第25話 おセンチ様
「イクちゃん、歩いてみると、意外と、この山って、深いんだな。標高550メートル、だから、大したこと、ないんだと、思ってたよ……フゥ……」
アミーこと
普段の運動不足が
ちなみにアミーとイクちゃんが進むこのルートは、車が通る県道とも異なり、標高差が550メートルに対して、水平方向の距離は約8キロメートルもある。
「何という情けなさだ、現代人。人間は弱くなった。成人男子の筋力は、鍛えておっても戦争時よりも低下しておる。実は戦時中の人間も、より古代の者達より体力は低下しておるのだ」
アミーより少しだけ先で、浮きながらそんな解説を加えるのは、エセカワウソのイクちゃんこと
この御方は、浮いたり飛んだりしながら進んでいる為、特に悪路や高低差の影響は受けないようなのだ。
空気が無かろうと、重力が充分に働かなくてもどうにかなるに違いない、とその時のアミーはそう思った。
「仕方がない。そこの岩で休憩なのだ。何で20分でバテる? 今度からフィットネスクラブ通いだな。
「イクちゃん、本当かい? それなら俺、行ってみようかな……フィットネスクラブに」
これから
「とにかく冷たい茶でも飲め。放尿はその辺にしておくのだ。ゴミは捨てるなよ」
イクちゃんから冷たいお茶をご馳走になりつつ、近くの岩に腰を下ろしたアミーは、気持ちは前向きでも
「ほぅ……山登りなんか久しぶりだ。ここも空気は旨いんだよなぁ。ところで、イクちゃん、あそこで飛んでるのは『おセンチ様』じゃないかな?」
アミーは、見下ろすのはまだ早い
「確かに、おセンチ様だ。まだ、自衛隊や全日空から無視されておるようなのだ」
イクちゃんからは、いい加減に
意外なことに、おセンチ様の方ではパイロット達とコンタクトを取りたいらしいのである。イクちゃんの台詞は、それについての不毛さに呆れ返っている為であった。
おセンチ様というのは、全高60メートル全長180メートルぐらいのクラゲの様な何かである。巨大な横に広い
全身
アミーとしては、アレはロボットか何かではないかと疑っていた。
おセンチ様は、高度3千~1万メートルの範囲を時折フラフラと飛行し、何をするでもなく突然に消えるのだ。もちろん実際に起きている事象について、人間が認識出来ていない可能性もある。
「アミー、おセンチ様を眺めている場合でもないのだ。そろそろ行くぞ。でないと月曜日までに帰れんかもしれん」
「そりゃ、大変だ。月曜日は有給扱いにしてもらったけど、ひょっとして社長が?」
アミーの疑問については、イクちゃんから
会社が合併で大きくなったというのに、また随分と太っ腹なことだというのがアミーの感想だ。
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俺が吹き飛ぶと桶屋がもうかる お前の水夫 @omaenosuihu
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