午後ロー鑑賞日記

卯月 朔々

2024.10.10 「ホテル・ムンバイ」('18)



 思いつきで始めたので、不定期に更新されます。(毎日は更新しません。印象に残ったものを書き残す形式です。)


 平日昼間、テレビ東京では「午後ロー」こと「午後のロードショー」が放映されています。

 

 三つ子の魂百まで、と言いますが、私がやたらとクライムノベルを書きたがる悪癖があるのも、小中学生時代に地上波で流れていた映画に魅了されていたからだと思います。今となってはね。


 気づけば、地上波で映画流す枠ってだいぶ減ったなぁ……と思います。

 ラインナップも、近日公開作の繋がりあるものとか、安定して視聴率取れるのばかりになった感じ。

 人気作流すのもいいんですよ、もちろん。なんだかんだ言いつつ、見ちゃうし。

 本当に観たいのは配信で観られる時代ですしね。



 ただね。


 全然知らん映画だなーって思いながら、TV見てたら、なんとなーくハマっちゃう感覚。


 B級映画やちょっと古めの映画を愛する気持ち。


 そういうのも、経験として残しておきたい。


 サメ映画! 巨大ワニ! 巨大ヘビ! あと、なんだかいろいろツッコミどころしかない映画!


 アーノルド・シュワルツネッガー! シルベスター・スタローン! リーアム・ニーソン!


 ゴールデンで避けられてそうな、ゴリゴリの戦争映画!(2000年代以降のって、地上波ゴールデンでは見かけない気がする。いつか忘れたけど、「ブラック・ホーク・ダウン」をゴールデンでやってた記憶が朧げにあるくらいかも?)


 そんなわけで、「ゴールデンタイムの枠ではやらないような映画を流す、午後ローの心意気を書き残す」観察日記という名の感想文をあげていこうと思います。




 今日観たのは「ホテル・ムンバイ」。

 こちらは2018年の映画。実はこの映画、私は今回初めて知った(本当にすみません)。


 題材となったのは、映画公開の10年前に発生した「ムンバイ同時多発テロ」。

 このテロ事件をベースにした映画です。


 本作の舞台となるタージマハル・ホテルは五つ星ホテル。客層は富裕層メインで、一流の接客をし、一流のサービスをする。


 「同時多発テロ」と表記されていますが、実はテロの第一目標、第二目標が攻撃されるのが先。

 相次ぐテロに逃げ惑う市民たちが、タージマハル・ホテルに押し掛ける。ホテルは市民のためにエントランスのドアを開けた。そこへ流れ込む市民。

 それに乗じて、テロリスト(タージマハル・ホテル襲撃犯一行)が入り込んでしまう。


 「実話ベース」なので、どこまで本当なのかわからないですが、こんな潜入のされ方をしたら、防ぎようがないって……。


 ホテルの人が、市民のために、善意で開けたドア。

 素知らぬ顔で、そこから潜入するテロリスト。

 これ、軽く悲鳴出ますよね。実際のテロも、こういう流れで起きてしまったものは、たくさんあるのかもしれない。私が知らないだけで。


 ホテルスタッフたちが流れ込んだ市民の応対に追われる中、テロリストたちはAKを無差別に乱射する。

 ここから、命の価値などないと言わんばかりの惨劇が始まる。



 料理長が機転を効かせ、宿泊客を一ヶ所に集めることに成功してからは、いかに見つからずに救助を待つか(この時点では、救助が来るのを待つ前提)というフェーズへ。

 ホテルスタッフで名前が出てくるキャラは、みな勇敢で冷静。


 この映画、主人公は無双しないし、宿泊客に手練れの傭兵がいるとかでもない。そこはめちゃくちゃリアルに寄せているんだと思います。(元特殊部隊の人が一人いたけど、かと言って無双はしないし。)


 前半は、ホテルスタッフたちは「お客様を守るにはどうしたらいいか」で動くし、後半は「ホテルから脱出するにはどうしたらいいか」が行動の指針になる。

 おのおの、できることをやる。それしかない。


 それが功を奏したり、全く反対の結果を出したり、行動の結果がすぐに目の前で解答として出る。

 ある者は撃たれて死ぬし、ある者は間一髪で生き延びる。

 テロリストに占拠されたホテルで、宿泊客とホテルスタッフ、そして観客は、何種類もの地獄を見る。


 だが、テロリストもまた、悲しい側面がある。


 彼らのような実行犯は、テロ組織の上層部から見れば、砂粒よりも命が軽く扱われている。

 この戦いで死ぬことは天国へ続く道だ、と言い聞かせて、この場所へ放り込んでいったのだから。


 テロ実行中も、テロ組織の指示役から実行犯へ連絡がくる。指示役は現場には現れず、実行犯に「死を恐れるな」と叱咤する。

 まさに高みの見物。


 テロリストは、他者の命を軽く見ている。

 その鏡のように、テロリストの命もまた、テロ組織の上層部からは軽く見られている。


 えっぐい構造してるな、と思います。



 以下、ちょっとラスト辺りのシーンに触れますので、ネタバレ絶対無理という方は、ここで画面戻っていただけると、ありがたいです。


 じゃあ、これから、ラスト辺りのシーンで印象深かったものを書いていきます。

↓↓↓





















 映画の後半で、登場人物の一人が、こんな台詞を言います。


「祈りは必要ない。祈りが全ての原因だ」

 (具体的にここでは名前を出しませんが、ホテルを襲撃したテロリストは、とある宗教の教えのもとにテロ行為を行う組織です。祈り、つまり宗教のこと。)


 その一方で、人質になってしまった登場人物が死を覚悟した時、呟いた祈りの言葉に、銃を向けていたテロリストは翻意します。

 (その祈りの言葉は、テロリストたちが信仰する宗教のもの。同じ信徒を殺すことはできない。)



 祈りとは、人を殺し、人を救うものなのか。








 めちゃくちゃ考えさせられる映画です。ながら見は向いてない。

 実話ベースなので、お約束展開はない。

 先の展開が読めないので、「お願いだからこれ以上は! お願いだからもう!」と祈りたくなる(↑祈りの話したばっかだけども)。


 

 普段書いてる作品がアレなんで、全然説得力ないと思ってはいるんですけど、現実世界では、暴力で成されるものには何の価値もないと思っているのでね……。


 というわけで、「ホテル・ムンバイ」の感想でした。

 これは、すっごい見応えがある作品なので、機会があればご覧ください。


 ただし、恋人と観るには向かない。

 アクションっていうほどアクションしないので、アクションを期待しない方がいいですね。淡々と、丸腰の客とスタッフがどんどん……なので。

 

 こういう重いのも、どーんと昼間に流してくれるから、午後ローが大好きです。


 ちなみに今月の午後ロー、29日には「ジャッカルの日('73)」が放映されるので、楽しみです。

 リメイク版(「ジャッカル('97)」)は何回か観たことありますが、オリジナル版を観るのは初めてのはず。



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