断章6

 日は沈み、すっかり暗くなった。

 【聖剣エクスカリバー】の本拠地アジトの居間に、ふたつの影がある。


 他のメンバーはそれぞれの部屋で寝ている頃だ。


「やってくれたね、キミは」


 光を反射しないウィルの赤い瞳。

 その言葉は絶世の美女ヴィーナスに投げ掛けられる。


「あら、なんのことかしら?」


 可憐な声。

 

 居間に彩りをもたらす。


「キミはもう【聖剣アスカロン】まで取り込み、あのアレクサンドロス様までをも支配したのかい?」


「面白いことを言うのね」


 ウィルが直接的に裏切りを言及するのは初めてだ。

 それに対し、ヴィーナスはしらばっくれるような返事をする。


 しかし、本気でわからないフリをしているわけではなかった。


「オーウェンには、キミの【魅惑スキル】が効かなかったんじゃないかい?」


 ウィルの一言に、目を細めるヴィーナス。


「そうね」


 その声は冷たく、冷え切っている。


「貴方にもロルフにも、そしてオーウェンあの子にも、私の超能スキルは通用しないわ。他にそんな男なんていないのに、どうしてかしら?」


「それは僕にもさっぱりだよ」


 居間を照らすのはロウソクの小さな灯火だけだ。


 ウィルの整った顔が不気味に光る。


「キミの目的はなんだい? この都市の最高権力までをも自分の支配下に置いて、それで何がしたい?」


「私の目的は単純――」


 ヴィーナスの唇が艶めく。

 赤みがかった長い金髪は、自然のもととは思えないほどに完璧だ。


「――この神聖都市アレクサンドリアの『愛』を、私が全て支配することよ」











《作者あとがき》

 当初、オーウェンは冷徹で頭が切れ、少しサイコパス気質のある主人公にしようと思っていました。


 実際そんな感じにはなってしまいましたが、母親のことでアレクサンドロス様を憎み、狂い始めたと思っていただければ嬉しいです。

 本当は、もう少し温かみのある主人公だよ、ということですね。


 話の設定や壮大な伏線、ラストのヴィーナスのセリフは、話に膨らみを持たせるためです。


 続きを書く機会があれば、書きたいなぁ。

 だとすれば、次のヒロインはハルですね。


 あ、ちなみに僕の推しはウィルです。少し贔屓していたのか、彼の登場回数は主人公オーウェンの次に多いかと思います。



 さて、最後まで『勇者パーティの裏切者』を読んでくださった読者様に、少し自作品の宣伝をさせてください。


 『勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい』は僕、エース皇命こうめいの代表作です。

 最強の中二病主人公、西園寺さいおんじオスカーが、勇者学園で実力を隠したり、それっぽいムーブをかましたりします。その中に個性強めのキャラ達との掛け合いがあることも忘れてはなりません。


 こちらも毎日更新で、現在最新部分は小説家になろうにて連載中です。カクヨムの皆様は、毎日1話ずつ、楽しんでいただけたらと思います。


 活動報告とかもしているので、【作者フォロー】の方もしていただけると嬉しいです。


 では、引き続き読書をお楽しみください!

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勇者パーティの裏切者 エース皇命 @acekomei-novel

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