェ女なんでしょ~ね……起きなくて良かったぁ……」


 部下は幹部たちの話をルカから聞きながら、顔色を悪くして震えている。

そしてルカは、コーヒーミルのハンドルを掴みながら〝回せばいいのか? ……〟と、首を傾げていた。


 だがするとまた、通路から銃声や呻き声が響いてくる。

 部下はビクッとして跳び跳ねた。


「ほら、ビビってねーで、お前もさっさと行って来い!」


 ルカはトン!と部下の背中を押す――。

 すると部下は決心したのか、『はいっ!!』と、少々上ずった声で返事をした。――そして、部屋の出口へ向かって走り出す。


「あ! ちょっと待て! ――コレ、回せば良いんだろう? なぁ俺はいつも、どれくらい挽いたコーヒーを飲んでいた? 俺、自分で挽いた事ねーからー!!」


 ――〝なぁコーヒー豆って、どれくらい挽けば良いんだ?!やっぱしソレ答えてから行け!〟と、慌ててルカは部下を呼び止めようとする。


 だが聞こえなかったのか、部下はそのまま部屋を飛び出そうと、扉を開く――

 すると、さっそく例の侵入者と対面し…――


「っ?! 」


 ハッと呆気に取られているうちに…――


「間抜け面した下っ端!そこを退きな!」


 ―ゴン!!☆


 銃把じゅうはで顔面を殴られ〝KNOCK OUT☆〞された。


 ――開いた扉の前で、部下が床へと倒れる。


 ――コーヒーミルのハンドルを握りながら、〝アイツ弱ぇな…〟と思っているルカであった。


 ――すると銃を構えながら、例の招かれざる客が、部屋へと飛び込んできた――

 フード付きの黒いロングコートのフードを被り、同じ色のマスクを付けている。敵は見るからに怪しい身形だ。


 マスクの敵は銃を構えながら、獲物を探すように、鋭い目付きで部屋を見渡している…――


 ――風に揺れて膨れる黒いカーテン……――その隙間から吹き込む、不吉な風――


 ――部屋の中心には、キャンバススタンドにセットされた、灰色、モノクロの画――


 ――上質な艶が浮かび上がる、ブラウンの革ソファー…――


 ――カウンターの上の、手動のコーヒーミル…――


 ――侵入者はコーヒーミルを目に捉え、銃を構えたまま、怪訝そうに目を細めた…――


 (“挽きかけのコーヒー豆”が入った、コーヒーミル…――誰がそれをやった? 部屋から出てきたさっきの下っ端か? もしもそうだったなら、コーヒーを淹れる相手が部屋にいたって事だ――)


 ――侵入者はそう思い至る。

 だがそう思い至った、瞬間――カウンターから銃口が覗く――


 ハッとした侵入者は、咄嗟に伏せる――


 ――頭上を銃弾が通過した――


 ――すると続け様に一発、二発と、またカウンターの後ろから銃弾が飛ぶ――


 侵入者は舌を打つと、身を投げ出すようにしながら、ソファーの後ろ側へと隠れた。


 …――少しすると銃弾が止み、部屋に静寂が戻る――


 ――カウンターの内側に身を隠しているルカは、そこで銃弾をセットしながら、例の侵入者へと、声を投げる――


「――おい、誰だ? バンバンと目覚まし替わりに、銃弾なんざブッ放しやがったのは…――せっかくの昼寝から、目が覚めちまったじゃねーか……」


 すると侵入者は、ソファーの後ろに隠れながら、耳を疑い、目を見張った。


「……―この部屋にいるって事は、お前がアンダーボスのルカだろう? よく目が覚めたな……普通なら――…」


「――ハッ。毒でも盛れば良かったものを…――睡眠薬とはな。随分とお優しいこった。詰めが甘いんじゃねぇのか?……――」


「……――」


「――生憎、睡眠薬なら時々服用するんでな。体が慣れちまってんだ。“昼寝程度で目が覚めた”」


 話を聞くと、侵入者はギりと歯を食い縛り、舌を打った。


「――おい、侵入者、聞いてもいいか?」


「何も答えるつもりはない……」


「…――コーヒー豆挽いた事あるか? どのくらい挽けば良いのか、さっぱり分からねぇんだ。なぁオススメn…――」


 ――だがすると、何か癇に障ったのか、侵入者がソファーに隠れながら、カウンターに向かって続け様に発砲した。


 ――ガシャン!!


 カウンターの内側に隠れているルカの方へと、撃ち跳ばされたコーヒーミルが落ちてくるのだった。銃弾に割られ、跡形もない。


「誰が銃弾で豆粉砕しろって言った?! 俺はを聞きたかったんだ!!」


(短気な野郎め! 許さねぇ! )


 ルカはカウンターの内側から、銃口の向きを上げる。――狙いは、だ。


 ――引き金を引く――放たれた銃弾は、狙い通り〝照明〟へ――


 ――…撃たれた照明が落下する――ソファーの後ろに隠れていた侵入者は、慌ててソファーの後ろから飛び出した……


 〝あぶり出し成功〟と言わんばかりに、ルカはその時を狙って、立て続けに引き金を引く――


 ――すると、身を投げ出して逃げながら、侵入者もルカへと銃口を向けた…――


「危ねッ…?!」


 ――バキュン!!


 ――一瞬の事だ。放たれた銃弾が、ルカの金のカフスを撃ち飛ばした。


 〝なかなか、やりやがる〟と、ルカは感心して侵入者のいる方へと目をやる。

 …――本人はまたどこかへと上手く隠れたらしいが、床にポタポタと、赤い鮮血の痕が出来ていた。


 ――銃を構え、警戒を解かないまま、そっとルカは立ち上がる…――


 侵入者はどこで息を潜めているのやら、部屋の中はしんと静まっている…――


 ――ゆっくりとカウンターから出て、歩を進める…――


 ――すると、一滴、床へと鮮血が垂れた音がした――


 ――ハッとしてルカは振り返る。


 すると、利き手から鮮血を垂らした侵入者が、黒いカーテンの前に立っている…――


 ――呼吸を整えながら、侵入者は左手で構えた銃を上げる――


「“手負いだから”と、油断したか……? ――」


 次の瞬間、ルカに向かって侵入者が発砲した――


 ――部屋へと銃声の余韻が響く……――


 ――…一瞬の事だった。ルカは冷や冷やとしながら、横目でキャンバススタンドを見る…――


 標的を外した銃弾が、灰色、モノクロ世界の画へと、綺麗に風穴を開けている…――


「人の作品に風穴を開けるたァ…――そりゃ良い趣味じゃねぇな――」


 ――ふつふつと怒りが込み上げる。額に青筋を立てながら、ルカは銃を上げる――


 ――侵入者は手早く左手でカーテンを思い切る引く――すると、ブチブチとカーテンフックが外れた。――曇り空が覗く――

 ――そして、フックからちぎり取ったカーテンが〝一瞬の目眩まし〟――


 ルカは引き金を引き、カーテンもろとも立て続けに撃った。

 ――発砲を終えたばかりの銃口からは、ユラユラと煙が上がっている……――


「芸術の分からねぇ不届き者のMarmocc小僧hioには、丁度良い仕置きだな? ――」


 ルカは満足気に口角を吊り上げた。


 銃弾に遊ばれていたカーテンが、落下を始める――


 だがすると…――同じくカーテン越しに銃弾が返ってきた――


「あ?! 」


 ルカはパチクリと瞬きをすると、急いで伏せる。


 (当たってなかったのか?! 運の良いやつめ…――! 闇雲に撃ちやがって! 危なくて仕方がねー! )


 ――ルカは伏せながら様子を伺っている。

 ――すると、例の侵入者がカーテンの後ろから飛び出して来た。先程の発砲を目眩ましに、撤退でもするつもりなのだろう…――


 ――〝逃がすか……!!〞――


 床に手を突き立ち上がると、ルカは侵入者を捕らえようと、走り出す――


「待ちやがれ!!」


 走りながら侵入者が振り返る。また左手で、銃を向けてきた…――


 〝その手は食わねぇ!〟と、ルカは素早く侵入者の左手を掴んだ。銃を取り上げる…――


 思っていたよりもスンナリと、銃は侵入者の手から離れた。取り上げた銃を、部屋の奥へと放る――


 逃れようとする抵抗に合いバランスを崩すが、〝逃がしはしねぇ〟と放しはしない。

 ――だがそうしているうちに、結局ルカと侵入者はキャンバススタンドの足元へと倒れ込んでしまう。

 ルカは侵入者を組み敷き動きを封じると、侵入者のマスクを奪い取った。そして、銃を構える――


「観念しろ! どこの回し者なのか、吐いてもらおうじゃねーか! …――答えねーなら、この銃、お前の口ん中にっ――!!」


 〝捩じ込んでやる!!〟と、銃を片手に侵入者へと目を向ける。

 ……だがそこで、ルカは目を点にした。開いた口が、塞がらない――


「Belッ…――〝Bella donna asiatica美しいアジア人女性!? 〞」


 ――そう、例の侵入者はアジア人の女だった。


 ハッとして、女が被っているフードを取る。

 ――髪は長いのだろうが、フードから溢れぬように、その髪は頭の後ろにまとめていたようだった。


 艶のある黒髪に、きめ細やかな肌、童顔な顔立ち、見つめた者を決して逃さぬような、シュッとした奥二重の瞳…――


 偶然にも女は、欧州人の想像する“アジア美人”の特徴をおさえた容姿をしていたようだ。


 つい呆気に取られてしまっていると…――その内に、曇り空の隙間から、太陽が顔を覗かせ始める――

 ――女を組み敷いたまま顔を上げる。

 ――キャンバススタンドにセットされた、風穴の開いた灰色世界の画。…――その風穴から、太陽の光が射していた――


 ――その瞬間、彼の中の〝下らねぇ灰色世界にも、luceが射した〟ようだった。


 ルカは唖然としたまま、再びに目を向けた。


 こちらの事情も気持ちも露知らず、女は鋭い眼差しで睨み上げてくる。…――


「アンタに話す事は何もない! 拷問したって無駄だ! 私は…――!!――」


 ルカはポカンとしながら女を見下ろしている。――ルカは目を泳がせた。


「……昼寝の邪魔だ。Bella donna asiatica美しいアジア人女性、さっさと帰れ」


 女は〝は?〟と言いたげに、表情をしかめた。口が開いてしまっている。


「昼寝……?――バカにするな!! 情けでもかけるつもりか!! 」


「――酷いのはどっちだ!? 睡眠薬を盛った挙げ句、コーヒーまで飲ませてくれなかったのは誰だ?!〝俺は眠たい! 物凄くなぁ! 〞」


「……――」


 女は依然、キッとした目でルカを睨み上げている。


 ――するとルカは挑発するかのように、ニッと口角を吊り上げた。


「そんなに銃撃戦をやりてぇって言うなら、付き合ってやってもいい。――だが、続きは“昼寝の後”でな。そこは譲れねぇ――」


 ――言ってルカは、組み敷いていた女を解放する。

 …――女は注意深く、ルカを見ている。


「……――。……馬鹿な奴っ……――!! 逃がしたなら、帰ってこないかもな……!!」


 ――女は立ち上がる。負傷している右手を押さえながら、バッとルカの前から立ち去り、部屋を出て行った――


 女が走りさった方向を眺めながら、ルカは“やれやれ”とため息をついた。…――そして考え込み、首を傾げる。


「“昼寝の後のディナー、一緒にどう?”…――ぅわ照れ臭くて、つい”を使っちまった……チクショウ……!それもこれも、マフィア稼業のせいだってんだ! …――“昼寝の後の銃撃戦どう?”ってか?…――何だそりゃ?!ふざけんな!!クソッ!!」


 ルカはカリカリとしながら部屋の中を歩き回り、一人ブツブツと言っている。

 するとそこで、ようやく銃把でKNOCK OUT☆されていた部下が意識を取り戻し、起き上がった。


「ハッ?! ルッルカさん?! ルカさん!! ご無事ですか?! 奴はどこへ?! ――」


「――ようやく起きたか、Carioカリオ、元気そうで何よりだ」


「それでルカさん?! 奴は?!」


「――一旦帰したぜ? 昼寝の後はディナーだからな? 腕から血ぃ垂れ流して、可哀想に……まったく、“誰が撃ちやがった”!! …――ディナーの前に、傷の手当ても、着替えも必要だろう? だから一旦〝帰したのさ!〞」


「は?! ……」


「…――なぁ、“昼寝の後の銃撃戦”どう? ――コレ、“今夜ディナーどう? ”の喩えたとえなんだぜ? 伝わったと思うか? ――」


「〝伝わってませんよッ!!言い切れます!!〞」


 〝この人ホント、何を言っているんだろうか? 〟と、ルカに白い目を向ける部下であった。

 ――だがルカは『いや伝わってるかもしれねーだろう?!』と。部下は『戻ってきたとしても、本当の銃撃戦にしかなりませんよ!!』と…――

 だがさておき――


「おい、部屋片付けておけ」


「はっはい! あの、ルカさん、どちらに?…――」


「――この部屋は散らかっちまった。部屋を移し、俺は寝る。――備えなきゃならねぇんでな。“銃撃戦”に」


「……あの~、本気で言ってます? ……」


 苦笑いの部下を残し、ルカは部屋を出る。


 ――窓から覗く太陽の光が、灰色だった世界を照らしていた。


 さぁ、昼寝の後は、銃撃戦だぜ? ――


 約束通り、備えよう。


 ――〝〟ってな――






 ◇▫◆―――▫【 Fine 】▫―――◆▫◇



 芳岡 海 様、素敵なお題、ありがとうございました!!❇️

楽しく執筆させて頂きました!! 🙌🍎


 ――17/10/2024――【フルーツロール】―─


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

BELLA DONNA luce フルーツロール @fruitsroll

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ