うまく行かない男を描く『社会派ドラマ』と思いきや、一転して……

 もしも違うジャンルだったら、『彼』にはもっと違った未来があったかもしれない。

 何をやってもうまく行かず、仕事の場では「使えない奴」として煙たがられる主人公。そんな自分自身に罪悪感も抱きながら日々を送っています。

 この感じ、今年の「このマンガがすごい!」で一位を取った「君と宇宙を歩くために」に通ずるテーマでもあります。この漫画ではその後の出会いにより「ダメな奴」が前進していけますが、この作品はヒューマンドラマではなく「ホラー」です。

 彼はその後、「一つの転機」を得られそうになる。しかし、その先で待つ物は……。

 結末そのものの怖さもさることながら、ラストでちりばめられたいくつかの「キーワード」がどうしても心に刺さってきます。

 特に、同作者の前作「くすんだマネキンの腕だった」を読んでいる読者は、「あれ? あれ? もしや?」と思うところが出てくるかもしれません。

 どちらが先でも問題はありませんが、本作を気に入った方は是非とも前作の方も併せて読んでみることをオススメします。妙な「何か」が見え、よりいっそう怖さが増すことでしょう。