ホラー好きなら絶対に刺さる! 『神』をめぐる壮大な叙事詩

 読み終えた後、まだ胸の中がホクホクしています。
 とても面白く、読み応えのある長編ホラー作品でした。

 まず、物語はケネスとメアリーという男女が出会うところから始まります。二人は人間の姿をしているが、精神面では人ではない『超越的な何か』が宿っています。それは霊的な存在のような、宇宙生物のような、既存の常識では捉えきれないものであることがわかります。
 
 そして場面は変わり、通常の人間の犯行とは思えない『異常事件』を追う刑事たちの物語へとシフトします。

 各地で起こり始める、怪物化したような人間たちによる猟奇事件。それに絡む『神』の存在。
 大学で大脳生理学を研究する永瀬は、ある宗教団体の代表を務める林海峰と出会い、神の存在にまつわる秘密へと踏み込んでいくことになる。

 本作では、『神』という高次元の存在について、宗教、社会学、生物学などあらゆる観点からアプローチされていきます。
 山田正紀『神狩り』や山本弘『神は沈黙せず』、それから諸星大二郎『妖怪ハンター』などを彷彿とさせられるアカデミックな面白さがあり、深い奥行を持った物語にどんどん引き込まれて行くことになります。

 殺人事件とそれを追う刑事たちのような物語から導入されていくため、エンタメとしても馴染みやすく、スルスルと読み進めることができます。そうしていつの間にか、展開されていく神についての世界観に引き込まれていくことになり、練り込まれた作品世界にひたすら感嘆させられます。

 モダンホラーのような味わいもあり、更に哲学的な深みもある。ホラー好きな人間が愛好する要素が緻密に組み立てられていて、とにかく「面白い!」と読んでいて思わされる傑作です。

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