3ピース ハロウィン物語

第1話

とある墓場の先にある廃墟。

そこに近づいたものの話によると、奇怪な現象に遭遇したという。

お化けに遭遇した、ミイラ男が追いかけてきた、2m以上もある背の丈のフランケンシュタインが徘徊していただの、怯えた表情で語っていた。

オカルト好きの僕といったら興味深く話を聞いていたものの、大の大人が何をいっているのだ、と少々嘲笑を含みながら話を聞いていた。

そんな噂話を検証するべく、僕はあの廃墟を探検してみることにした。


「あの先に見えるのが噂の廃墟だ。」


「不気味なところだな。街中とはまるで空気が違う。」


「怖いよ・・・。やっぱりやめておこうよ。帰ろうよ。」


「だったらなんで付いてきたんだよ。嫌ならお前だけ帰れ。行くぞ。」


怯えているザック=アンダートンをよそにウィルフレッド=マケルハイニーとロイ=パウエルは歩いていった。


「ちょっと待ってよ・・・!!僕も行くってば・・・!!」

行きたくない気持ちを抱きながら、先に向かった二人をザックは追いかけた。


「ここら一体だけものすごく寒いな・・・。」


「なんだこの不気味なカボチャを使って作られた顔は。」


「規則正しく綺麗に並べられている。気持ち悪いな〜・・・。」


「お前くっつきすぎなんだよ。歩きにくいんだ。」と、ウィルフレッドはザックを突き放す。


「怖いんだから仕方ないだろー。」

ぶつくさと言いながら、ザックは二人に付いて行く。


「うわっ!」


「どうしたっ!?」


「あのカボチャが動いた!」


「驚かすなよ!」


「何を言っているんだ、そんなわけがないだろう!怖がりすぎなんだよ、ザックは!」


「本当なんだって!!あのカボチャが動いたんだって!!まずいよ、帰ろう!!ここはやっぱりなにかあるよ!!」


と二人はザックに手で帰りを促し、嘲笑しながら先を歩いた。


「扉だ。」


「かなり頑丈な扉だ。」


「まずいよ、帰ろう!」


「まだいたのか、ザック。嫌なら帰りな。」


「なにが起こっても知らないからな!」


「ハハハハハハハハハハハ・・・!」


僕たちの周りを不気味な笑い声が鳴り響いた。


「なんだ・・・!?」


「うわあっ!!」


3人は大きな声を出して驚いた。

カボチャの頭をしたタキシード姿の化け物僕たちの前で肩を揺らしながら笑っている??


「まずい!!逃げよう!!」


3人が出口に向かったところ、規則正しく並べられていたたくさんのカボチャの頭たちが四方八方から跳ねながら僕たちに向かってくる。


「囲まれた・・・!」


タキシード姿をしたとっさに名付けたパンプキンマンを見ると、扉に向かってどうぞと手で案内し消えていった。

すると頑丈そうな大きな扉がゆっくりと開き出した。


「罠だよ!!!」


「でもそこしか逃げ道がない!入るぞ!」


バタンッ!


3人が扉の中に入ったとたん、勢いよく閉じられた。

3人で思いっきり押しても引っ張ってもびくともしない。

カボチャの頭の大群だろう。

どすんどすんと外で扉を叩いている。


「はあはあ、噂は本当だったな・・・!」


「ここにはなにかがあるようだ・・・!」


「だから言ったろう!帰ろうって!」


扉を背にして3人はへたり込んでいる。


「とりあえず。ここから脱出して逃げなければ。」

落ち着きを取り戻したウィルフレッドが話を切り出した。


「でも真っ暗で何も見えないよ!」


「そんなこともあろうかとこれを用意しておいたよ。」


「さすがロイ!用意がいい。」


ロイは得意げな表情を浮かべながら、三本の蝋燭に火をつけ、小さなランタンに入れてウィルフレッドとザックに手渡した。


「さあ、出口を探そう。」


小さな3つの灯を頼りに出口を探す3人。


「うわっ!」


「どうした!?ザック!!」


「なにかにつまずいた。」


「なんだよ、驚かすな。」


「だって仕方ないだろ。灯がついたって言っても知れているじゃないか。」


「ぶつぶつぶつぶつ文句ばっかり煩いな。お前も出口を探せよ。」


「探しているよ!ほとんど真っ暗で何も見えないんだ!」


「こんなときに喧嘩はよそうぜ。」


「あの時に帰っていれば、こんなことにならなかったのに・・・・。ん・・・??誰かに見られている気がしない??」


「もういいよ、ザック。黙って・・・ん??_


「うわーーー!!お化けだ!!」


出口を探す3人の前に突如お化けが現れた。

驚いた3人は四方がつかめない空間を必死で走り抜けた。

ユラユラとした動きでたくさんのお化けが3人を追いかけてくる。

「あっちだ!」


前にあった扉に向かって突進してこじ開けた。

3人はそのまま転がり込んだが、ウィルフレッドはすぐさま起き上がり、扉を勢いよく閉じた。


「はあはあ・・・!!一体なんなんだこの廃墟は・・・!!」


「噂通り奇妙なことがたくさん起こる。」


「やばいよ、早くここを出よう!」


「そうだな!行こう!」


息が整わないまま、3人は出口に向かった。


「まるで巨大な迷宮だ。どういう構造をしているのか全然掴めない。」


「足元にも気をつけろよ。いろんなものが散らばっている。何に使われていた建物なんだろうか。」


「うわ。。。蜘蛛の巣だ。気持ちが悪いな。僕は虫が苦手なんだよな。」


「あれはなんだろう??」


ロイは気になる方へランタンを照らしてみた。


「棺だ。」


「こっちにもあるぞ。」


「棺だらけだ・・・。気持ち悪いな。」


「棺の間、だな。」


「なんて数なんだ。」


ガタゴトガタゴト・・・


「何か音がしない・・・??」


「どこからだ・・・??」


「近いぞ・・・。」


バタン!


ひとつの棺の蓋が倒れ込んだ。


「びっくりした・・・!」


「心臓が止まるかと思った・・・。」


「腰が抜けてしまった。。。」


あまりの突然の出来事にはりつめた緊張感や恐怖を飛び越えてしまい、ウィルフレッドとロイは顔を合わせて二人は笑ってしまった。

「笑っている場合じゃないよ。腰が抜けて起き上がれないよ。」


「ははは、ザック、間抜けな姿だな。」


「ほら、肩を貸してやる。先を急ぐぞ。」


カタカタカタカタ・・・


「まだ音が聞こえるよ・・・。」


うわーーー!!!!


空いた棺から骸骨が不気味な動きをしながらこちらに迫ってくる。

我を忘れてウィルフレッドとロイは勢いよく逃げ出した。


「待ってよー!!!」


腰を抜かしたままのザックは大きな声で叫ぶ。

地面を這いながら逃げるザックに骸骨が迫ってくる。


「ザック、走れ!」


「逃げろ!」


ウィルフレッドとロイは立ち止まり大きな声でザックに呼びかける。

でもザックは腰を抜かしたままで、立ち上がることができない。

二人は近くにあった棒を持ち、勇気を振り絞って骸骨に向かっていった。

二人が振りかぶった棒が骸骨にあたりバラバラになって崩れ落ちた。


「ザック、早く肩に捕まれ!」


「急げ!」


ザックを真ん中にして、肩組みをしながら出口に向かった。


シュルシュルシュルシュル・・・

なにかにつまずいて3人は勢いよくこけた。


「いってー!」


「何か足に絡まっている。」


「包帯だ・・・。」


シュルシュルシュルシュル・・・。


うわーーーー!!!!


全身に包帯を纏った化け物が3人に襲いかかってきた。

3人は一気に起き上がり絶妙なコンビネーションで肩組みをし走った。

運動会だったならば、間違いなくぶっちぎりの一等賞だっただろう。


「はあはあはあはあ・・・」


「次から次といろんなものが出てくる・・・。」


「もう勘弁してくれよ〜・・・早く帰りたいよ〜・・・。」


「ザック重たいんだよ!」


「しっかり歩けよ!」


「仕方ないだろ、腰が抜けて足に力がでないんだよ・・・!」


「ん??人影が見える。」


「ほんとだな。」


「さっきの骸骨や包帯男じゃないの!?」


「もしかしたら俺たちのように迷い込んだ人じゃないのか??」


「いや、それは分からない。少し様子を見てみよう。」


「暗くてよく見えないけど、マントのようなものを着ているのかな??何かを飲んでいるようだね。」


「赤いな。」


「ワインだ。」


「ここの住人なのか・・・??話を聞いてみるか。」


「慎重に行こう。罠かもしれない。」


「こんなまともじゃないところに住んでいる人なんているものか!罠に決まっているだろう!」


「出口を知っているかもしれないじゃないか!とりあえずいくぞ!」


「僕はやだよ〜・・・!」


「肩を組まなきゃ、お前歩けないぞ??いいのか??」


「置いて行くぞ??」


「わかったわかった、いくよいくよー!!」


ゆっくりとワインを飲む男の背後に近づいていった。


トボトボトボ・・・


グラスに注がれたワインは深い紅色。

グラスをゆっくりと回してワインを転がしている。

紳士的な印象を受けた僕たちは顔を合わせて頷いた。


「すみません、この建物の出口を探しているのですが、教えてくれませんか??」


ウィルフレッドは後姿の紳士に声をかけた。

グラスを転がしたままこちらを見ない紳士に嫌な予感がした。

「あの・・・」ともう一度声をかけようとしたときにゆっくりと首をこちらに回してきた。


うわーーーー!!!!


3人は絶妙なコンビネーションで肩を組んだまま、回転をし走った。


「ザック、お前足が動いているじゃないか・・・!!」


「治ったんじゃないのか・・・!?」


「あ、ほんとだ!あまりにもショックで治ってしまった・・・!!」


「早く言えよ!!」


と二人に壮大なツッコミを受け、突き飛ばされる。

その勢いのまま、奥の部屋まで走った。


「はあはあはあはあはあはあ・・・!!」


「なんなんだよ・・・一体・・・!!」


「もう僕疲れたよ・・・!!ここから本当に出られるのっ!?」


「なんか揺れていない??」


「ほんとだな・・・。」


「地震か??」


ドスン!ドスン!ドスン!


ドスン!ドスン!


「もんのすごい大きい靴だね・・・。」


「ほんとだ。」


「こんなのよく売っていたものだ。」


「足首もものすごいふっといこと。」


「ああ。」


「こんなでっかい足の人って、かなり大きいだろうねー・・・。」


「ほんとだねー・・・。」


と3人は恐る恐るゆっくりと上を見上げる。


うわーーーー!!!!


3人に向かって大きな手が迫ってきた。

巨大な男の股を3人はくぐり抜け思いっきり走った。


ドスンドスン!


ドスンドスン!


「あそこに扉があるぞ!あそこに駆け込め!」


「あの大きさなら、やつも追いかけてこれないだろう・・・!」


扉を突き破り逃げ込んだ。

扉の外から大男が僕たちをゆっくりと見ている。

扉に手を入れて、僕たちを捕まえようとする。


「まずい!奥に逃げるぞ!」


3人は隅の方へ捕まらないように団子になって小さくなった。

大きな男は手をぐいぐいとやってくるが、3人は必死になって避けた。

まるで組体操のようだ。


諦めた大男は手を引っ込めた。

扉からじろりとこちらを見、大きな足音を立てながら帰っていった。


3人の呼吸の音が不規則に静かになった空間に鳴り響いている。

もはや会話をする体力もなく荒れた呼吸を整えている。


ザックはポケットに入っていたビスケットを取り出し、二人に分け与えた。


「ありがとう、ザック。」


「美味いよ。いつもより何倍も美味く感じる。」


「どれくらいここにいるんだろうね。」


「ものすごく長く感じるな。」


「外も見えないしな。」


「この部屋にはふたつの扉がある。」


「ひとつは大男がいる扉。もうひとつはまだ入ったことがない部屋。」


「どうする??」


「どっちも嫌だけど、大男にもう会いたくないよ。」


「決まりだな。」


「行くか。」


「何も起こりませんように。」


「まったくだ。」


「だだっ広い一本道だ。」


「先が見えない。どういう構造をしているのだ、この建物は。」


「静かだね。嵐の前の静けさ・・・なんてね。」


「先を急ごう。」


3人は四方を警戒しながら、先に向かった。


「なんて長い部屋なんだ。まだ先が見えない。」


「入ってきた扉も真っ暗で見えなくなったぞ。」


「でも、なんにも出てこないから全然マシだよ。なんだか楽しくなってきたよ。」


緊張の糸が切れた3人は笑い話をしながら歩いていた。

3人の楽しい雰囲気とは裏腹に、外から雷が鳴り響く音が聞こえてくる。


「外は雨かな。」


「予報では快晴だと言っていたけど。」


「すごい雷が鳴っているね。」


雷の大きな不気味な音で、幾度となく襲いかかった恐怖体験が鮮明に蘇り、楽しい雰囲気は徐々に消えていった。


「そういえば俺たち、お化け屋敷の中にいたんだったよな。」


「ああ。」


「すっかり忘れていたよ・・・。また怖くなってきた。やっぱりこのまま何もないまま終わるわけないよね??」


「ああ、終わるわけがない。」


「ほら、見てみろよ。俺たちの予感ってのは冴えている。的中している。」


「わわわわわわ・・・死神だーーーー!!!」


大きな笑い声をあげながら、宙を舞い3人を追いかけてくる。

長い釜を何度も振りかぶってくる。

体力を消耗し、重たくなった体を気力で動かし必死になって3人は走った。

後ろを振り向く力さえもなくなってきている。


「はあはあ・・・!一体どうなっているんだ・・・!どれだけ走っても出口が見えてこない・・・!」


「もう・・・俺は走れない・・・」


「僕も・・・もう限界だ・・・!」


「頑張れ・・・!捕まったら命を取られてしまうぞ・・・!」


ウィルフレッドの足がもつれ、転んでしまった。

ロイとザックもそれに巻き込まれてしまい、3人は倒れ込んでしまった。

大きな笑い声をあげながら、3人の上に死神が浮いている。

死神はゆっくりと大きく振りかぶった。


「もうだめだ・・・。」


「逃げ切れない。」


「おかあさーーーーん」


3人は目をぐっと瞑った。

その時。


3人の瞼に眩しい光が差しこんだ。

白く輝く光が死神と3人の間に浮いている。


「ここは無限の回廊。あなたたちは死ぬまでここを出られない。」


「えっ・・・!!」


「でも、もう大丈夫。私がここを大きな光の力で照らします。外にでることの扉が見えるはずです。その扉に向かって一気に走るのですよ。私も長くは力を使うことができません。失敗したら、あなたたちは一生この無限の回廊で暮らすことになります。いいですか??」


「なんだかよくわからないけど、わかった・・・!」


「それではいきますよ!」


宙に浮いた光の中心からとてつもなく眩しい白い光が広がり、辺りを包んだ。


「いきなさい!」


光によって出現した出口の扉に向かって3人は必死になって走った。

辺りを照らしていた白い光がだんだんと薄くなって暗くなっていく。


「まずい・・・!」


「光が消えてしまうと、扉も消えてしまう・・・!」


「扉の上が消えかかっている。」


「みんな頑張れ!あと少しだ!」









「はあはあはあはあはあはあ・・・。」


「はあはあはあはあはあはあ・・・。」


「はあはあはあはあはあはあ・・・。」


3人ははじめの扉の外に出ていた。


「やっと出られた・・・。」


「はははは。」


「こんなに疲れたのは、生まれて初めてだよ。」


「生まれてそんなに経ってはいないだろう。」


「そうだけど、こんな怖い思いは二度とごめんだよ。」


「俺も。」


「俺もだ。」


「お腹すいたよ。」


「俺も。」


「俺もだ。」


「疲れたし、眠たいよ。」


「俺も。」


「同じく。」


「早く帰ろう!」


「そうだな。」


「帰ろう。」


短い時間の中で遭遇した記憶に新しい出来事を語らいながら街へ向かった。

ドロドロになった服。

蜘蛛の巣だらけの髪。

すすのついた顔。

緊張感がとけて、いつも通りのやりとりをしながら帰路へ着く。


ほほほほほほほほほほほ!


「なになに・・・??」


「終わりじゃなかったの・・・??」


「終わったと思うよ。」


「気のせいだろう。」


「そう思いたいが、明らかに不気味な笑い声がこちらに向かっているぞ。」


「せーので見てみようか。」


「嫌だけどな・・・いくぞ・・・。」


せーの!


振り返るとほうきに跨った魔女が3人に向かってやってくる。


うわーーーー!!!!


「もういやだよ!」


「喉が痛い・・・!」


「あそこが墓場の出口!あそこまでいけば魔女も追いかけてはこれないだろう!」


最後の力を振り絞り、3人は出口に向かった。

なんとか魔女を振り切り、3人は無事に墓場の出口に飛び出た。


「はあはあはあはあ・・・」


「やっと終わったな・・・」


「うん・・・もう走れない・・・」


3人の真ん中に魔女の影が出る。


「嘘だろう・・・。」


「もう歩けない、走れない。今度こそ終わりだ。」


「もう好きにしてくれー!」


魔女はステッキをくるっと振った。

キラキラと光の渦が僕らを包んだ。

魔女は笑いながらこの場を去っていった。


「助かったのか・・・。」


「助かったようだが、なにをしたんだろう。」


「ん??ポッケになにか詰まっている。」


3人のポケットにはたくさんのお菓子が詰まっていた。

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