2024.11.8 「コラテラル」('04)


 名前は聞いたことあるけど、見たことない映画の一つ。トム・クルーズが出ている、以外の情報がないまま視聴。


 ちなみに、午後のロードショー公式X(旧Twitter)の紹介文を抜粋すると、


「マックスは平凡なタクシー運転手

ある夜、ビンセントという男が乗ってきて


一晩で5カ所を回り仕事をするので

ハイヤーとして雇われてくれという


マックスは承知するが、

実はビンセントは麻薬組織に雇われたスゴ腕の殺し屋だった…」


 という、「私〇〇、16歳! 遅刻しそうでパンを咥えて走ってたら、失礼な男子とぶつかっちゃった! 学校に着いたら、転校生として現れたのは……朝ぶつかった男子! 私の学校生活、どうなっちゃうの〜!」みたいなノリの文章で、どう考えても本編のテイストと違う。

 「ジャッカルの日」の告知もライトな紹介だったけど、狙ってやってるのか何なのか。

 個人的には、こういう風邪ひきそうな温度差、好きですけどね。



 というわけで、私からも補足として、ざっくりとあらすじを書きます。


 たまたま乗せた客、検事局勤務のアニーという女性に、「いつかはリムジンタクシーの会社を始めて、リムジンにセレブを乗せて走りたいな〜」という夢を語るタクシー運転手・マックスのシーンからスタート。


 アニーが降り、その後に乗ってきたのは、ヴィンセントという男。


 ヴィンセントは、マックスに対し「これから5箇所回らなければならない。このタクシーを貸切にできないか」と持ちかける。

 会社の規定で貸切はできない、と断るマックスだったが、「600ドル出す」と言われ、渋々引き受けてしまう。


 まず1箇所目に向かい、ヴィンセントが用を終えるまでタクシーで待っていたマックスだったが、そのタクシーに上から死体が落ちてくる。

 

 ヴィンセントは殺し屋だったのだ。

 ヴィンセントは、死体を見てしまったマックスに対し、逃げ出そうものなら殺すと脅し、残りの4箇所も巡るように指示をする。

 マックスの運命やいかに……。



 この映画、実際のところは、「タクシー運転手なら絶対乗せたくないと思う客」V.S.「その客に対して、持ち前のホスピタリティで徹底的に付き合う運転手」の人間ドラマです。


 そして、トム・クルーズはどっちの役だと思います? 別の作品じゃイーサン・ハントですしね、そりゃあ善良な……と思いきや、殺し屋ヴィンセントです。


 このヴィンセントという男、平たく言えばサイコパス。とても簡単に言うと、だけども。

 生命に対する尊敬はない。

 宇宙や地球の時間軸で見て、「人間の一人や二人の人生など瞬きほどの時間だ」と考えている。

 依頼をされたから殺す。そこに善悪はない。

 清々しいほどのドライさ。嫌いじゃないですね。

 

 かたやマックスは、ただの真面目な男かと思いきや、親に対しては鬱屈した感情があり(母親を見舞うシーンで、それが顕著に出る)、いまだに夢を叶えるための一歩を踏み出せないジレンマも抱えている。


 アクションシーンもあるけど、この作品はマックスとヴィンセントの会話劇が一番見どころだと思う。

 その時のちょっとした一言が、実は伏線だったり。


 そしてタクシーの中で繰り広げられている会話、というのが面白いなーと。

 車という密室だと、二人の関係性が対等になるんですよね。

 走行中の車内なら、後部座席のヴィンセントよりも運転席のマックスの方が主導権がある(と思わせるシーンも出てくる)。

 

 後半になると、マックスとヴィンセントが、車中でお互いの感情のままに言い合うシーンが出てくる。

 すごく哲学的なことを言い、自分や周りを無理矢理納得させようとしているヴィンセントに対し、マックスは真っ直ぐに感情を剥き出す。

 それに揺れるヴィンセント。感情を理解しない殺し屋が、マックスの感情に動かされていく。


 このあたりのシーンは、面白かった。

 カメラワークも良かったな。夜の街の風景、空。タクシーのボディーを写したり。

 一晩の出来事を描いた話なので、車中も外もずっと暗い。それが雰囲気に合ってた。


 終盤の展開はちょっと無理あるんじゃないかな? とは思った。とはいえ、最後の最後も、綺麗に伏線回収して終わるので、満足感高いです。


 劇中に流れた曲も良かったな。→Audioslaveの「Shadow on the sun」(https://youtu.be/7H0--80KRUM)。

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