第24話 山越えの行《ぎょう》
「アミー、明日から2泊3日で山を越え、隣の今一市にある
イクちゃんこと
アミーは、週末の仕事を終えて丁度帰ってきたところであった。
「イクちゃん、明日って土曜日だけど、隣の市の神社まで行って何すんの? 宮司さんって今までここの宮司だった人かい?」
「その通りだ! 引き継ぎを行わねばならんのだ。
イクちゃんが言うには、アミーが宮司を引き継ぐにあたり、会っておかねばならない人がいるとのことだった。
「それは分かるんだけど、
アミーとしては不思議な話なのだ。
その代わりに毎年行っている神社まで、往復で2泊3日というのはどう考えてもおかしい。アミーが言いたいのはそういうことだ。
「歩いて行くからに決まっておろう。市の境にある
イクちゃんの話では、アミーは何か特別な
「それ、大変そうだな。あそこって野生生物の宝庫だし。呑舞大学の先生と会うと面倒だしさ。たまに黄色い粉とか投げてきて、人間かどうか確認してるだろ?」
アミーとしては野生生物も、文明的人間でありながら変な人物も両方ダメだった。
「あそこの連中は神経質なのだ。粉の方は気にするな。私にも無害だ。
イクちゃんは又もや不穏な返事をアミーに返した。
アミーとしては、それなら雨でもダメってことじゃないのか、と思ったが口には出さなかった。
とにかくそういうわけで、アミーの週末は無情にも潰れることになった。
出来ればこの土曜日に、
「本当にこの格好で行くの? 靴だけ何故か登山用のシューズだけど……」
日が明けて翌日の土曜日のこと、アミーは白い
「これで良いのだ。文句言うな! シューズが赤いのは万が一の為だ。遭難の危険があるのだ。標高550メートルだとしてもな」
そう言うイクちゃんも、いつもの格好だった。白い狩衣に丸いキノコの様な帽子だ。袴と靴は要らないらしい。カワウソだし飛べるからとのことだった。
「俺、荷物は持たなくて良いのかな? 何も無いけど……カロリーバーと水ぐらいは持っておいた方が良くないかい?」
アミーとしてはムラムラと不安になってきた。
ここは登山者は滅多にいない。噂では野生化した家出者が、勝手に住み着いて不明の神体と交流しているというのである。
大学生などは時々戻って来て「俺、やっぱり里で生きます」とか言うらしいのだが、アミーはその辺のコミュニティーのこともさっぱり分からなかった。
「噂になっておるのは、自発的な保護活動という奴でな。ここにRPG村を作って、家出少年と家出少女を保護しておると聞いた。アレは野生化ではなくて、戦闘力がアップしたのだ」
自治体は何をやっているのか、とアミーは思ったのだが、ここにはここの流儀があるのだろうと思いコメントを控えた。
アミーにとっての不安と言えば、彼らは何を敵として設定しているのであろうか、ということなのだ。
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