第9話 上巳の祓
梨花は賀茂の家にある医学書を熟読し、賀茂保憲の健康維持に尽力した。姫君として賀茂家に貢献する適性のない、彼女なりの恩返しである。薬草を摘みに外に出かけることが増えたの。晴明もできる限り同行し、彼が仕事のときは従者を付けた。
藤原師尹の従者として、源満仲が保憲の許に翌年の暦本を作成するための料紙を持ってきた。晴明は病み上がりの保憲を補佐し、暦本を完成させた。二人は暦本を師尹へ渡し、誤りがあった時のためにその場に留まった。師尹は隅々まで目を通したので、なかなか帰ることができない。確認は深夜に及び、暦本には少しの誤りもなかった。晴明は喜び、保憲の功績を褒め讃えた。
天慶七年(944)、保憲は師尹に上巳の祓を奉仕した。梨花は初めて師尹と顔を合わせ、彼がかつて盗賊から守ってくれた恩人だと気付く。ほんの少し言葉を交わしただけだったが、二人はお互いに親しみを感じた。
秋になって、天変地異が頻りに起こった。激しい雨と風で多くの建物が顛倒したが、賀茂の家は晴明が竜宮で賜った鎮宅霊符に護られていた。陰陽寮は吉凶を占うよう命じられ、保憲は貴人に憂い事がある兆しだと占った。間もなくして藤原忠平が重く患ってしまう。
超忙しい人のための晴明伝奇 清甜銀雪 @yamimin0520
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